ちょっと前に,呉座勇一さんの『陰謀の日本中世史』(角川選書)を読んだ。
本能寺の変の真相,に代表されるように,日本中世史にはさまざまの陰謀論があるけれど,専門家はあえてそういった陰謀論を否定しようとはしない。それは,一目で荒唐無稽と分かるような話の間違いを証明しても,学界では研究業績にならないからだ。しかし,全ての日本史研究者が「時間の無駄」と考えて無関心を決め込めば,陰謀論やトンデモ説は致命傷を負うことなく生き続ける。誰かが猫の首に鈴をつけなければならない,として呉座さんはこの本を書いた。
いくつもの陰謀論について,歴史学の手法に則って,客観的・実証的な分析が行われていて,読んでいてとても興味深い。
しかしそれ以上に面白かったのは,最終章で,陰謀論の特徴,人はなぜ陰謀論を信じるのか,をまとめているところだった。
陰謀論の特徴とは,(1)因果関係の単純明快すぎる説明,(2)論理の飛躍,(3)結果から逆行して原因を引き出す,とまとめられている。また,陰謀論者は挙証責任を批判者側に転換することが指摘されている。
そして,人はなぜ陰謀論を信じるのかといえば,陰謀論が単純明快で分かりやすいからであり,「歴史の真実」を知っているという優越感をくすぐられるからである,とされている。
なるほどなぁと思うことしきりであると同時に,日本通史の決定版!と銘打たれて最近売れている本が,こうした特徴を兼ね備えていることに気が付いた。
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