投資家の目線

投資家の目線880(今週の動き)

 ウクライナ兵の死者が1万人達したという(「ウクライナ兵の死者1万人に 政府高官、東部で犠牲拡大」 2022/6/12 日本経済新聞WEB版)。ウクライナの大統領顧問は前線で毎日100人から200人が戦死していると語っていた(『「前線で毎日100~200人戦死」 ウクライナ大統領顧問』 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。『AP通信は「このところウクライナ軍の戦死者は1日に60-100人、負傷者は1日およそ500人に達する」とし「これはベトナム戦争当時の米軍の1日最多戦死者数(50人)を大きく上回る数値」と伝えた』(『ロシア軍の火力に押されるウクライナ軍「戦死者は1日に60-100人」』 2022/6/7 朝鮮日報日本語版)。ウクライナ軍の被害は相当ひどいものと言える。

 

 『ストルテンベルグ事務総長はCNNとのインタビューで「こうした停戦合意違反の動きは、ロシアによるウクライナ侵攻の口実に利用される恐れがある」と語った』(「ウクライナで停戦違反が増加、NATO事務総長が懸念表明」 2022/2/17 ロイター)。NATOのストルテンベルグ事務総長が「こうした停戦合意違反の動きは、ロシアによるウクライナ侵攻の口実に利用される恐れがある」と語ったということは、停戦違反をしているのはウクライナ側だろう。ウクライナのやったことは、ハチの巣をつついてからかっていたら、スズメバチの大群に反撃されたようなものだろう。分別の無い子供がやったことならまだしも、やったのは大の大人だ。ウクライナは自分の不始末は自分で処理するべきで、本来なら日本はウクライナにつき合う必要はない。ウクライナはアフリカ連合から機雷を除去するよう責められてもいる(「アフリカ連合議長国、ウクライナ機雷除去要請 飢饉懸念」 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。

 

 6月10日から日本は訪日外国人客の受け入れを再開した。日本政府は地域経済の活性化に期待している(『官房長官、インバウンド再開「地域経済の活性化に期待」』 2022/6/9 日本経済新聞WEB版)。しかし、ロシアから南千島周辺での漁業権を取り上げられそうだ(「日本の漁業権取り上げも ロシア副首相、北方領土周辺で」 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。肥料不足による価格の高騰で穀物生産にも支障をきたす中、訪日客に満足のいく食事が提供できるのだろうか?提供できなければ、インバウンド景気も期待外れに終わる。松野博一官房長官は、『ロシアが北方領土周辺の漁業に関する協定の履行中断を発表したことに関し「一方的で遺憾だ」と述べた』(『官房長官、ロシアの漁業協定中断「一方的で遺憾」』 2022/6/8 日本経済新聞WEB版)というが、ウクライナ問題に関し、ロシアに一方的に制裁を加えたのは日本の方だ。ついにはNHKまでロシアに対してキエフ支援側のプロパガンダ放送を行うようだ(「BBCやNHK、ロシアへ短波ラジオの放送枠広げる」 2022/6/11 日本経済新聞WEB版。)。

 

 岸田首相は、アジア安全保障会議の講演で『「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を排除せず、国民の命と暮らしを守るために何が必要か現実的に検討していく』(「アジア安全保障会議での首相講演の要旨」 2022/6/11 日本経済新聞WEB版)と語ったが、高市早苗自民党政調会長の言う電子機器を使用不能にする電磁パルス兵器の前に、電子機器の塊である「反撃能力」は機能するのだろうか?「北朝鮮がロシアの技術を利用してEMP(Electromagnetic Pulse)兵器をすでに完成させているという報告書が発表された」(「日本全体が1発で麻痺、核より怖い北朝鮮の電磁パルス攻撃 米国の専門家が明らかにしたEMP兵器に関する警告」 2021/6/24 JBpress)というから、ロシアが同兵器を保有していても何もおかしくはない。

 

