goo blog サービス終了のお知らせ 

Art Tree ブログ

アートツリー出版社のブログです。

必見!熊本の絶景をたどる400メートルの旅

2025年05月08日 | 日記
★取材レポート★
<永青文庫「くまもとの絶景」展で、視覚の原点を再発見>

東京・目白の永青文庫で開催中の初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻『領内名勝図巻』―」は、風景画愛好家だけでなく風景写真を愛する方にもぜひ足を運んでほしい展覧会です。


熊本県指定重要文化財 衛藤良行筆「領内名勝図巻 芦北郡田浦佐敷湯浦手永之内(牧山)」 寛政5年(1793) 永青文庫蔵 (熊本県立美術館寄託)


「領内名勝図巻」は、18世紀後半に8代熊本藩主・細川斉茲(ほそかわ なりしげ)の命で制作された大規模な写生図巻です。
藩のお抱え絵師、矢野良勝(やの よしかつ)と衛藤良行(えとう よしゆき)が、主に熊本領内の滝や川沿いの風景などの名勝を実際に訪れて写生し、全15巻、全巻の合計は約400メートルという驚異的なスケールで描き上げました。今回は現存する14巻のなかから選りすぐりの7巻が展示され、現地の写真と並べて紹介されています。


熊本県指定重要文化財 衛藤良行筆「領内名勝図巻 上益城郡矢部手永之内(千滝)」 寛政5年(1793) 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)




巻物は縦30cmがほどの大きさが標準的ですが、この作品はなんと約60cmもあり、広がりと臨場感が段違いです。
まるで一眼レフの広角レンズで切り取ったかのようなパノラマが連続し、構図の妙や遠近の扱いには写真表現にも通じる技術が感じられます。



たとえば断崖から滝が落ちる構図、水の流れに沿って視点が移動していく表現などは、まさに風景写真のフレーミングそのものです。
絵師たちは雨や雪、寒風に耐えながら現地で写生を行い、わずか2年足らずでこの壮大な画巻を完成させたとのこと。
風景への情熱と観察力に、写真愛好家としても共感せずにはいられません。




熊本県指定重要文化財 衛藤良行筆 「領内名勝図巻 上益城郡矢部手永之内 (五老ヶ滝)」 永青文庫蔵(熊本県立美術館寄託)

また、細川斉茲自身も絵を描きました。
会場には、斉茲が描いた動物画や娘の肖像、さらに9歳であった斉茲の息子・斉樹が描き、斉茲が彩色した親子による珍しい合作も展示されています。


細川斉茲筆「融姫像」 江戸時代(19世紀) 永青文庫蔵


細川斉茲・細川斉樹筆「鶏図」 寛政9~10年(1797~98) 永青文庫蔵

斉茲は風景好きの大名たちと交流し、参勤交代を通じて文化を行き来させたという背景も興味深い点です。当時の文化的ネットワークの広がりを感じさせます。


司馬江漢作「地球儀」 文仁7年(1810) 永青文庫蔵


「柿の蔕茶碗」 朝鮮 朝鮮時代(16世紀) 永青文庫蔵

現代の写真表現における「構図」「観察」「記録」という基本に立ち返りたい人にとって、『領内名勝図巻』は最高のインスピレーション源となるでしょう。
旅するように画巻をたどる時間は、撮ることとはまた違う、新たな「見る喜び」を教えてくれます。

(本文中の写真は「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻「領内名勝図巻」―」の内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)

■初夏展「くまもとの絶景―知られざる日本最長画巻「領内名勝図巻」―」
会期:2025年4月26日(土)-6月22日(日)
会場:永青文庫(東京都文京区目白台1-1-1)
休館日:月曜日(ただし5月5日は開館し、5月7日は休館)
開館時間:10:00-16:30 (入館は16:00まで)
詳細:https://www.eiseibunko.com/

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では投稿作品を募集しています。



株式会社アートツリー出版社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現

2025年02月01日 | 日記
★取材レポート★

何気ない「モノ」にレンズを向ける行為は、現代では特別なことではなくなりました。
日常生活の中で誰もが気軽に「モノ」を撮影できます。商業広告の世界では商品(モノ)を撮影することを、「ブツドリ(物撮り)」といいます。
この「ブツドリ」という言葉を「物」を「撮」るという行為として広く捉え、多角的に探る企画展が、滋賀県立美術館で開催中の「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」展です。





展覧会では、明治期の写真原版から現代アーティストの作品まで、200点以上の作品を通して「物を撮る」という行為の進化と表現をたどります。





文化財の記録写真や大正時代の叙情的な作品、さらには1920年代の新興写真やフォトモンタージュ、1930年代の前衛写真など、多様な視点が楽しめます。
時代が進むにつれて写真家たちは作品に即興性を加え、さらに皆で外に出かけて作品制作をするようになったことも興味深い変化です。





日本における初期の広告写真から、ポスターなどの広告にみられるグラフィック表現も紹介しています。
また、「写真を撮る」という行為そのものを問い直す作品は、鑑賞者に新たな視点を与えてくれます。





物撮りの多様な魅力を発見できる絶好の機会です。写真を愛するすべての人におすすめしたい展覧会です。



(本文中の写真は「BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現」の内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)

■BUTSUDORI ブツドリ:モノをめぐる写真表現
会期:2025年1月18日(土)-3月23日(日)
※会期中に一部展示替えがあります
会場:滋賀県立美術館 展示室3(滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1)
休館日:毎週月曜日(ただし休日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
開館時間:9:30-17:00(入場は16:30まで)
詳細:https://www.shigamuseum.jp/

