病院建設工事を巡る背任容疑で、日本大学理事の井ノ口忠男容疑者と大阪市の医療法人錦秀会グループ元理事長の藪本雅巳容疑者が東京地方検察庁特別捜査部に逮捕された。容疑者らは大学の資金2.2億円をペーパーカンパニーに流出させたという（「ペーパー会社に流出2.2億円 日大理事ら背任容疑で逮捕」 2021/10/7 日本経済新聞WEB版）。私立大学は政府から補助金（私学助成金）を受けている。2016年度のデータによれば、日本大学の受けとった経常費等補助金は第2位の138.9億円に上る（｢補助金が多い私立大学法人｣ランキング200 1位東海大､2位はあの日本大､3位は慶應 本当に強い大学 – 2018/8/31 東洋経済オンライン）。藪本容疑者といえば日本経済新聞WEB版の「首相の動静」を検索するだけで、2016年7月20日、2017年5月4日、2018年5月6日、2018年12月29日、2019年5月6日、2019年8月21日、2020年1月4日にゴルフ、2019年5月5日、8月19日、20日、9月21日に会食等を、当時の安倍首相としている。
大阪といえば、森友学園も大阪だった。以前も書いたが（投資家の目線741（関西電力事件と関西の裏ガネ） 投資家の願い）、田中森一著書「反転 闇社会の守護神と呼ばれて」（幻冬舎）に、北海道拓殖銀行（以下拓銀、1997年11月経営破たん、営業譲渡に伴い預金保険機構が総額約3兆4000億円を資金援助）系ノンバンクから約2000億円を借入れた金融会社ECC（1993年経営破たん）を率い、居酒屋チェーン「五えんや」の創業者中岡信栄氏と付き合いのある政治家として安倍晋太郎、忠ｺ登、生長の家の玉置和郎、村上正邦（日本会議）、公明党矢野絢也（八尾市出身）、民主社会党の春日一幸などが、接待対象としては近畿財務局長、大阪府、府警、国税局、中央官界では旧大蔵省の中島義雄元主計局次長や田谷広明元東京税関長、国税庁の矢野ら幹部と交友関係があげられ、京唄子や横山ノック（後の大阪府知事）などの有名人がカネを受け取っていたことが書かれていた。ECCの顧問弁護士は検察内部に影響力のある田村彌太郎元仙台高検検事長だったという。安倍晋太郎に関してはホテルオークラでの接待の記述もある。「拓銀はなぜ消滅したか」（北海道新聞社［編］p77～p78）は、債権の大幅カットが確実で、債権者に圧倒的に不利になるECCの和議に拓銀が同意したのは、「中岡はECCを通じて数百億円の資金を得て、その中から大蔵官僚や政治家ら幅広い筋にカネをばらまいていた。ECCが破産すれば第三者である破産管財人に財産管理がゆだねられ、そうした実態が明るみに出る。だからECCばかりでなく、中岡から資金提供を受けた政官界関係者としても何とか破産ではなく和議に持ち込みたかった。拓銀に対して、こうした政官界からの圧力があったとしても決して不思議ではない」という金融関係者の解説を載せている。また、「中岡は、松下電器の社員食堂で働いていたところを松下幸之助に認められたという。」（「反転」p208）、松下幸之助は松下政経塾を設立した人物だ。
森友学園事件では安倍晋太郎外務大臣の秘書官だった安倍晋三首相（当時）、「首相に対する侮辱だ」と言って森友学園の籠池泰典理事長（当時）の証人喚問を主張したのは竹下登の秘書だった竹下亘自由民主党国会対策委員長、籠池氏は日本会議の元会員で、安倍昭恵氏が森友学園運営の幼稚園を訪問する前日の2015年9月4日安倍首相が会食した「かき鉄」の経営者は公明党の冬柴鉄三元国土交通大臣の次男、松井一郎大阪府知事（当時）は八尾市出身、土地売却に関わる公文書を改ざんしたのは財務省近畿財務局、森友学園の小学校設置を認可したのは大阪府、安倍晋三元首相の周辺では、大阪でカネにまつわる事件が多く発生する。
今月の25日は、2002年に国家会計の透明化に取り組んでいた石井紘基議員が刺殺されてから19年目。国家会計の透明化は、未だなされていないようだ。
追記：「不透明な資金移動、別の談合捜査で浮上 日大背任事件」（ 2021/10/7 日本経済新聞WEB版）では、この日大背任容疑事件は別の談合捜査から浮上したとされている。別件から発覚した事件としては国税局の調査から発覚した、2019年の高浜町の元助役から関西電力幹部に裏ガネが流れた事件を思い起こさせる。政権に不利な事件は、「周辺」から発覚していくのか？（2021/10/16）