 欧州は分裂を始めた。フランスのマクロン大統領が「ロシアに屈辱を与えてはならない」(『仏大統領、「ロシアに屈辱与えてはならない」発言で批判再燃』 2022/6/9 (AFP=時事))とロシアに融和的な姿勢なのに対して、『欧州連合(EU)加盟国であるエストニアのカラス首相は、ウクライナ戦争について他のEU各国首脳が打ち出した方針を「早計な停戦要求だ」と批判し、EUは「長期戦を覚悟」しなければならないと述べた』([FT]エストニア首相「EU各国の停戦要求は時期尚早」 2022/6/7 日本経済新聞WEB版)と、エストニアは対ロシア強硬派だ。国連安保理の非常任理事国でもあるマルタの外相は追加の対ロシア制裁に慎重だ(『マルタ外相、EUの対ロ制裁「欧州が苦しんではならず」』 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。ロンドンの状況は、「月々の電気代が約280ポンド、1ポンド=160円換算で約4万5000円。週末に家族4人で近所のラーメン屋にいくと約1万円。少しでもコストを下げようとディーゼル車を選んだが、一度の給油が2万円近くになった」(「イギリス、インフレとの戦いが促す新陳代謝」 2022/6/7 日本経済新聞WEB版)というが、ボリス・ジョンソン英首相は市民生活を犠牲にしてまで、食糧難やエネルギー高騰につながる対ロシア制裁にのめり込むつもりだろうか?

 

 アメリカに目を転ずると、ロサンゼルスで開催された米国主催の米州首脳会議には、8カ国の首脳が欠席した(「米、中南米外交に綻び 8カ国首脳が会議ボイコット」 2022/6/9 日本経済新聞WEB版)。米州内部でのバイデン政権の評判の悪さの表れだろう。孤立しているのはロシアよりバイデン政権の米国の方ではないのか?同会議に招待されなかったニカラグアは、ロシア軍を受け入れる。「首都マナグアと米首都ワシントンの距離は約3千キロで、米本土への脅威となる可能性がある」(「ニカラグアがロシア軍に駐留許可 反米左派政権」 2022/6/12 日本経済新聞WEB版)。約3千キロというと、東京とイルクーツク間ぐらい。国名が征服者スペインと戦ったニキラノ族の首長ニカラオに由来するニカラグアは、西洋的価値観に対する反骨精神がありそうだ。ウクライナのNATO加盟を認めろというのなら、ニカラグアへのロシア軍駐留も認められるべきだろう。また同会議ではバイデン大統領が、「西半球が今後10年間で世界における最も民主主義的な半球とならないわけがない……我々にはそれを実現する上でのすべてがある。他のあらゆる半球よりも、この半球には人も、資源も、民主主義国もある」(『西半球は「他のあらゆる半球」より民主主義的となる=バイデン氏』 2022/6/10 スプートニク日本)と発言した。バイデン大統領に言わせれば、東半球の日本や大韓民国、オーストラリア、ニュージーランドは民主主義国ではないらしい。

 

 「トルコメディアのハベルチュルクは9日、国営ガス大手ガスプロムやオリガルヒ(新興財閥)など43のロシア企業がトルコのイスタンブールに欧州拠点を移すと報じた」(「ガスプロムなどロシア企業、欧州拠点をトルコに 地元報道」 2022/6/10 日本経済新聞WEB版)。ウクライナ問題では、トルコが漁夫の利を得ている。

 

追記:

2022/6/14

 エネルギー不足は英国だけでなく日本も同様。寒さが厳しかった場合、政府は一般家庭で約110万世帯分の電気が全国で不足するとの見通しを発表した(『冬の電気不足110万世帯分「エネルギー危機」まとめ読み』 2022/6/12  日本経済新聞WEB版)。原発利権派は、これを機に原発再稼働をもくろんでいるのであろうが、「ロシアは世界のウラン濃縮で約35%の市場シェアを握る(UxC調べ)。ウランのガス化も供給網の急所だ。ロシア以外で商用のガス化施設を持つのはフランスとカナダのみだ」(「ウラン供給支配するロシア、米は核燃料調達に不安」 2022/3/23 WSJ)という。原発再稼働で日本のエネルギー問題が解決するわけではないと言える。

 

2022/7/27

 2015年2月にウクライナ東部紛争解決のために署名されたミンスク合意は、ウクライナとロシア連邦が、欧州安全保障協力機構(OSCE)の援助の下で署名している。国連より数は少ないがOSCEには57カ国が加盟し、日本は加盟国ではないが協力パートナーである。停戦違反というミンスク合意をないがしろにするようなウクライナの肩をもつ必要があるのか?

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