御名残公演 さよなら歌舞伎座 四月公演ふたたび

「これだけは桟敷か一等で見たい」と願っていた「助六」は、激しいチケット争奪戦の末、三等席しか取れなかった。見に行ったのが先週のこと。まあ、見られただけでもよかったかなと自分を納得させつつ、釈然としないまま、買うともなくチケットのオークションを眺めていた。

そんなときに、ブログ仲間の黒猫さんから「チケットが余ってしまって」というお誘いが！
天は我を見離さなかった！

仕事もほったらかして歌舞伎座にほいほいと出かけた私。(その結果、昨日今日は徹夜）

ただでさえ華やかな「助六」。今月は登場する役者さんも綺羅星のごとく、華やかさもいや増すというもの。何よりうれしかったのが、團十郎丈が助六を通しで演じられたこと。四月の幕が開く前に、「團十郎復活」という本を出版されたのはご存じだろうか？それを読んで、想像していた以上に闘病生活が苛酷であったことを知った。助六は登場してから出ずっぱりの体力のいる役なので、完治されたとはいえ大病をされた団十郎丈が、どんなふうに演じられるのか、正直なところ案じていたのだ。

ところが、舞台の團十郎丈は、そんな懸念をすっかり吹き飛ばすエネルギーにあふれていた。先週の三階席からも元気な様子はよくわかったが、今回は距離が近くなったせいか、そのオーラをびんびんと感じることができた。おおげさではなく、花道からそのパワーがびりびりと伝わってくるのを感じる瞬間があった。それで眠気が覚めたほどだ。

通人を演じた勘三郎丈も「すっかり元気になられて」とせりふにお祝いの気持ちを盛り込んで、その回復を喜んでくれた。おそらく、同じ舞台に立った役者さんすべてが、團十郎丈の回復を喜んでいたのではないだろうか。やはり同じく大病を克服した仁左衛門丈も、もちろん。たぶん、私が歌舞伎を好きなのも、ライバル同士であっても、どこかにファミリーのようなお互いを思う心が舞台の上には感じられるからかもしれない。それは幼いころから梨園という世界に育った者同士が共有する独特の心持なのだろう。

この日、東京では23度という初夏のような暑さだったので、涼しげに見えるということで白大島を着用。



図らずも、黒猫さんは黒い大島で、大島シスター　Black＆Whiteとなった次第。黒猫さんの袂からちらりと見えた赤の襦袢と、助六に合わせた傘柄の帯が素敵。実は私もこの日はひそかに襦袢に凝っていた。

「かまわぬ」柄の襦袢の袖（”うそつき”なので）

先週までと比べると心なしか着物のフォーマル度が下がり気味のように思えた歌舞伎座。この日が暑かったせいか？その中で、「助六」の音楽を担当する河東節連中のマダム方が、黒の留袖で記念撮影をされているのが目立っていた。通常、結婚式などで見る黒留袖より柄も少なく粋な感じ。

ああ。私だって「河東節」を演奏できる身分であったら、たとえ一度しか着なくても、黒留袖新調する！ぜったい！！