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父母の故郷

2021-05-07 11:20:00 | 日記
小さい頃、夏休みに入ると姉妹3人で、両親の故郷である山口県の親戚の家に転々と泊まらせてもらっていた。

山口には寝台特急の「ハヤブサ」というのに乗って行く。
特急電車の寝られない夜は長かった。夜の空に真っ黒い山の端が見えていた。
通路の窓のカーテンを上げて外の景色を見ていることも多かった。
人の居ない、止まらずに通り過ぎてしまう駅の光が嬉しかった。
時折車掌が巡回に来てカーテンを閉める。そうすると寝台に戻り、寝た。

朝になると見える景色が一変している。田んぼの緑が美しかった。
それはそれはほんとうにほんとうに、ほんとうに、美しかった。
その緑の中に、大きな立て看板が目立っていた。

両親の故郷に行く時には、いつも姉二人と一緒だった。
祖母の家、伯母の家での思い出に姉の姿はあるが、電車の中に姉たちの記憶はない。

寝台の下段にいるはずなのに、その姿も会話も思い出せない。
何か一緒に食べたり飲んだりしたのだろうが、その記憶もない。
母のことも思い出せない。
こうして書いていれば、そのうち思い出すのだろうか。

覚えているのは、電車の中の設えの形と窓から見た風景と車掌さんだけだ。
最上段の寝台には窓が無い。
体に迫ってくる角の丸い電車の天井はよく覚えている。







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