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                 Zaalvoetbal b.m.minami

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几帳面な狼という存在 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-11-19 | §コラム§
教え

――解釈

「守る側は、どんなに強力な武器を用意しても、いつかは倒される運命にあるという
人間世界の鉄則を、この試合は見事に象徴化していた。」
東洋の島国にいる文人が、ある格闘技の試合を見た時の感想である。更に彼は言う。
「老巧、という言葉はスポーツの世界では不吉な言葉で、いつかは、
若さ、に敗れる日が来る。」

目の前にあるのは未知のものだけ。
常に新しい未知に対し、攻撃し、挑戦しつづける、若き挑戦者・・・・・・。
さて、我がB.M.minamiでは誰を指すのだろうか。

――本質

インタビューは、ゆったりとした、清潔な感じのするカフェで行われた。
「あ、僕はタバコも酒もやらないんだ。コーヒーも飲まないし、低脂肪のものしか食べない。」
ジノリ製のカップに注がれた、セーロンティーを飲みながら、F.マーコートは語る。

-コートでは、若さあふれる物怖じしないプレーが評判です。一部では次世代のスターと。
「あ、フットサルの戦術は、時代とともに変化していると思う。
チームとしての能力を最大限に生かすためには、選手は規律によってプレイすることが大事だし。
その為にはスター選手は要らないと思う。」

これは、マサーキ、フセッティのようなチームのスターに対する批判なのだろうか。
例の、禁煙騒ぎの時にも、彼は静かにチームを批判していた。
ところが、独特の低い声でボソボソと話す姿は、きわめて穏やかだ。
このインタビューを受けているマーコートと、試合中の攻撃的なマーコート、
果たして同じ人物なのだろうか。我々は、彼の事をもう少し知っておくべきだろう。

-規律を守れないプレーヤーに対して不満がある?
「あ、そんなことはないよ。今のチームに不満はまったくないし。」
-先ほど、スター選手はいらない、といっていたが?
「あ、誤解してるみたいだね。確かに、B.M.minamiにはスターがいるけど、
でも、彼らは一般的なスターとは違う、と僕は思うんだ。
やるべきことをきちんとやって、チームのことを第一に考えている。
ああいったすばらしい選手と一緒にプレイできることは、本当に感謝すべきことだと思うよ。」
-慣れないサイドでの起用については?
「あ、少しずつ慣れてきたし、自分の新しい可能性に目を向けてくれた
チームに感謝してるよ。」

そして、インタビュー後。

「あ、そうそう、前に、熱帯魚飼ってるって言ってたよね。」
筆者は確かに半年前、彼に熱帯魚を飼っている事を雑談で話していた。
「あ、良かったらこれ。良い物みたいだよ。」
そういって彼は栃木産の熱帯魚の餌を渡してくれた。
半年前の雑談の内容を覚えていて、わざわざプレゼントしてくれるとは。
激しく、攻撃的だが、知的な繊細さを併せもち、大局を見る目も抜かりない。
そして、何より、どこか人懐こい。

F.マーコートとは、つまり、そういう人物である。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

やぐら囲い 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-11-12 | §コラム§
“品薄”のDFと評価

F.C.富士通のDFヤマナリッティが、B.M.minamiのオファーを断った。
年俸の条件面で合わなかったのが原因と伝えられる。
B.M.minamiは、モリトシユーキ(FCセントラル→FCマーケ)の獲得に失敗してサポーター
から抗議を受けたばかり。

チームの優先課題である有能なDF探しは、今後も困難を極める可能性が高い。
というのも、本当に質の高いDFとなると、移籍マーケットに出回る数が非常に限られているからだ。
フットサルは堅守が重要なスポーツだが、最近は選手層が薄く、頼りになるDFが少ない。
B.M.minamiに関しても、チーム生え抜きで守備の柱を担う選手は、
フセッティ、コキ・イーダ、の2人だけ。
残りは、マーコートが気分次第で守備をする程度。

