家の花、道端の花、花器

自宅庭や道端の花を「一種類だけ」花器に入れてみたい。私には二種以上を組み合わせ美しく見せる、センスも技術もないので。

フジバカマ(藤袴)

2023-11-02 19:42:26 | 庭の花、道端の花

亡妻がお茶とお花をしていた。小さい庭で花を育てていた。従って「茶花」と呼ばれるものが多かった。「花壇」といえる整然とした場所はなく、裏の傾斜地や木々のあいだに植えられていた。花々も(草も)その環境が好きなようだった。

部屋にいつも花があった。私は妻の入れる花の姿が好きだった。が、自分で生けようとは思わなかった。自分にそのセンスがあると思えなかった。そして妻が先立つと思いもしなかった。自分が花を生ける、必要を感じなかった。
ただ「花器」については、私も焼き物が好きだったので一緒に窯元や陶磁器店をまわった。

緩和ケア病棟から戻ることのできた最後に、別れを告げるように庭の花を見回した。「大事にしてやってね」と彼女は私に言った。そして一つ一つ、その名を教えた。私は花の名をあまり知らなかった。そのときに顔を見せていない花もあった。妻は、ここには何がある、ここには何があると、おどろく記憶力で、見えぬ花の場所を教えた。多くは主のいない間に雑草に埋まっていた。その場合も、雑草を引き抜かないようにと妻は言った。草を引き抜けば、潜んでいるが横にいる花の、根も抜いてしまうことになる。そして、草を抜いてしまうと不思議に、花も元気をなくする、と言った。私は妻が亡くなった後も、そのいいつけに従った。
私は教えられた花の名を、必死にメモした。

妻が生きていれば、私はその家に一生住むはずだった。引っ越しを考えたことはなかった。しかし妻は「田舎のお墓に入れてほしい」と言って死んだ。ならば、私もいずれそこに入る。私の父母、兄たち、そしてご先祖の入っている墓地である。男は私ひとりしか残っていなかった。義姉と姪たちはいたが、私が墓を守るのが筋道である。そんなことで60年ぶりに徳島へ戻った。

一番気を使ったのが、「大事にしてやってね」と妻にたのまれた花と木である。そのため、回収に1年以上を要した。草花は時季によって姿を見せない。草か花か分からない。完全に消えてしまうものが多い。草花に関しては、妻にほほえんで貰える程度の回収・移植を、できたと思う。
派手な園芸種はない。特別な花もない。ありふれた、どこにでもある花ばかりだ。

木は、椿類が多かった。しかしそれらはすべて太くなりすぎ、移植は不可能だった。若いもの3本だけを移した。全滅覚悟だった。1本生きれば大成功と思った。1本は確実に定着した。あとの2本は、上部の葉は枯れ落ちたが、下の方で新しい枝が出ている。再生するのか息絶えるか、毎日注視している。
椿は移植不可能な何本かの枝から、挿し木でとった。7本成功している。まだほんの幼木である。いつ花が見えるのか、分からない。

花を部屋に飾りたいと思っていたが、やり方がわからない。
最近友人から、川瀬敏郎氏の『一日一花』という本を教わった。これは美しい書物である。その中で、「なげいれ」という手法を知った。(手法、という理解で、いいのかどうか)
生意気にも「一筋の光明」を見た。投げ入れりゃいいんだ、と思った。
ただ、川瀬氏の作品には、単品の花もあるが、2,3種を合わせたものが多い。
自分は「単品」しかムリだと思った。複数を組み合わせるセンスも技術もない。

「単品」の「投げ入れ」をやってみよう。・・・それがこのブログのテーマである。
併せて、「花器」に関する思い出も書いてみたい。

早速であるが、「フジバカマ」(2023.10.29撮影)、花器は楽斎窯・五代目高橋楽斎「花器」「舟花器」

フジバカマは、徳島へ来てからずいぶん増えた。繁殖力のある草花である。ただ、自生種は「絶滅危惧種」になっているらしい。山上憶良が詠んだフジバカマといま見ているフジバカマは違うかもしれない。わが家の庭では下半分の葉は散り、花も地味なものなので、正直そんなにキレイと思わなかった。ところが花器に入れるため下部を整理すると、感じは一変した。間近に見る花は可愛く、葉がさらにすてきである。この花が好きになった。

余談だが、アサギマダラがフジバカマの蜜を大好きだそうである。
昨年5月25日、那賀町中山・「道の駅わじき」へアサギマダラを見に行った。“同所の花壇を手入れするボランティア団体「那賀川野菊・鷲敷菊保存会」が昨年、アサギマダラが香りを好むフジバカマを植えたところ、大量に姿を見せた。(徳島新聞)”という。私が行ったのは5月でフジバカマの季節でなく、吸っていたのは「鷲敷菊」だった。鷲敷菊も、この辺りの固有種なのだろう。

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2023年10月16日に、信楽・楽斎窯を訊ねた。そのことについてはまた別途、報告したい。



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