日本がロシアの凍結資産を活用したウクライナ支援基金に拠出する検討に入ったと報じられた。日、英、カナダは100億ドルを均等分けで拠出するため、日本の拠出額は約33億ドル(約5000億円超)になりそうだ(「日本がウクライナ支援へ5000億円、ロシア凍結資産活用した基金に拠出へ…財政支援や復興に」 2024/7/17 読売新聞オンライン)。先週も書いたが、サウジアラビアはG7がロシアの凍結資産を差し押さえることに反対していると報じられていた(投資家の目線987(サウジアラビアの欧州債券売却問題))。今年5月の日本の原油輸入量は(速報ベース)、サウジアラビアが374万klで2位、アラブ首長国連邦(UAE)が480万klで1位である(石油統計速報 令和6年5月分 経済産業省HP)。日本の石油輸入は大丈夫なのだろうか?2022年には、G20会合の後、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が訪日する予定だったが、それをキャンセルしてカタールW杯開会式に出席していた(投資家の目線906(日本の石油輸入は大丈夫か?))。サウジアラビアにとって、現在の日本の外交上の地位は低いと考えられる。日本政府は、ロシアの制裁逃れに関与しているとして、UAEやウラン生産国のカザフスタンの団体にも制裁を課している(「中国含む5カ国11団体の資産を凍結 ロシアの制裁逃れで」 2024/6/21 日本経済新聞電子版)。
先日開催された太平洋・島サミットの首脳宣言には、温室効果ガスの問題について取り上げられていた(「第10回太平洋・島サミット(PALM10) 日本・PIF首脳宣言」(仮訳))。岸田首相は世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長と面会している(「岸田文雄首相、シュワブWEF会長と面会 関係強化を重視」 2024/7/2 日本経済新聞電子版)。岸田首相は脱炭素社会の推進について発破をかけられたのだろう。
「ALPS処理水の海洋放出問題」については、各国首脳との会談で、「岸田総理大臣から今後も安心を高めていく旨説明したところ、改めて歓迎の意が示されました。」という表現になっている国が多い(「第10回太平洋・島サミット(PALM10)(令和6年7月16~18日)」 外務省HP )。日本の取り組みについて、必ずしも十分と思っていない国が多いのではないだろうか?太平洋・島サミット開催のきっかけとなったのは、1980年に発覚した日本政府によるマリアナ海溝に原子力発電所で発生した低レベル放射性廃棄物の試験投棄計画である(「太平洋・島サミットとはなにか 日本の対島嶼諸国外交が目指すもの」 小林泉 大阪学院大学教授 一般社団法人太平洋協会HP)(投資家の目線821(福島原発事故の汚染処理水海洋放出))。
「サミット参加国のうちミクロネシア、マーシャル諸島、パラオの3カ国は戦前に日本が国際連盟の委任統治をした南洋諸島に含まれる」(「日本と太平洋島しょ国、海洋安保で行動計画 中国を意識」 2024/7/18 日本経済新聞電子版)。ロシアのプーチン大統領は訪越時にホーチミン廟を訪れた(”Tổng thống Nga Putin đặt vòng hoa và vào Lăng viếng Chủ tịch Hồ Chí Minh ” 2024/6/20 Vietnam.vn)。プーチン大統領は、ホーチミン氏を共産主義者としてではなく植民地からの民族解放闘争の英雄としてとらえているのだろう。南洋諸島の委任統治とはドイツの植民地を日本が引き継いだということである。太平洋島しょ国はプーチン大統領の訪越をどう見ているのだろう?また、太平洋島嶼各国もサウジアラビア・日本間のギクシャクした関係は知っているだろう。今回のサミット結果はどれだけ実効性をもつのだろうか?