ロバのままに旅ゆけ

険しい人生の旅路をゆけど、それでもロバはロバのままに

100万回生きたねこ

2008-07-16 23:54:51 | 古い記事
100万回生きたねこ

佐野洋子 著

講談社 刊

 この日は、娘たちの通う小学校で保護者により行われている活動、「読み聞かせ会」のお当番の日でした。長女のクラスで、佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」を読みました。

iconicon  私がこのお話を初めて知ったのは、いまから20年以上前の高校生だったときです。恥ずかしながら真実を申しますと、アニメ番組「聖闘士星矢」のパロディ同人誌で、このお話をタネ本として書かれた漫画を読んだこと
がきっかけです。
 ちなみにこの「聖闘士星矢」、週刊少年ジャンプでの連載開始からもう22年が経っていますが、原作の漫画もアニメのDVDもまだ売れ続けているようです。

 無駄話はともかくとして。この「100万回生きたねこ」が名作であることは、初版から30年を経た今でも版を重ね続けていることが証明しています。

 ただ、「大人のための絵本かもしれない」との評もあるほど、哲学的なニュアンスの強い物語です。小学2年生にはちょっと難しいかなという気もして、いささか躊躇の念もあったのですが。
 私自身の好きなお話でもあるし、掘り下げて理解することが必要というものでもなかろうし・・・と、読むことに決めました。


 以下に、「100万回生きたねこ」の概要を述べます。オチまで書きますので、これから読もうと思われている方はご注意ください。

 主人公は100万年も死なないねこ。いえ、死ぬんですけど、また生きるんです。それも100万回。
 その度ごとに、いろいろな人間に飼われますが、どの飼い主もそのねこから慕われることはありませんでした。
 やがてあるとき、のらねことしての生を受けます。
 伴侶を得て子を授かり、ねこは初めて、自分自身よりも大切に思うものができました。
 しかし終には、その愛する伴侶に先立たれます。嘆きのうちに、ねこもまたその生を終えます。
 それからもう、ねこは生き返りませんでした。

 「生を全うする」とはどういうことか、を描いた作品だと私は解釈しています。
 もっとも、子どもたちにはそこまで考えてもらおうとは思いません。カバーの折り返しに紹介されている、日本経済新聞「こどもの本」の書評にあるように、「何を風刺しているかなどと考えなくても、すごいバイタリティーをもって生き、かつ死んだ話をおもしろいと思ってみればよいと思う」でいいかと。

 いつか大きくなってから、このお話のことを思い出して、そのときまた考えてくれたなら、それも嬉しいかな。


 ところで、このお話を読んで、ある映画を思い出しました。

 1983年にアメリカで制作された「トワイライトゾーン/超次元の体験」という、オムニバス形式のファンタジック・ホラーです。

iconicon

 これは、60年代前半に人気を博した、アメリカのテレビ番組を復刻映画化したもの。
 日本のフジテレビの人気番組「世にも奇妙な物語」は、この作品のコンセプトを模倣したのではないかとの噂も聞きます。


 映画版は4人の監督が1編ずつ制作した4つの短編から成っているのですが、私が思い出すのは、そのうちの第2話です。監督はスティーブン・スピルバーグでした。

 以下の記述は、この第2話の核心を含みます。これから「トワイライトゾーン/超次元の体験」を鑑賞される方は、ご注意ください。

 その一編は、老人ホームが舞台でした。
 そのホームで暮らす老人たちが、不思議な新入居者の誘いで真夜中に缶蹴り遊びをするうち、身体が子どもの頃へと若返ります。
 人生をやりなおせる!・・・と、初めは喜ぶのですが。「大切な人と死に別れたりするのは、もういや」など言い出し、人生の苦楽は既に十分味わったとして、また老人に戻ってしまいます。
 ややうろ覚えですが、そんな筋立てだったかと。

 これまでの人生をともに歩み、互いに愛し支え合った者たちがもういない世界で、再びの生を得ても寂しいものではないか。このスピルバーグ監督の作品は、そういう問いかけを含んでいるように思えます。
 そしてこれは、「100万回生きたねこ」の物語が読者へ投げかけるメッセージと、通じるものがあるような気がするのです。


 読み聞かせが終わった後、ある少年が
「それ、ホントにあった話?」
と尋ねてきました。
 別の少年が
「作り話にきまってるやん!」
と突っ込みました。私は
「そうね、空想のお話だけどね・・・」
と言いかけて、そこから何と言えばいいのか、わからなくなりました。焦りつつ
「おもしろかったでしょ?」
と、どうにか取り繕いましたが。

 作り話の中には、現実を生きる上で悟るべき真理が込められているのだと、彼らもいつか気づくことでしょう。



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10 コメント

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Unknown (ユーキ)
2008-07-17 22:35:36
「100万回生きたねこ」タイトルは知っていましたが筋は初めて知りました。
そこで思い出したのがどういうわけか「子連れ狼」。
最終回かその前の回で主人公・拝一刀が息子・大五郎に
”次の世でも父は父、子はお前ぞ”というところがあって
二人のガキンチョにはそう言いたいなぁ~。
あっちからはあっさり”ヤダヨ、そんなの"って言われそうだけど。
来世 (ドロシネア)
2008-07-17 23:06:38
≫ユーキさん
 「子連れ狼」のそのセリフ、いいですね~。私も来世でまた、今生の娘たちの母になりたいと思います。
 でも、うちの娘たちが「転生」の観念を理解するようになる日は、果たして来るのかしら?

