Der König Hat Eselsohren

「わが教え子、ヒトラー」




前売りを買ったのが、確かギララを見に行ったときだから、かれこれ2ヶ月半くらい待ってました。
テレビのドイツ語講座でも紹介されてたしね。
それでも公開までこれだけのタイムラグがあるというあたりが、さすがは福岡です。
もちろん、国内で配給されるプリント数がかなり少ないだろうから、これはこれで仕方がないんだけど。

そして、客層がスゴイ。

男ばっかしなんですけど!!
なんで????
タイトルの時点で、女性は引きがちなんでしょうか?
ちょこっとでも内容とか、その他諸々の情報を知ってたら、面白そうと思ってもおかしくないんだけど。


パンフは買ったものの、まだろくに読んでないんで、ホントに映画を観る前に公式サイトを見て知った情報と映画そのものしか知らないに等しいんですが、これはマジで面白いです!!
都内での上映が渋谷のBunkamuraだったみたいなんだけど、ユーロスペースあたりが扱いそうというか、配給だけではなく上映しそうな映画ですよ!!…といってどれくらい伝わるものなのかはわかりませんが。
でも、配給はアルバトロスなんだよね。それはちょっと納得。←マニアック


なんぞという、ミニシアター系映画オタクみたいな話はおいておくとして。


ヒトラーに演説を指導した人物がいた、という史実をヒントに、それがユダヤ人だったというアイディアが秀逸!
しかも、それを思いついた監督自身がユダヤ人で。
そうじゃなかったら、この映画はコメディとして存在し得なかった。
つーか、これだけおかしいのに、観客が少ないせいか、なかなか館内大爆笑とはならなかったんだけど…。
でも、そういった背景のおかげで、ヒトラー自身がユダヤの血を引いているなんて話がクローズアップされてくるし、独裁者はもちろん危険ではあるけれど、本当に危険なのはそのバックにいる人たちではないか、今、自分たちのいる社会も実は大差ないのではないか?と刃を突きつけられる気がしたり。
だって、あれだけ福田政権がずっと批判にさらされ続けたのたのって、実は安倍晋三に比べて、福田康夫は官僚が与しにくかったからという面もあるんじゃないかと…その点、麻生太郎って裏が暗躍しやすそうだよね、ってf(^ー^;

そして、何より、今の日本には、こういう映画を作ることはできないだろうという絶望感にも苛まれる。
それは、ドイツでは独裁者ヒトラーにすべての責任を負わせることすら可能な終わりを迎えたながらも、ずっとその責任について考えながら歩んできたように思う。
実際にこの映画を観ていると、当初の姿とは一変して、すでに傀儡に近いヒトラーと、それを操る幹部たち、そして衆愚という構図があの時代に存在し、それがユダヤ人の大量虐殺とドイツの敗戦に結びついていったのではないかと思われる。
それに対して、日本では、天皇の責任は問わず、いわゆる戦犯に責任を負わせ、さらにそれですべて終わったと考えていることに問題があるのではないだろうか?
別に、昭和天皇に責任を負わせるべきだ、とまでは言わないが、イデオロギーの問題は脇に置いておいて、現実に何が起きたのかという検証を日本は避け続けているのではないか?
だからこそ、日本では、まだまだこんな映画は作れない、作ったとしても上映することは困難なのではないだろうか。
今、ドイツは、ネオナチの台頭に対して、強い危機感を抱いている。
それでも、この映画が出てくるまでに、戦後60年以上かかっているのだ。
なのに今の日本は、社会の右傾化に手放しでyesと言ってないだろうか?
「KY」の一言で、左派を封じ込めてはいないだろうか?


笑いながら、考える映画である。
まさに映画の面目躍如といったところか。





あ、でも、もう一つ。
どうして変な英語のタイトルをつけてるんでしょう?
原題の「Mein Fühler(我が指導者)」は、映画の中では結構重要な台詞ではあるけれど、そのままでは日本に通用しないし、しかも、この映画においてはこのタイトルはダブルミーニングだと思うので、なかなかそのままというわけにはいかないんだけど。
でも。
「わが教え子、ヒトラー」って、本来のダブルミーニング性は失われてしまうにせよ、これはこれで素晴らしい邦題だと思うんで、実に英語タイトルは不要かと。
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