アタッキングサッカー全盛の昨今、話題を集めるのは、やはり、攻撃センスの高い選手たち。
移籍のニュースをにぎわせるプレーヤーの数、移籍金の高さからみても、
一般的にはアタッカー陣がDFらを上回っている。
だが、個人的には、DFに対する評価がもっと高まってもよいのでは、と感じている。
マスコミや世間が「攻撃」「攻撃」と煽る中、守備で引き締まったゲームを演じることのできる
選手こそ、貴重な存在ではないだろうか。加えて、DFはいわば“品薄”の状況。

もちろんB.M.minamiが、ヤマナリッティの条件を全面的に受け入れる必要はなかったと思う。
だが、イーダの前に頼れる相棒を連れてこない限り、
フセッティが試合中に怒鳴り散らすシーンは、新シーズンも続くだろう。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

霧中の光 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-11-07 | §コラム§
改革前夜

――瞬き

クラブハウスでは、ミーティングが続けられていた。
「得点力不足をどう解消するか?」
この問題に対し、フセッティ監督は選手達にこう指摘したという。
「シュートの精度が悪すぎる。ただ、精度は練習によって上げられる。
問題は、シュートを撃つまでの形ができないことだ。」

今シーズン、B.M.minamiの総得点は2。
しかも、そのうちの1点はオウンゴールである。
現在、チームで主にオフェンシブな役割をこなすのはFW登録のヒーガとマサーキ、
また、サイドから流動的な攻撃参加をするマーコートやタッケーイだ。
彼らは何を、どう改善すべきなのか。

「抜本的な、とまではいかないが、ある程度の対策は練られた。
我々がこのまま終わると思っているのかい?」
後日、取材に応じたコキ・イーダは肩をすくめながら笑った。

――道程

6月3日、スッドセントラルの練習場へ足を運んでみた。
B.M.minamiは小さなゴールを使った2対2のミニゲームをしている最中だった。
「ちがう、ココに出すんだ!」
「そのスペースに走りこむんだ!」
マサーキの声が響く。
練習後、ミニゲームでコンビを組んでいたタッケーイに話を聞いた。

-いい動きをしてましたが?
「マサーキの指示とパスがよかったね。今後チームでもこういうシーンがふえると思うよ。」

-マサーキがいわゆるチームの司令塔に?
「君の言う通り。そう、新しく彼に与えられたポジションはトップ下だ。」

-ゲームをコントロールするのはフセッティでは?
「もちろん。ただ、フセッティに守備も攻撃もまかせっきりというのはあんまりじゃないか。
マサーキは、いわゆる“10番”をやる予定だ。」

-マサーキはFWのはずだが?
「彼はゲームを組み立てることができる上に得点能力が高いんだ、どちらかというと、
セカンドストライカーの方が向いているからね。実際、今日やってみてイケると思ったよ。」

マサーキは言う。
「環境を変えると、今まで見えていなかった弱点が表わになることもあれば、
才能が開花する、ということもあるんじゃないかな。どうなるかは判らないけど、
ボクは、ボクの仕事をするだけだよ。」

マサーキの中には、トップ下としての才能が宿っているのだろうか。イーダにも話を聞いてみた。

「チームには前線で"捌ける"選手が必要なんだ。それが得点力アップにつながると思っている。
現時点で、マサーキにその適性があると判断したんだ。」

第3節、B.M.minamiにとって、そしてマサーキにとって、真価が問われる一戦になりそうだ。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

屋台骨の目的 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-11-05 | §コラム§
節目なき挑戦

――敬愛

人は彼のことをゴール前の「キリスト」、口の悪い人間は「野人」と呼ぶ。

T.フセッティ。
改めて紹介するまでも無いだろう。B.M.minamiの選手兼監督である。
長髪に、外国人風の髭、はっきりとした顔立ち。
DFという地味なポジションにおいて、彼の風貌は少々風変わりな程、目立つ。
そして、その人目を惹く姿は、コート上で最も輝きを増す。
鋭い読みと瞬間的なスピードで「1点もの」のピンチを防ぎ、
1対1のボールの奪い合いにもめっぽう強い。
加えて、最終ラインから左右にパスを振り分け攻撃をオーガナイズし、
チャンスと見るやロングシュートを放つ。
まさに、チームの浮沈は彼にかかっているといっても過言ではない。

