
(クリスマス・イヴにココを通過は初めて!)





(蒲郡の唐田チェンバロ工房を訪れました)

フランチェスコ・コルティの録音が近年出た後なので、小川のこのアルバムは必然的に聴き手に比較を余儀なくさせる。嬉しいことに小川の演奏も相対して非常に良い。華やかさで引けを取ることのない一方で、技巧や装飾音の披露は程よくとどめ、音の流れや声部の描き出しに、よりこだわった演奏をしている。小川はゆっくりの楽章では抒情的に歌い、(テンポの速い)クーラントやジークなどの楽章では均整を保ちつつ活発に弾き進める。時折、アレマンドやサラバンドでのイネガルが滞って聴こえることもある。このアルバムにはト長調のシャコンヌも収録されており、レジストレーションの選択や強い推進力が曲全体を生き生きと描き出している。クライマックスを着実に聴かせる構成力は特筆したい。例えば、「調子の良い鍛冶屋」主題と変奏において、彼女は聴き手を容赦なく確実にスリリングなエンディングへと導く。このエンディングはエキストラの繰り返しを付けて全ストップを使用して弾かれている。第7番ト短調組曲の解釈も特に素晴らしい。(略)
総括的に言うと、このアルバムは大変な業績できっと多くの聴き手を満足させてくれる筈であり、お勧めしたい。(ノエル・オレガン)
小川の選んだ曲順は聴き手にとって完全な説得力を持つ。
小川は、組曲1番の冒頭プレリュードから既に穏やかな即興的自由さをもって奏し、ダルケンの楽器の持続性ある音質も手伝って聴き手を惹きつける。各々の楽章を精密に描きつつ素晴らしいジークで締めくくる。次の嬰ヘ短調第6番組曲でも、素敵な装飾音を施したプレリュードから始まり小川は鮮明に曲想を表現している。続く「調子の良い鍛冶屋」変奏曲で良く知られる組曲5番でも、(小川は聴き手を)満足させてくれる。主題は響きの良いバフ・ストップを使用して奏され、それぞれの変奏は絶妙な装飾音を織り交ぜつつ、はっきりとした性格で描かれている。最終変奏も素晴らしい。後に続くのはホ短調の組曲4番である。小川の弾くサラバンドは特に美しく、繊細でセンス良い装飾音が絶妙だ。ゆっくりしたテンポで美しく歌うことも、速いテンポで技巧を披露することも出来る奏者の力量が示されている!CD1はト長調のシャコンヌで締め括られる。20の変奏は想像力溢れるレジストレーションと曲想の表現、流れるようなパッセージワークで奏され完全に聴き手を虜にする。
CD2は、2番のヘ長調組曲で始まり、ゆっくりな楽章と快活な楽章の対比は非常に聴き応えある演奏となっている。そして続くのはニ短調3番組曲である。この冒頭のプレリュードで小川は、我々をまるでヘンデルの即興演奏を聴いているような気にさせてくれる!次の主題と変奏でも、それぞれの曲の性格を鮮明に描く小川の技量が見事に示されている。(略)そしてフィナーレのプレストはスリリングな締めくくりとなっている。この後ヘ短調8番組曲、ト短調組曲7番と続く。ト短調の序曲は堂々と奏され、パッサカリアは小川の音楽的表現力と華麗な技巧の集大成と言える。素晴らしい楽器と録音の音質も含めて、このアルバムは大変お勧めである。(ダグラス・ホリック) The Consort
Q:最近楽しんだ音楽的体験、録音や演奏会など3つ教えて下さい。(自分の演奏以外で)-
質問は英語では省略されています。
ーフィリップ・ヤルスキーが大好きです。最近彼のバッハ、テレマンのカンタータのアルバムを聴いてます。恥ずかしながら、テレマンのカンタータに関してあまり知らなかったんですけど、このアルバムで、とっても美しいなと思いました。10年ほど前にロザハイズという地域の教会のオルガニストを務めていた際、そこの神父さんがヤルスキーの大ファンで、勧められました。それ以来やみつきになっています。
ー実は私はあまりリコーダーとかフルートという木管楽器がそれほど好きではなくて、どちらかというと歌や、弦楽器が好きなんですが、最近初めてフルートのことを良いなと思わされた録音があります。バロックフルート奏者フランソワ・ラザレヴィッチのバッハ・フルートソナタのアルバムです。確かホ短調ソナタの緩徐楽章だったと思いますが、これは完璧なフレージングだと思わされた瞬間があって、虜になりました。
ーオペラ・ノースでグルックのオルフェオとエウリディーチェ公演で通奏低音を担当させて頂いた時のことです。オルフェオ役のメゾソプラノ、アリス・クーテを(オーケストラの中から)聴けたのは幸いでした。彼女の”エウリディーチェーを失って”はセンセーショナルでした。あまりに心を打たれ、毎度涙でスコアも見えず、危うく弾くのを忘れるくらいでした。このアリアはこういう風に歌うべきなのだと確信させられました。
Q:音楽以外で最近何か興味を持ったり楽しんでいることはありますか? 1つ教えて下さい。
ー新しい趣味(?)はフェンシングです。すっごい下手なんですけど、楽しんでます。クラブに行ってそこで防具も器具も借ります。私は何故か相手を傷つけるのが怖くて、攻撃できないのです。結果ずっと攻撃され続けます。下手すぎる自分を楽しんでいる感じです。でもいつか上達したいですね。
小川麻子のヘンデルの8つの組曲集アルバムがFHRからレリースです。