@デッキ＠

「これもっと安くならないの？」
「うちとしましてもこれがギリギリですので…」
９８００円のビデオデッキを必死に値切る。
２日前オークションで落とそうと思ったが、新品だと店で買うのと
さほど変わらない値段だったので近所の電気店に足を運んだ。
６年前に購入したデッキをだましだまし使ってきたがもう限界らしい。
巻き戻しが出来なくなってしまったのだ。
丸坊主の店員を口説くこと２０分。待ちに待った言葉が飛び出した。
「ん～じゃ７９００円で…これ限界です」
「買います！！さすが○○電気さん、安い！でも、もっと安くならないの？」
苦笑いを浮かべる店員をよそに、喜びを噛み締める。
電気店に行ったら値切るのは当たり前だ。
仕入れは安いのだから、店頭価格で買うほどばかばかしいものはない。
支払いを済ませ、自動ドアをくぐる。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
「いえ、多分もう来ないっすから」

サービスとは戦いである

諸行無常である

そしてぼくは無情である