師弟関係にあるヒーガは、
「チームにとっては無くてはならない存在。それに、僕にとっては先生みたいなものかな。」
と尊敬を隠さない。

「フセッティとは、B.M.minamiそのものなんだ。」
共にチームを支えるコキ・イーダも、彼の象徴的な姿にすっかり魅了されているようだ。

――交点

選手達へのインタビューからもわかるように、
彼への賞賛は、そのプレーに対してだけではない。
いささか行儀の悪い選手たちをドライブし、キャリーしていく手腕も見逃せない。

-選手達には普段どんな指示を?
「奴等には、まず、身の丈にあったプレーをしてもらうよう言っている。
だがその結果、チームに役割分担のような現象が起こるのはいただけない。
そこには十分気をつけているよ。」
-第3節に向け、チーム状況は?
「今のチーム力をしっかりと測るのは難しい。
ただ、何が必要で、何を改善すべきか、は見えてきたがね。」
-巷では、フセッティ人気がすごいようですが?
「しっくりこないな。俺は、チームのためにやってるんだ。
結果、ファンが喜んでくれるのは嬉しいが、チャラチャラしたのは苦手だね。
人気者になりたい奴は、DFなんかになってないさ。」

むしろ彼がDFを選んだのは、宗教家や革命家を目指す人々と同じ使命感からのようだ。

-オフの過ごしかたは?
「息抜きなんかできっこない。俺はDF兼監督だ。トレーニングに、戦術の吟味。
リラックスできるのは、フットサルをやめる時さ。」
-しばらく休めそうに無いですね。
フセッティの目が遠い彼方を見つめる。
「そうだな、いつか、ガキの頃に一度だけ止めたあいつと・・・・・・
もう一度対戦して勝つまで、俺は走り続けるだろうな。」[* 編集部注]

チームを支える屋台骨の目は、彼方の怪物を見つめている。



[* 編集部注]
フセッティは少年時代、現在でも活躍している某有名サッカー選手を止めたことがある(らしい)。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

DON'T LOOK BACK IN ANGER 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-11-02 | §コラム§
混迷

――現実

選手達は皆、一様に沈痛な表情だ。
B.M.minamiの2004シーズンの第2節が終了した。
いくつかの引き分け、いくつかの勝利、いくつかの敗戦。
チームに対して、ファンや解説者、選手達自身でさえ一定の評価は下しにくいだろう。
各々の言い分はあるだろうが、共通する部分は一つ。
「良くは無い。」

試合後のコメントを残したのは選手兼強化部長のコキ・イーダのみ。
一言、「イッツ ゲッティング ベター。」

――夜明け前

このB.M.minamiというチームの選手達は実に個性豊かだ。
忌憚無く意見を言う者、思慮深く状況を見守る者、自分以外に興味を示さない者。
しかしこのユニーク集団、実は共通して一つの特徴を持っているのである。
他者からの意見はとりあえず拝聴する、ということだ。
そんな気持ちの良い彼らだが、あの夜、明らかに混乱していた。
”チームを優先するか、個人をたてるか──。”
彼らがチームを愛していることに間違いない。
また、勝利を渇望しているということも然り。

これらの事実と同様、また彼らの抱える問題にもゴールは無い。
試合終了後、クラブハウスから出てきた選手達は一様に表情が白かった。
皆、一様に、白かった。
第2節、わずかではあるが観客がどよめくシーンが存在した事も事実である。
賢明なる読者諸兄であれば、ここからは言わずもがなであろう。
彼らにとっての一番の薬は、勝利だということを。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

スポーツと地域性 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-10-29 | §コラム§
故郷の追憶

――魔力

スポーツ(フットサル)ではしばしば、ホームアンドアウェーの効果が見られない場合がある、
というような論調がある。これは、各地区ごとでの成り立ちや歴史により、その効力の度合いに
「差」があると言う事だろうか。

さて、わがコウホク地区は連合国家としての歴史がある訳でもなく、
南北で貧富の差が激しい訳でもない。
ブルーカラー(ホワイトカラー)が特定のチームを支持するという事もないし、
良い意味でも悪い意味でも均質的な地域である。
感情まかせの情熱的な想いからは無縁の地域だ。

――彼の国の人々

ご存知の通り、B.M.minamiはコウホク地区に本拠地を構えるチームである。
しかし、チームには生粋のコウホク地区出身者は意外と少ない。
チームの中心的存在、フセッティやコキ・イーダは激しく情熱的な感情を表現する
トウホク地区の出身である。
「第3節はカナガワノールドだって?完全なるアウェーゲームだな。」
コキ・イーダはホームから離れることを極度に嫌うことで有名だ。

かたや、マサーキなどはクールでご都合主義的な印象の強いトウキョウ地区出身である。
コウホク地区とトウキョウ地区とは、距離的な面から見ても、比較的近い民族性だ。
マサーキは言う。
「やれやれ、アウェイと聞くと連中ったら皆、萎縮してしまうんだ。
普通にやればもっとやれるのにね。」
トウキョウ系出身者らしい言い分である。

戦う前から心理的に多大な負の影響を受けすぎるのは、いただけない。
が、しかしそれもまたスポーツの醍醐味なのだろうか。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

日はまた昇り繰り返す 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-10-26 | §コラム§
警鐘あるいは危機感について

いかに選手が良いコンンディションで試合に臨むことができるか。

良い結果を出すためには、システム云々といった戦術論などよりも、上記がずっと
大切であることを、B.M.minami選手兼フィジカルコーチであるY.ヒーガが、
練習後のコメントの中で強調している。
「まずチーム内での禁煙令が徹底されていない事は、悲しむべき事態だ。」

――憂鬱

今シーズン開幕戦、B.M.minamiは完膚なきまでに敗れる。
チーム戦術にまとまりが無い、選手個人のスキル不足、港北から八幡山までの時差。
様々に論じられたが、最大の原因は選手達のフィジカルの弱さにあることは明らかであった。
開幕戦の相手、F.C.FANTOMの主将カドワッキは振り返る。
「あの試合、B.M.minamiの選手は、まるでずぶぬれの子ウサギのようだった。」

ふがいない結果に腹を立てたサポーターがB.M.minamiの宿舎に忍び込み、
タッケーイ選手の鞄を盗んだ事件まで発生した事は、何より有名な話である。

――反転

とはいえ、何より惨めな思いをしたのは選手達本人だった筈である。
マサーキ、マーコートは開幕戦以降、夜の飲酒を絶ち、
タッケーイ、ヒーガは練習後一人、黙々と肉体改造トレーニングに励むようになった。
そしてイーダ選手兼強化部長の号令で、禁煙運動さえ始まった。(紫煙越しに見るゴール裏 参照)
ところが──。

開幕戦の無念を早くも忘れ去ったのか、たった数日のトレーニングで別人になれたと思ったのか、
元々喫煙習慣のあった選手達は一人、また一人と喫煙を始めた。
元来、選手達はメンタル面での弱さを指摘されていたが、ここまでとは。

それでも、選手兼監督であるフセッティは、
「選手達の自由を奪う事はできない。彼らはプロフェッショナルだし、
そもそも、これは彼らが自主的に定めたルールなんだ。私にどうこう言う資格は無いよ。」
と、表立って規制を強化しようとは考えていないようだ。

「全く、彼らには頭が下がるよ。三歩あるけば、全てを忘れちまうんだろうね。」
とチームでは少数派である嫌煙家のマーコートが静かに批判している。
チーム内での軋轢も心配だ。
明日の第2節、果たしてB.M.minamiは立ち直っているだろうか。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