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では投稿作品を募集しています。



株式会社アートツリー出版社

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

企画展 花器のある風景

2025年01月30日 | 日記
★取材レポート★

泉屋博古館東京で開催中の「企画展 花器のある風景」では、花をいける器「花器」がテーマとなっています。
生花では一見、花が主役で花器は脇役とも思えますが、花器の歴史や文化的背景に光を当てることで新たな視点を得られます。





花を描いた絵画や出版物に見られる「花器」の存在は、普段はあまり注目しない存在に目を向けるきっかけになるでしょう。





江戸時代後期に描かれた春花図です。
画面上方に歌人による賛が描かれています。この賛では「瑠璃能瓶」などの言葉でわかるように、花だけでなく花器についても語られています。





花器のルーツは中国にあり、宋の時代に古銅器や陶磁器を模した花器が作られるようになり、その文化が日本にも伝わりました。
展覧会では、花器そのもののデザインや歴史も紹介されています。様々な花器の細部や質感は視覚的、技術的にも興味深いものです。









(本文中の写真は「企画展 花器のある風景」の内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)

■企画展 花器のある風景
会期:2025年1月25日(土)~ 3月16日(日)
会場:泉屋博古館東京(東京都港区六本木1-5-1)
休館日:月曜日(2月24日は開館)、2月25日(火)
開館時間:11:00-18:00
*金曜日は19;00まで開館 *最終入館は閉館30分前まで
詳細:https://sen-oku.or.jp/tokyo/

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では投稿作品を募集しています。



株式会社アートツリー出版社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE

2025年01月27日 | 日記
★取材レポート★

今回写真愛好家の皆さんにお届けするのは、デザイン・ことば・空間が織りなす展覧会「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」の取材レポートです。光や音の演出も楽しめる本展は、普段の視点を少し変えるきっかけになるでしょう。



堀内誠一(1932-1987)は、『anan』や『BRUTUS』など数々の雑誌のアートディレクションを手がけ、デザインの世界でも名を馳せました。そして絵本作家としても知られています。大人向けから子供向けまで、堀内の作品は一人の人物が描いたと思えないほど多彩です。絵本だけでも70冊以上ありますが、一つひとつが異なる画材や技法で描かれています。



本展は3つのテーマに分かれていますが、その一つ「FANTASY」では、代表作『くろうまブランキー』『雪わたり』『ぐるんぱのようちえん』など、ファンタジー色の濃い絵本作品が展示されています。会場設計は建築家・インテリアデザイナーの設計事務所imaが担当しました。事務所にある白い楕円形のテーブル上で思いついた企画が、本展で実現しています。
楕円の展示室には、高さ約3メートルの巨大な絵本が立ち並びます。展示空間の中央には立体的に再現された「ぐるんぱ」が登場し、まるで絵本の世界から抜け出してきたかのようです。




展示室の仕切りは絵本になっています。堀内の描いた絵本は、絵を大きく引き伸ばしても間延びせず密度が高い絵だとわかります。最近はあらゆる画像をスマホの画面で眺めることが多くなりましたが、「大きくプリントする」ことを考えることで、私たちの作品づくりが変わっていきそうです。本展から作品づくりのための沢山のヒントが得られるでしょう。



(本文中の写真は「堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE」の内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。)

■堀内誠一展 FASHION・FANTASY・FUTURE  
会期:2025年1月22日(水)- 4月6日(日)
会場:PLAY! MUSEUM(東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3棟)
休館日: 2025年2月16日(日)
開館時間:10:00-17:00(土日祝は18:00まで/入場は閉館の30分前まで)
詳細:https://play2020.jp/

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では投稿作品を募集しています。



株式会社アートツリー出版社

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

本年もよろしくお願いいたします

2025年01月10日 | 日記
新しい年をいかがお過ごしでしょうか。
2025年もよろしくお願いいたします。

昨年末に『PHOTOSAI』Vol.47を発行しました。
表紙の写真は、2023年1月に長野県の諏訪湖で撮影した白鳥です。

『PHOTOSAI』Vol.47は、花と氷が織りなす感動の物語から、最新技術のトピックまで。写真愛好家の心を動かす特集満載の一冊です。

■花と氷の写真エッセイ

いがりまさしさんの「白の中の白」や谷田梗歌さんの「星の降る夜」は、深い感性に触れられる内容です。
特に冬の情景を撮るヒントが得られそうです。

■写真愛好家の作品集

参加者の作品テーマ設定や秋の撮影の様子は、ご自分の活動の参考にできます。
他の愛好家の作品を鑑賞することで、新しい視点が見つかるでしょう。

■展覧会情報

全国各地で開催される美術館の展覧会情報を掲載しています。
『PHOTOSAI』Vol.47では、青森の十和田市現代美術館、滋賀県立美術館、東京ステーションギャラリーの展覧会を紹介します。

■話題のニュース

AIや新技術を使った写真関連のサービス、写真プリントやサービスなどの最新トレンドがわかります。
プリントサービスは写真愛好家にとって特に魅力的です。

■齋藤千歳さんやさきのりりさんの活動を紹介

齋藤さんの物欲シリーズは、パソコン回りの環境整備の参考に。
さきのりりさんのフォトライブラリーでは、水辺の風景を追う楽しさを感じてください。

■アートツリー出版社の投稿できる写真雑誌『PHOTOSAI』では投稿作品を募集しています。



株式会社アートツリー出版社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする