銀心中
田宮虎彦(1911-1988)
夫の戦死を知らされた理髪師の佐喜江は、彼女の元で働く珠太郎と心通わせるようになるが、突然、夫が復員してくる。珠太郎は姿をくらませるが、居所を探し当てた佐喜江は彼を追って、東北のしろがね温泉に向かう。
《佐喜江は、喜一にかくれて直ぐ珠太郎に手紙を書いた。返事は来なかったが、矢つぎばやに三通も四通も出した時、簡単に私のことは思いきってくれと書いた葉書が来た。佐喜江は店先に投こまれた葉書をワンピースのポケットにさりげなくおしこんで、翌る日、汽車にのった》
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戦争の渦に巻き込まれた社会の不条理。しかし、その中で生まれた愛情は、純粋ゆえに燃え上がるのを止めることはできない。
苦しい悲話ではあるが、そんなヒロインを目に涙を溜めて見守るような視点で描かれている。
他七編を収録。
2021.4.4読了
新潮文庫
昭和36年2月28日初版発行
昭和50年2月15日20刷
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