手紙 【キナメリの眼 (キナメリ・ナオヤ)】

2004-10-19 | §コラム§
B.M.minamiへ

いよいよ 君達は明日、記念すべきフィールドに立とうとしている。

この手紙を君達が読む頃には、天気さえ悪くなければ結果が出ているかもしれない。

一つだけ聞いて欲しい事がある。

例えそれがどんな結果であったとしても、全てはこのクラブの始まりに過ぎないということだ。

フットボールがある限り、クラブがある限り、永遠に終わりは無い。

星の数ほどあるフットボールの数あるクラブの中の一つに過ぎない、B.M.minami。

パスを出し、パスをくれ、共に戦ってくれる仲間がいる。

それこそが君達にとってはたった一つのクラブである証であることを忘れないで欲しい。

君達の幸運を祈っている。

<この項 了>


歓び 【キナメリの眼 (キナメリ・ナオヤ)】

2004-10-15 | §コラム§
私の地元にはプロのフットボールクラブがある。
赤と黒のユニフォームの「コンサドーレ札幌」だ。
コンサドーレ札幌の歴史について少し触れよう。

1994年、札幌にJリーグのチームを!をスローガンに31万人の署名が集められる。
1996年、JFLの名門であった東芝を誘致に成功。道産子を逆さまにしたコンサド+オーレを
     合体させ、「コンサドーレ札幌」というチーム名でJFLに参戦。
1997年、JFLでリーグ優勝を果たして、J1に正式加入。
1998年、J1残留戦に破れ、1年でJ2に降格する。
2000年、J2優勝でJ1に復帰。
2002年、J1で最下位になり、J2降格。

簡単ではあるが、これがコンサドーレの歴史である。
Jリーグのクラブの中で最も激動の10年を経験していると言っても過言ではないだろう。
2004年6月現在、我がクラブはJ2の最下位をひた走っている。
資金力があるわけでもない。

有名な選手はみな、このチームから去っていった。
U-23で活躍中の山瀬(浦和)や、今野(FC東京)。
他にもエメルソン(浦和)や吉原(G大阪)、播戸(神戸)など・・・。

でも、私はこの地元のクラブを愛している。
このクラブは何者にも代えることはできない。
歓びも苦しみも悲しみも共に感じられる。
コンサドーレは私そのものなのだ。

B.M.minamiというクラブを地元に持った君達には、勇気と誇りを持って
そのクラブを支えて欲しい。
例えそれが我がコンサドーレのような激動の時代をおくったとしても、である。
それがフットボールを愛する者の使命であり、港北地区に住む者の
生きる歓びであるのだから。

<この項 了>


ハードルを越えるには 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-10-12 | §コラム§
遅れてきた希望

――歯車

Y.マサーキやT.フセッティが、文句なしにB.M.minamiにおけるエースであり、
光り輝くべき存在である事は誰もが認めている。
が、彼以外にも、2004シーズンのB.M.minamiには光が存在する。
そして、その光はチームにとって何物にも代え難い宝石である。
B.M.minamiがリーグの落伍者とならず、優勝争いに絡むためには──。
タク・サカキバリュク。
ひとえに彼の力次第と言えるだろう。

今シーズンの開幕当初に入団したサカキバリュクは、大きな期待と共に、
その存在感をチームに示した。
日本のサッカー文化は、悲しいことにまだまだ醸成されていない。
まず人気を得る華やかなゴールシーンを必要とし、世界に一番近いはずのJリーグですら、
引き分けを美徳としない風潮が目立つ。
B.M.minamiのプレーヤー達も同様、エース候補はもとより、サイドアタッカー達までもが
得点シーンのみを演出したがる。
いぶし銀のプレーは他人がやればいい──。
チームはまだ、青二才だった。

――再生と目的

サカキバリュクは、そんなチームに新たな価値観を植えつける存在だった。
労を惜しまない相手へのプレス、絶妙のバランス感覚、献身的なディフェンス。
そんなサカキバリュクの、派手さはないが、堅実なプレーは、
コキ・イーダ選手兼強化部長をして、大いなる期待感を持たせるに値した。
しかし刹那、悲劇が襲う。サカキバリュクは右膝から違和感を感じた。
結局、1ヶ月の治療に専念し、5/6の開幕戦を棒に振った。

開幕戦に破れチーム状況の悪いB.M.minamiは怪我から復調したサカキバリュクを待望していた。
そして、遂に5/25、いぶし銀は初のチーム合同練習に参加した。
「今日は、彼がチームを引っ張ってくれた。」と、マーコートは語る。
「僕が今まで見てきたなかで、いちばんホットな選手だ。今は膝の調子も完璧みたいだし、
とにかく自信にあふれている。」

今シーズン開幕戦、サカキバリュクのことをまったく忘れている解説者さえいた。
まったく、なんと浅はかだったことか。
初夏、いぶし銀は怪しく、光りだす。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

始まりは誰の手から 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-10-08 | §コラム§
5番目の眼差し

――指定席

ゴーレイロ[GOLEIRO] -フットサルでのゴールキーパーのこと- は「忘れられた男」になりがちだ。
サッカーの少年チームでは、11人のうち最後に残った選手がキーパーグローブをはめる。
チームの「エース」としてゴールを決めたり、フィールドの花形ポジションで華麗な
ラストパスをだしたり、あるいはサイドを駆け上がり決定的なクロスをあげたり、
など脚光を浴びるチャンスはない。
ゴーレイロは影の存在であり、ゴールの前で疲れ果て、泥だらけになると思われてきた。

だが近年、海外サッカーには偉大なキーパーが次々に現れ、今や若者にとって憧れの
ポジションになっている。
レフ・ヤシンにペーター・シュマイケル、クラウヂオ・タファレル、ホセ・ルイス・チラベルト。
いずれも各リーグ屈指の経験をもち、チームを優勝に導いた名キーパーだ。
ほかにも傑出したキーパーは名前を挙げきれない。

日本サッカーの歴史を振り返ると、偉大なキーパーは世界ほど多くない。
芝のグラウンドが無いこと、海外ほど脚光をあびるポジションとして認知されていないこと。

それでも数人の素晴らしい「例外」の名前が思い浮かぶ──。

――志者

B.M.minamiはチーム創設以来、ゴーレイロをコキ・イーダに固定している。
冷静な判断力、鋭い反射神経、強い精神力、強い筋力、豊富な試合経験、
コキ・イーダは優れたゴーレイロに欠かせない要素をすべて持っている。
だが、イーダがイーダ自身に求めているものはそれだけではない。

イーダは偉大なゴーレイロだけがもつ、ある種の特別なメンタリティを備えている。
"自分の後ろには、もう何もない" と。
今目の前に飛んでくるボール、そのボールを止められるのは、自分だけ。
もし、この指先が触れなければ、1点。イーダはチームの誰よりも理解している。
そして、そのことを心に刻んだ時から、イーダは自分との闘いが始まっている。
全てを投げ出し、全てを受け入れ、全てを手にする為の、充実した闘いこそ、実はイーダの全てだ。

B.M.minamiのすべてのメンバーは、イーダに感謝し、自覚しなければならない。
次があるのは、誰のおかげであるかを。
今週末、第2節のホイッスルが鳴る。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

ポジション(自分)探し 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-10-01 | §コラム§
花開く場所

――道草

「成功するにはスタイルを変える必要があるかもしれない。
でもフットサルのコートは本質的な部分を見てもらえる場所。十分通用すると思っている。」
自信をみなぎらせ、余裕さえも感じたB.M.minamiへの入団会見から45日後、
F.マーコートは、2004シーズンの開幕戦において、意外なことに、
FWでなく、中盤左サイドの攻撃的なポジションでデビューを飾った。
自身にとって初体験であるコートで、「もっとサイドに開け」という監督からの
指示を忠実に守り、チームの一員として戦う姿に、マーコートの「やる気」を感じた。
そして意外な起用で報道陣を驚かせた開幕戦の翌日、各紙は
「スピードのある攻め。いいデビューを飾った」
と彼にまずまずの評価を与えた。

