いつからだって演劇三昧

50歳で早期退職して演劇生活を始めてしまいました。

「エンバース ー 燃え尽きぬものら」

2008-05-22 01:41:29 | Weblog
この間たまたま長塚京三さんが出演している テレビ番組を見て、
その中で長塚さんが演じたワンシーンに引き込まれ、
発作的にチケットを取りました。

大人の芝居でした。


俳優座劇場
[原案・原作]シャーンドール・マーライ
[劇作・脚本]クリストファー・ハンプトン
[翻訳]長塚京三
[演出]板垣恭一
[美術]朝倉摂
[出演]長塚京三 /益岡徹 / 樫山文枝
 公演期間: 2008/5/15(木)ー2008/6/1(日)
公式サイト
このサイトにある3人の出演者のインタビューがいいです。

[物語のあらすじ]
 オーストリア・ハンガリー帝国が、滅亡して間もない1940年。
 ここは、ハンガリーの片田舎に佇む古城。その一室に、ヘンリック(長塚京三)が、旧友コンラッド(益岡 徹)との、41年ぶりの再会を待ちわびている。
 共に75歳。傍らには、妻クリスティナは、もういない。
 かつてヘンリックの乳母であった、ニーニ(樫山文枝)がいるだけだ。
 ヘンリックにとって、この再会は友好的な邂逅ではなく、復讐に近い波乱の対決である。


舞台上にはクラシカルな部屋
暗転から明かりが入ると長塚さんの背筋が伸びた後ろ姿。
しばらくは長塚さんひとり。台詞はない。
初めの数分で長塚さん演じるヘンリックのキャラクターや今の状況がわかる。ニーニの登場と2人の短い会話でこれから起こることがわかる。
コンラッドが登場してからは老貴族二人の会話。
と言っても実際に話すのはほとんどヘンリック。
長台詞なんていうレベルではない。
話しているのはほとんど1人なのに50分ほどで1幕終了、休憩になってちょっとびっくりした。それほど短く感じた。
2幕もしかり。
長塚さんの話しぶりは静かで端正で動きも少ない。でも飽きさせない。その静かな台詞の中にある「パッション」が時に激しく、時に狂気じみて、こちらに伝わってくる。初めはお手本のような長塚さんの台詞に聞き惚れるが、すぐに物語にひきこまれる。
この台詞、長塚さんご自身の翻訳というのもすごい。
台詞を話しているのはほとんど長塚さんだけど、けして1人芝居ではなく、こちらに響いてくる。
その間じっと耳を傾ける益岡さん演じるコンラッド、彼にとってもつらいであろう41年前の出来事。これがまたすごくて、台詞がなくても確かに彼が耳を澄ませ、その時々に心が動くのが見える。
「聞く」ってこういうことなんだと思った。
プログラムの中のインタビューで益岡さんがこうおっしゃっています。

「・・・ちゃんと聞いていなければ、当たり前ですけどリアクションできないですから。とはいえ、芝居というのは相手が何を言うのか知っている上でやるものですからね。次に自分が言う台詞もわかっている。つまり、初めて聞いたように反応するっていうのは、難しいことなんですね。だから、拙い言い方ですけど、どれだけ初めて言うように言えるか、初めて聞く事が出来るか。それが芝居の要なんだろうなって思いますね。・・・」

頭ぶん殴られたような気がしました。
いつもいつも言われていて私は全然出来ないんですけど、こんなベテランの役者さんたちもこんなふうに苦労しながら克服してらっしゃるんですね。
なんか、むちゃくちゃ説得力がありました。


淡々と話が続くのでこういうのが苦手な人は集中が切れることもあるかもしれません。隣の人はちょっとコックリしてました。
私はただただ感心していました。
洗練された大人の芝居でした。




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