≪第100回全国高校野球選手権大会≫
【準決勝】
第1試合 金足農(秋田) 2-1 日大三(西東京)
金足農 100 010 000 - 2
日大三 000 000 010 - 1
吉田好投、金足農に風を呼ぶ。日大三はあと一歩及ばず
金足農、吉田がやはり今大会屈指の好投手だということが証明されたような試合でした。
この日で炎天下の中5試合目の登板で、疲れの中での投球だったことは明らか。
そんな状況の中、
彼は日大三の「剛球投手」というイメージを逆手に取った、
何とも言えない見事な「かわす投球」を披露しましたね。
その投球にさしもの日大三打線も、
終盤まで彼の投球をとらえることができませんでした。
吉田はこの大会に入ってから、
これまでに蓄積していた「彼の中の引き出し」から、
たくさんのものが「実際に使えるぞ」と実感をもって確信したんだと思います。
今のゾーンに入った状況の中、
彼はまさに「アンストッパブル」の投手にまで昇華しているという感じがしますね。
体が疲れた中で「疲れた体でどう投球するか」ということも自分でコントロールできている感じがしており、
本当に「高校野球100年」の中でも稀有な「心技体のバランスが最高級な好投手」だと思います。
チームとしてはこの日は日大三の分厚い投手陣になかなかホームを踏むことがままならない苦しい戦いでしたが、
吉田投手にとってはこの日はかなり余裕を持った中で、
しっかりとした投球ができたのではないかと思いますね。
実際コメントでも、「理想に近い投球ができた」と語っていますし、
ここに来てのこの投球は驚異的でもあります。
やはり東北の雪深い気候の中子供の頃から暮らしてきた、
体の芯の部分での強さというものがあります。
「素晴らしい」を何度言っても言い足りないぐらいの好投手ですね。
高校野球史に残るピッチャーであることは、間違いありません。
敗れた日大三。
敗れたとは言うものの、
本当にこのチームは素晴らしかった。
決して大型でないこのチームが、
粘って粘ってここまで上がってきたことに、
なんだか感動してしまいました。
これまでの日大三といえば、
小倉監督のキップの良さが表に現れた「お祭り野球」が得意。
強いとき、勢いに乗った時は、
それこそワッショイワッショイでどこまでも上がっていってしまう感じでしたが、
いったん勢いがそがれるともろさを見せてしまうというチームに見えました。
負ける時も潔く、
「宵越しの金は持たね~」
って感じの感覚で、
負けてもファンであるワタシは「仕方ね~よ、また強いチーム創ってもらいましょう」という感じでしたが、
今年のチームはまったく戦い方、勝ち上がり方が違うチームでした。
相手を圧倒できる打力も投手力もなかったものの、
しっかり守って1点を防ぎ、
せめては決してあきらめず最後まで気迫満点でつないでいく。
そして最後は相手よりも1点上回っている。
そんなチームでした。
小倉監督も、
このチームのこの快進撃には、
驚きとともにうれしさをたくさん感じていたのではないでしょうか。
日大三というチームは、
「たくさんの好選手が毎年入学してくる、そして抜群の練習環境で彼らを鍛え上げる」
というアプローチは、
全国の強豪チームと何ら変わるところはありません。
しかし、
小倉監督に鍛えられる彼らが最後の夏を迎えるとき、
何とも言えない好感を持たれるチームに変身します。
だから「三高ファン」は全国の草の根に、
本当に多いと思いますし、実感することもよくあります。
何かが他の強豪チームとは違う、
そんな雰囲気を醸し出すチームです。
特に今年のチームは、
なんだか素晴らしい足跡を残したと思います。
こんなチームカラーを残した日置主将とナインたち。
三高の歴史にとっても、
ずっとリスペクトされる代になったことと思います。
これから新チームでの戦いが始まると思いますが、
新チームはこれまでの三高らしい豪快な野球が展開されそうな好選手がそろっています。
彼らが今年のチームの粘り強さを同時に身に着けるとすると、
非常に楽しみなチームが作られそうですね。
第2試合 大阪桐蔭(北大阪) 5-2 済美(愛媛)
済 美 010 010 000 - 2
大阪桐蔭 000 230 00× - 1
大阪桐蔭、前人未到の2度目の春夏連覇へ万全。柿木の粘投が流れを呼んだ。
第2試合は、”絶対王者”大阪桐蔭の強さがまたも際立った試合でした。
この大会の大阪桐蔭の勝ち方。2回戦、準々決勝のように中軸に一発が出ての大勝という”強さ”もあるのですが、
この日のように接戦になりかけながら試合の流れを絶対に渡さない、1回戦、3回戦、そしてこの準決勝のような戦い方に、
ものすごい「強さ」というものを感じてしまいます。
この日も大阪桐蔭は、「負けるかもという匂い」を全く感じさせないまま、
スイスイと最後まで泳ぎ切ってしまったという感じの試合でした。
おそらく相手からすると、
「完全に圧倒された」というコールド負けチックな感覚は感じないのではと思いますが、
逆に「勝てるという感じは全くない」というのが実感ではないでしょうか。
ワタシの感覚からいうと、
こんな「絶対感」を醸し出していたチームは、
あの立浪などがチームを引っ張った1987年のPL学園が近いのではと思いますね。
あのチームの「絶対感」というのもすごかったですが、
今年の大阪桐蔭もまたすごいチームですね。
春から夏にかけて、この「負けない感覚」に磨きがかかったように思われます。
昨日は先発した柿木が調子は決して良くないながらも粘投で抑えきったところが素晴らしかった。
今日の決勝に根尾を休養十分で送り込める、
大阪桐蔭としては完全に「思い描いた大会の完結プラン」が寸分の狂いもなく実行されているように感じます。
打線は決して根尾や藤原が絶好調というわけではないと思いますが、
打線全体がじわじわと相手に【圧】をかけていって、
どこかで誰かがやってくれる。。。。。。。
そんな感じですね。
そりゃ、強いですよ。
こんなすごいチームが、
高校レベルで作れるんだ!!!
