邂逅
――教則
事件は、練習中に起こった。
Y.ヒーガが何気なく出したパスが、事の発端だった。
「ヒーガ、こっちへ来るんだ」
手招きするフセッティに笑顔は無く、チームはいつになく緊張感を感じていた。
その後、フセッティはヒーガに付きっ切りでインステップキックのレクチャーを行う。
「そうじゃない!」
「ボールをもっとよく見て!」
約一時間後、B.M.minamiに伝説の師弟コンビが誕生することになる。
――夜明け
「彼の動きが改善されれば、勝利が近づくって感じたんだ」
練習後、クラブハウス「白木屋」でフセッティは語った。
-最後にはかなり精度の高いパス交換をしていましたね。
「ああ、あの瞬間に初めて勝利の可能性が見えたような気がした。」
フセッティの頭にうっすらと浮かんだものは、B.M.minamiの実像であった。
5月6日、B.M.minamiの2004シーズンの開幕戦……
「あの時、僕たちは試合をコントロールできなかった。」
マサーキは嘆いた。彼は仕事らしい仕事ができないまま、120分間を終えることになる。
「いつものボクじゃなかった。」
パスミス、トラップミスを繰り返す自分を、F.マーコートはそう見ていた。
マーコートは振り回され、相手チームは左サイドを支配した。
「とにかくコンディションが最悪だった」
チーム生え抜きのイーダ、タッケーイも口を揃える。
フセッティはチームの事態を素直に認めた。
「緒戦後、すべてがひっくり返った。これじゃダメだと思ったね。何しろ、ボールが持てない。」
結局、フセッティの取るべき対策はこうだった。
フットサルという競技の入り口で本当に必要なものは、スキルと体力だ。
チームで最も体力的資質があるのはヒーガであることは間違いない。
彼は、優れた格闘家であり、ヘルシーな生活パターンを受け入れる
柔軟なメンタリティーを備えている。
「ヒーガに少しだけ足元のスキルが身についた時のチームを想像してみてくれ。」
緒戦の敗退で、世間はまた騒ぎ出した。
批判の的は、ジダネス(スター選手)+パボネス(生え抜き選手)を偏重して中堅を放出したこと。
レギュラーを固定していて、控えが育たないこと。
戦う気持ちが見えないこと……。
新キャプテン フセッティは、つぶやく。
「とりあえず、経験だな。」
<この項、了>
タケイアキト/Akito Takei
――教則
事件は、練習中に起こった。
Y.ヒーガが何気なく出したパスが、事の発端だった。
「ヒーガ、こっちへ来るんだ」
手招きするフセッティに笑顔は無く、チームはいつになく緊張感を感じていた。
その後、フセッティはヒーガに付きっ切りでインステップキックのレクチャーを行う。
「そうじゃない!」
「ボールをもっとよく見て!」
約一時間後、B.M.minamiに伝説の師弟コンビが誕生することになる。
――夜明け
「彼の動きが改善されれば、勝利が近づくって感じたんだ」
練習後、クラブハウス「白木屋」でフセッティは語った。
-最後にはかなり精度の高いパス交換をしていましたね。
「ああ、あの瞬間に初めて勝利の可能性が見えたような気がした。」
フセッティの頭にうっすらと浮かんだものは、B.M.minamiの実像であった。
5月6日、B.M.minamiの2004シーズンの開幕戦……
「あの時、僕たちは試合をコントロールできなかった。」
マサーキは嘆いた。彼は仕事らしい仕事ができないまま、120分間を終えることになる。
「いつものボクじゃなかった。」
パスミス、トラップミスを繰り返す自分を、F.マーコートはそう見ていた。
マーコートは振り回され、相手チームは左サイドを支配した。
「とにかくコンディションが最悪だった」
チーム生え抜きのイーダ、タッケーイも口を揃える。
フセッティはチームの事態を素直に認めた。
「緒戦後、すべてがひっくり返った。これじゃダメだと思ったね。何しろ、ボールが持てない。」
結局、フセッティの取るべき対策はこうだった。
フットサルという競技の入り口で本当に必要なものは、スキルと体力だ。
チームで最も体力的資質があるのはヒーガであることは間違いない。
彼は、優れた格闘家であり、ヘルシーな生活パターンを受け入れる
柔軟なメンタリティーを備えている。
「ヒーガに少しだけ足元のスキルが身についた時のチームを想像してみてくれ。」
緒戦の敗退で、世間はまた騒ぎ出した。
批判の的は、ジダネス(スター選手)+パボネス(生え抜き選手)を偏重して中堅を放出したこと。
レギュラーを固定していて、控えが育たないこと。
戦う気持ちが見えないこと……。
新キャプテン フセッティは、つぶやく。
「とりあえず、経験だな。」
<この項、了>
タケイアキト/Akito Takei