――道中

フットサルという過酷な競技で、選手がFWとして活躍するのは容易ではない。
FWは、得点のお膳立てはそれほど求められない。あくまでもゴールそのものが要求される。
まして、B.M.minamiのような、残留がチームの最大の目標であるチームにおいては、
献身的なプレーヤーよりも、たとえ、がつがつとした不格好なタイプであってもきっちりと
点を取ってくれる、そういった生粋のストライカーの方が高く評価される。
マーコートは天性の点取り屋であるビエリ(インテル)やシェフチェンコ(ミラン)には
決してなれないし、また得点王を狙う自己主張プレーが、彼に適しているとも思えない。
ライバルFWヒーガの調整遅れもあって、エースのマサーキとコンビを組まされていた
5月のキャンプ期間。パートナーへのパス出しを得意とするところのマーコートは、想像以上に
早い段階で新天地での戦術を習得できた。

しかし、シュートを7本放ちながらも、アマチュア相手にゴールをたたき出すことが
できなかった「不発」のマーコートに対し、フセッティ監督が密かに「FW失格」の烙印を
押したのは事実である。

フセッティ監督は、「マーコートの、パスの精度の高さ考えると、彼をリフィニトーレ(仕上げ人)
として起用するのがベスト」と分析する。つまりネドベド(ユベントス)やイタリア代表における
デルピエロ(ユベントス)のような、高度な攻撃的展開に優れた第3ストライカーに徹するのが、
マーコートがコートで活躍する近道と言えるだろう。

「厳しい環境にチャレンジして成功することで新しい道が開ける。」
マーコート自身が目指していること、すなわち監督やチームを理解して己のポジションを
確立すること。そのためには、今回の「サイド」でのプレーこそ好ましい。

従ってマーコートは、いっそのことFWの肩書きを捨て、サイドアタッカーとして目覚めるべきだ。
もはや、レギュラー争奪のライバルはヒーガではない。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

楽に背伸びを 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-09-28 | §コラム§
移民の国のドリブラー

――機会

太平洋沿いに位置する小国、オダワラに移民が多いのには理由がある。
1950年代から経済が好調になったオダワラは、炭鉱労働者などを補充するために
多くの移民を受け入れてきた。
景気が下向きになり始めた1974年に移民受け入れはストップしたが、
今なお当時の移民とその家族がオダワラで生活している。

ど素人リーグの得点ランキング首位を狙うアキト・タッケーイは、そんな環境で生まれ育った。
父親はオダワラ人で、母親はオダワラの隣国、ユガワラ人。
タッケーイは18歳になるまでユガワラ国籍を選択していたために、
オダワラでのユース代表の経験がない。ユガワラの小さなクラブからキャリアをスタートさせ、
FCオンセンバなどを経て、今季B.M.minamiにやって来た。

昨季までは無名の存在で、活躍するようになったのは今季から。
練習での活躍を認められ、5月の今期緒戦でデビュー、6月のカップ戦では初先発が期待される。
タッケーイは「今は全く違う世界で生活しているようだ」と、
フットサル選手として決して若くない年齢でのブレイクスルーに驚いている。

「プロ選手のキャリアはとても短い。これまでの遅れを早く取り戻したい」
成功の要因は、体重を落としたことにあった。
数カ月かけて走りこんで5kg絞り、B.M.minamiのフセッティ監督が
「ペナルティエリアで勝負するタイプの彼には、体のキレが大事」
というように、これで得点能力が格段に上がった。
残る課題は「カッとなりやすい性格」(コキ・イーダ選手兼強化部長)くらいだろう。

オダワラ産のストライカーが順調に育っていけば、2004シーズンの展望は明るい。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

神の考えていること 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-09-17 | §コラム§
英雄論

B.M.minamiがシーズン緒戦で無様に敗退したことは、
港北地区で生活するタカユキ・シマーダにとっても大きなショックだったようだ。
「港北人は、ストリートサッカーの心を忘れてしまった。
港北サッカーの長所をどこかに置き忘れて、ロングボールを蹴るだけのビーチサッカーに
なりさがってしまっている。」

