投資家の目線

投資家の目線879(最近のアジア情勢)

 6月1日に開催されたOPECプラス実務者協議では、WSJが報じていたような、ロシアを石油生産協定から一時除外する案については議論されなかったようだ(「OPECプラス実務者協議、生産協定からのロシア除外を議論せず」 2022/6/1 ロイター)。ロシアのラブロフ外相がサウジアラビアを訪問していたが(「ロシアの穀物輸出に支障、西側の制裁措置で=ラブロフ外相」 2022/6/1 ロイター)、先の協議の結果はサウジアラビアがそれなりに満足できる発言をロシアから引き出せたためではないだろうか?中東は米国側に立っていないようだ(“Russia’s Lavrov Hails OPEC+ Cooperation on Visit to Saudi Arabia” 2022/6/1 Bloomberg)。バイデン大統領が実質的に敗北を認めなければ、米国と湾岸諸国の関係修復は難しいのではないだろうか?イスラエルも米国と湾岸諸国の関係修復は簡単ではないとみている(”Israel Says Talking to US, Gulf on How To Forge Ties With Riyadh” 2022/5/30 Bloomberg)。

追記:バイデン大統領はサウジアラビアとイスラエルへの訪問を7月に延期する模様(”Biden Trips to Saudi Arabia, Israel Postponed to July: NBC” 2022/6/4 Bloomberg)

 

 それに合わせたように、プーチン大統領がトルコ訪問を準備していることが発表された(「ロシア・プーチン大統領、トルコ訪問に向け準備 実現すれば侵攻開始後初」 2022/6/2 TBS NEWS DIG Powered by JNN)。プーチン大統領がトルコで会見するのはエルドアン大統領だけだろうか?トルコでは、今年3月にベネズエラのロドリゲス副大統領とロシアのラブロフ外相が会談している(“Russian Oil Rigs in Venezuela Complicate U.S. Talks With Maduro” 2022/3/12 Bloomberg)。また5月には、イランの石油相がベネズエラを訪問していた(”Iran Oil Minister Travels to Venezuela for Energy Deals “ 2022/5/2 Bloomberg)。トルコはエジプトとも接近している(”Red Sea Rendezvous Is Latest Narrowing in Egypt-Turkey Rift” 2022/6/3 Bloomberg)。

 

 トルコといえば、イランがイスラエル人に危害を加える具体的な脅威があるとして、イスラエルがトルコへの渡航を注意喚起していた(”Israel Raises Risk Warning for Turkey on Iran Attack Concerns “ 2022/5/30 Bloomberg)。イランでは革命防衛隊将校の殺害事件(「イラン革命防衛隊大佐、射殺される テヘランの自宅前で」 2022/5/23 日本経済新聞WEB版)や国防研究所の爆発(「イラン国防研究所で事故 首都近郊、爆発か」 2022/5/26 日本経済新聞WEB版)に関してイスラエルの関与も疑われている。一方、イスラエルはUAEと自由貿易協定を結ぶなど関係を強化している(「イスラエル、UAEと自由貿易協定 対アラブで初」 2022/5/31 日本経済新聞WEB版)。UAE、トルコ、イスラエルは西側から制裁されるロシアの富豪の富をひき付けているところだ(”Russian Yachts and Money Are Going Where US Influence Has Waned” 2022/6/1 Bloomberg)。イスラエルはサウジアラビアやUAEを味方につけてイランをけん制しているように見える。

 

 眼を東に転じてみると、インドネシアがロシアも加盟するユーラシア経済同盟とFTA交渉を開始すると報じられた(「インドネシアとユーラシア経済同盟、FTA交渉開始へ-ロシア大使館」 2022/6/2 Bloomberg)。食糧生産大国・資源国との交易は、人口の多いインドネシアにとって利益が大きいのであろう。インドネシアが議長を務める今年のG20サミットからロシアが排除されることはないであろう。

 

 東アジアでは、大韓民国の統一地方選で主要17地域の首長のうち12勝するなど、与党の圧勝に終わった(「韓国地方選、尹政権に追い風 与党12勝5敗で軌道に」 2022/6/2 日本経済新聞WEB版)。ウクライナの敗北が決定的になる中、朝鮮半島が第二戦線となる可能性は残されたように思う。日本では、プーチン大統領の健康不安説とか(バイデン大統領と違い、その発言をめぐり後で閣僚らが火消しに大わらわになるようなことはない)、クーデター説とか希望的観測を垂れ流す報道が多いがいい加減やめたらどうか?アゾフ大隊のメンバーがキエフの警察トップを務める(アゾフ大隊初代司令官のアンドリー・ビレツキーは、「白人による十字軍を率いて、ユダヤ人に率いられた劣等人種と戦う」と公言している:ウクライナには「ネオナチ」という象がいる~プーチンの「非ナチ化」プロパガンダのなかの実像【中】 - 清義明|論座 - 朝日新聞社の言論サイト 2022/3/24)などアジア系等を見下すネオナチに支えられ(日本国籍保有者はアジア系が大多数を占めるのでアジア系蔑視は現在の日本にとって悪影響が大きい)、DPRKへのICBM技術移転疑惑など兵器の密売を繰り返すウクライナを、食糧やエネルギーを含む安全保障のリスクを冒してまで日本が支援する義理はない。

 

 中華人民共和国と太平洋島嶼国との安全保障協力強化の協定案は見送られた(「中国、太平洋諸国との安保合意見送り アメリカに配慮か」 2022/5/30 日本経済新聞WEB版)が、無理強いをしない中華人民共和国の姿勢は、太平洋島嶼国における同国の信頼を高めたものと推測される。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「政治」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事