隣家が道路の拡張のため立ち退くことになった。
駅に向かう道の拡張計画は、もう何十年も前からあった。
でもそれがほんとうに行われる日が来るのだろうかと、ずっと私は思っていた。
役所が立てた看板では立ち退きは10年以内にということだったから、しばらく隣家は引越さないだろうと思っていた。
昨日偶然道でお会いしたので伺ってみると、1年程で引っ越す予定だと言われて驚いた。
気さくな奥さんが「あと10年したら80歳よ、60歳になるのなら10年待ってもいいけど」と笑って言う。
玄関周りはいつもきれいに掃いてあって、
ドアには気の利いた季節の飾りものが、さりげなく吊るしてある家だ。
今年で柘榴も終わりだと、奥さんが明るく言った。
「今、花が咲いているの。和紙のようなしわくちゃの花」
そこからは見えなかったけれど、拡張予定の道路を通るときにはブロック塀越しに柘榴の木が見えた。
引越し先の話なども聞き、気がつくと1時間も立ち話をしていた。こんなに長くこの奥さんと話したのは初めてだ。
そして今朝また、犬の散歩でその家の前を通ったら奥さんがいらした。
今日はハサミを持って玄関脇の木の剪定をなさっている。
思わず、柘榴の花をひと枝いただけないだろうか、と聞いてみた。
「良いですよ、さあどうぞアル君も」と門を開けて通してくれた。
そして「どれがいいか選んでね」と柘榴の木まで案内して下さった。
花のたくさんついた枝と合わせて、葉だけの枝も頂いた。
「棘があるから気を付けて」と枝元の棘もハサミで落として下さった。
花が萎れないうちにと、さっそく描いた
本物はコレ
その柘榴の幹はとても太かった。こんなに立派な木とは思っていなかった。
ブロック塀越しに見て私が思い込んでいたのとは全く違う。
柘榴の木としては、私が見たこともないような太い幹だった。
庭は広くはないけれど、整頓されてあれこれ植わっていて、美しかった。
この整頓された庭が そして柘榴の木が 一年後には無くなっている。
他人事ではなく、自分も、庭も、いつどうなるかわからない。
この世の物は儚いのなのだなあと平家物語の冒頭部分を思い出す。
昔の日本人は心にしっかりとそういう覚悟を決めて、しかも明るく生きていたんだなあと思う。
自分もそうありたい。
初めて見ました!!
この絵、いいなぁ〜❤️
とっても好きです❤️