港北の英雄にとって、結果だけでなく、サッカーの内容までもがレベルダウンしていることに
納得がいかなかったのである。
港北の将来を危惧したシマーダは痺れを切らして、自サイトで“どうやってプレーをするべきか”
という記事を書き始めてしまった。現在までに4回続いており、
第1回「理想のシステム」、第2回「GKからの攻撃の始め方」、第3回「CKの対処法」、
第4回「ボールをもらう前の動き」と、1冊の本になるのでは? と思うほどに、
戦術についてかなり細かい説明になっている。

その中から、おもしろい記述をいくつか抜粋してみよう。

まずシマーダの理想のシステムとは、“1ライン”が基本の4-0。
シマーダはいう。「選手間の距離を、2mに保つのが理想だ。そうすれば、
ポジションチェンジが素早くスムーズに行く。」

“ボールのもらい方”については、さすがシマーダというような説明がいくつも出てくる。
例えば、サイドアタッカーとまわりの選手の動き方だ。

「もしサイドの選手が、足元でボールを受けたかったら、まず後ろに走れ。
そのときFWが相手のDFを引き付けるように中央に走る。これでサイドにスペースが
生まれたはず。サイドの選手が再び前方に走れば、楽に足元でボールを受けられる」
サイドの選手が機能しないときは、「責任の半分は、他の選手にある」というわけだ。

この他にも“4人になった相手の攻略法”や“サイドバックとの連携法”など理論は多岐に渡り、
「一生サッカーを考える作業はやめない」とシマーダの情熱は衰えることを知らない。

一連の記事を読んで、B.M.minamiが戦術を変えるとは思えないが、
「美しいサッカーをみたい。」
というシマーダの声は、B.M.minamiの選手達に確実に届いたはずである。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei

紫煙越しに見るゴール裏 【フロム スッドセントラル (タケイ・アキト)】

2004-09-14 | §コラム§
新緑と紫煙

――決定

5月14日、B.M.minamiが、クラブ全体の措置として禁煙を進めることを決定した。
プライベート、練習/試合中に関わらず、タバコを吸うと退団処分となる。
「若い世代に人気の高い、B.M.minamiのイメージアップを図るため。
ベンチに待機する選手たちの健康面を考えても、いい措置だと確信する」
と、B.M.minamiのコキ・イーダ選手兼強化部長は説明した。
ベンチに立ち込める「白いもや」も今季限りとなるようだ。

――対策

B.M.minamiには喫煙者が多く、彼らにとっては、まさに「拷問」と言えるかもしれない。
実際、B.M.minamiの選手たちのタバコ消費量は度を越えている。
イーダ選手兼強化部長は葉巻、フセッティ選手兼監督は、絶えずタバコをくわえている。
ジェスチャーまじりの指示が少ない指導者たちだけに、よけいタバコや葉巻に
火をつける機会が多い。シーズン緒戦、大敗を喫したフセッティ選手兼監督は、
試合後の会見の際に「監督、今日は何本吸ったのですか?」と質問されていた。

フセッティ氏は1試合に2箱は消費、チームが劣勢に陥ると、その本数は50以上にも及んだ。
ちなみに監督たちが吸うタバコの本数は、選手たちのミスの数に比例すると指摘する記者もいる。
B.M.minamiのタッケーイ選手は、「禁煙」に向けた動きに対して前向きな姿勢を示している。
「市民にいい影響を与えるためにも振る舞いに気を配ることは必要だ」とし、
「差し当たり、試合中はキャンディか偽タバコで過ごすことにするよ」と、
代用品で済ます準備に取り組んでいる。

一方でヘビースモーカーのフセッティ氏は、タバコなしの環境に身を置くことに渋い表情。
「タバコのイメージが悪いとは思わない。禁煙制度よりも、暴力や唾吐き、
罵声を飛ばすことなど、ほかに禁止しなければならないことがあるだろう」
と、ピッチ上での問題の方を指摘する。

今シーズンは、「喫煙者」たちのパフォーマンスも話題となりそうである。

<この項、了> 

タケイアキト/Akito Takei