 ところで自分自身はというと、来世では今生とは違う両親の子どもとして生まれてみたい・・・なんて思ってたり。単純に、今生とは違った暮らしも味わってみたい、ってだけのことなんですけどね。
 ま、両親も「次はもっと出来のいい子どもの親になりたい」って言うかもね。
100万回生きたねこ (えいみ)
2008-07-18 09:16:34
有名なのでタイトルと大まかな話は知っていましたが、実際読んだ事が無いんです。なるほど、多くの子供達が、読み、感じてもらいたいですね。
聖闘士星矢!ろくに見てはいなかったのに、氷河のファンでしたw
トワイライト・ゾーン!そういえばそれに関する疑問があったのを思い出しました。よし、日記に書こう!
白鳥座 (ドロシネア)
2008-07-18 11:09:57
≫えいみさん
 今でも、キグナス石油の看板を見かけると「あ、氷河・・・」と思い出す私です。そういや彼は、母親思いでしたねぇ

 「100万回生きたねこ」は絵本ですから、読むのに時間はかからないと思います。お子さんとご一緒にえいみさんも読まれてみては?
 もちろん、お身体の調子のよろしいときに。お大事になさってくださいね

 トワイライト・ゾーン、ご覧になっていらっしゃるんですね。嬉しいわ~。うふふ、えいみさんの記事を楽しみにしてますね。
 
はじめまして (ちゃま)
2008-07-18 15:58:18
私のブログにコメントありがとうございました。
絵本はまだまだ知らない物が多いです。
「100万回生きたねこ」もタイトルは知っていましたが内容は初めて知り勉強になりました。
恐縮です (ドロシネア)
2008-07-18 16:28:11
≫ちゃまさん
 ようこそおいでくださいました。コメント、ありがとうございます。

 オタク気質なもので、ハマりだすと深みまでいってしまう自分です。それで時々、マニアック過ぎてワケのわからないことを書いたりしてます

 読み聞かせは、楽しければオ~ライ!が基本だと思っていますので、ちゃまさんも気楽に楽しんでくださいませ
しあわせ (幽冥土)
2008-07-19 01:00:44
なかなか人生は何か考えさせられる話ですね。
結局老人に戻ってしまう話は、僕が神から機会を与えられても同じ選択をしてしまうかもしれません。

永遠の生の中に永遠の幸せを見出せない・・・。
幸せは到達するより追い求めているその時が実は幸せなのかもしれないなと感じました。
愛ある限り (ドロシネア)
2008-07-19 02:06:09
≫幽冥土さん
 そもそも、我々は何のために創造されたのか?って宗教的な考えにまで行き着いてしまいますよね。
 「もう一回、人生をリスタートできるよ」と言われても、私も「もう十分」って思ってしまいそうな気がします。同じシナリオを繰り返すんじゃなくて、別の設定の人生に一から取り組まなきゃならない・・・ってのはしんどいでしょ。

 失ってしまってから、幸せに気づくこともあるかと。病気になって、改めて健康の価値に気付く・・・とかね。

 そういえば、「ドラえもん」のヒットで知られる藤子・F・不二雄先生の作品に「未来の思い出」というのがあって、工藤静香さんと清水美沙子さんのW主演で映画化されています。
 このお話もふたりの主人公がまず死んで、その死んだ時点より10年前からリスタートする、というファンタジーでした。

 やはり「充実した人生とはどんな?」みたいな問いかけを含む内容でしたね。
ほんとなの? (わさび)
2008-07-19 12:28:17
・・・って聞かれたということは、少年がこのお話に興味をもってくれたということですよね。
この年齢だと「生き返ること」が出来るのかどうか、まだまだ疑問なんだろうな。

ワタシ、昔は「もっとお金持ちの家に生まれたかった」なんて平気で親に言ってました。
お父さん、お母さん、ゴメンナサイ

タラレバ (ドロシネア)
2008-07-19 13:12:25
≫わさびさん
 そうですね。お話をちゃんと聞いてくれていたってことですよね。ありがたや。

 「もっとお金持ちの家に生まれたかった」って、私も言ってたような気がする
 きっと、他にも大勢いるんじゃないかしら。

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