K.M. Rodsmiths

自分で作ってしまえ (バンブーロッド、ランディングネットetc.)、ネコ、

竹とんぼ

2014年01月10日 | Weblog

20年以上前、南の島に行ったとき現地の竹で作ったもの。
当時滞在していたリゾートで、コテージの改修をしていた。
コテージといっても、簡単な木の骨組みに竹を編んで作った壁、椰子の葉の屋根というものだ。
工事現場に落ちている端材を拾ってきて、アーミーナイフで削ったものだ。

一般的な竹とんぼの構造を自分なりに進化させた。
羽の部分とシャフトを切り離し式にし、さらに羽の形に工夫した。
羽の断面を飛行機の翼をイメージした形にし、中心部分を薄く、両端を少し厚くした。
そうすることで、両端の重量で羽の回転に勢いが付き、同時に回転による空気抵抗が少ない割りに大きな揚力が得られる。

最初に作った1号機は、予想以上に飛び上がり、どこかに行ってしまった。
画像は2号機、1号機の失敗から、障害物のない浜辺で飛ばすことにした。
浜から海に向かって飛ばすと高く舞い上がり、海から吹く風に押されて戻ってくる。
風が吹かなかったら、泳いで取りに行けばよい。


いい大人が子供じみたことを、と思われるかもしれない。
でも、当時その島は電気は通じているものの、テレビの電波は届かないし他に何もするこ
とがなかった。
また、海に落ちた竹とんぼを泳いで取りに行くという遊びを、子供に戻ったように楽しんだ。
あるとき、浜で飛ばしていると、旅行者らしき二人に話しかけられた。

「なんしよん?」

「竹とんぼば飛ばしよるばい」

「それ、どこで買うたん?」

「買うたんやないで、自分で作ったんよ」

「もう1回飛ばしてみてくれんね」

「ほら」

海に向かって飛ばすと、ビューンと音を立てて高く舞い上がり、海からの風に吹かれて戻ってきた。
お兄さん興味津々。

「やってみてもええ?」

「ええよ」

飛ばし方を一通り説明し、彼に竹とんぼを渡した。

「あれっ?飛ばしきらん!」

この二人、聞けばアジア一帯を数ヶ月かけて旅行しているのだそう。
島に来る前は約1ヶ月間タイをまわっていたそうで、次は日本に行く予定とのこと。
彼らはイスラエル人で、数年間の兵役を終え、ようやく結婚し新婚旅行中だった。
兵役についてはあまり語らなかったが、その表情からはただ事ではなかったことが窺えた。

「あれっ!やっぱりしきらん 」   何度やっても、足元にポトッ。

シャフトを両手の掌で挟んで回転させるという単純な動作ができない。
ヨーロッパ系の人の中には、歩きながらガムを噛むことができないほど不器用な人がいると聞いたことがあるが、まさにそれに近いものがあった。
これでよく兵役を無事に終えることができたものだ。

飛ばすことを諦め、日本での旅行について、物価、電車の運賃などいろんな事を質問してきた。
少しでもコストを抑えることができれば、それだけ長く旅行ができるということだ。
できれば中古車を買って、それに乗って日本中を回りたいとのことだった。

イスラエルの物価がどれほどのものか知らなかったがので、日本の物価は高いので予想以上に旅行費用が嵩むだろうというようなことを話すと、話題が両国の物価の比較になった。
学費、税金、公共交通の運賃などいろんなものが、日本よりもずっと高価なことに驚いた。

「日本人の新婚旅行はせいぜい1週間くらいやそうやけど、そんなんしたら離婚されるばい。」

彼女が隣で笑っている。
彼の言葉が20年以上経った今でも記憶に残っている。
ふと手にした一本の竹とんぼ、そこからはいろんな思い出が蘇ってくる。


南の島 南の島Ⅱ 本当なら8月は雨期なのに 

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