そんなことを思うワタシです。
敗れた済美にとっては、
山口投手の渾身の力投がこの日もありましたが、
力及ばずという感じでした。
しかしながら彼らにとって、
”チーム中興の祖”上甲監督亡き後のニュー済美としての存在感を、
存分に見せた大会になりました。
2回戦の星稜戦での大逆転は、
大会の華でした。
大会前はさほど注目されているチームではありませんでしたが、
なんだか古き良き四国の強豪を思わせる素晴らしいバランスと粘り、
それがこのチームには備わっていましたね。
また「全国制覇」を狙って、
いいチームを作り挑戦してきてほしいと思います。
ということで決勝です。
【決勝】
金足農(秋田) vs 大阪桐蔭(北大阪)
焦点はただ一つ、
吉田投手と大阪桐蔭打線の対決ですね。
疲れもある吉田投手ですが、
投手としてのグレードはさらに一段階上がったとも見え、
いい投球ができるんではないかと思っています。
金足農が勝機を見出すとすれば、
準々決勝の近江戦、準決勝の日大三戦のような、
ロースコアで後半戦に勝負を持ち込ませる戦い方しかありません。
前半で吉田投手が打ち込まれるようであれば、
残念ながら勝機は見いだせないでしょう。
ヒットは打たれながらも粘って相手に得点は与えないという吉田投手の真骨頂があらわれれば、
試合は面白くなってきそうな感じです。
打線はコツコツと、
1点を積み重ねていきたいところですね。
チャンスのどこかで一本出れば、
一気に流れも傾くと思われます。
大阪桐蔭の地元、甲子園での戦いではありますが、
後半勝負になった時、
甲子園は特有の「判官びいき」の雰囲気になるはず。
かつて何度もその雰囲気が、
劇的な試合を演出してきています。
果たしてその勢いに金足農が乗れるのか、
それともいつもと同じように、
大阪桐蔭のナインが何事にも動ぜず、
涼しい顔で勝利を追及していけるのか。
そんな戦いになるのではないかと思っています。
思えば秋田県勢としては、
第1回の秋田中以来の決勝進出。
何と103年ぶりのことです。
ワタシが甲子園を見始めてからも、
秋田がここまで来たことはもちろんありません。
そして東北勢としても、
悲願の真紅の大優勝旗まで、
あと一歩と近づいています。
過去50年の歴史を振り返っても、
あの三沢の太田幸司が、
磐城の”小さな大投手”田村が、
仙台育英の大越が、
力投するもたった1点が遠く、
優勝に届くことはありませんでした。
平成が深まるにつれて東北勢も力を伸ばしてきて、
ダルビッシュ擁した東北や、
菊池雄星擁した花巻東(センバツ)、
そして3季連続で甲子園決勝までやってきた光星学院(現八戸学院光星)、
そして3年前の仙台育英まで、
幾多の好チームが「大優勝旗」に手をかけながら、
最後の最後につかみ取ることができませんでした。
『手が届きそうで届かない』
その大優勝旗まで、
今度は100年の時を経た秋田県勢、
しかも県立の農業高校が挑んでいきます。
100回目の甲子園でのこのシナリオ。
フィクションで書いたら誰かに笑われそうなこの「できすぎたストーリー」。
しかしまさに「事実は小説よりも奇なり」です。
何かすごいことが起こりそうな予感をはらんで、
いよいよ今日午後2時、
プレーボールです。
もう震えが来そうです。
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