神妙に、周りに注意をはらいながら、真剣な面持ちで人はこう言う
「あのね、実はね。屋根裏に誰かいるんですよ…」
最初は怖い本かもしれない、と思いました。
でも読んですぐにわかるけど全然怖くないし、文章が明るいから読んでいてとても楽しいし、出てくる患者さんなどもなんというか…真剣な顔でわけのわからないことを言ってはいるけれど、自分の中で解決してるみたいなところもあり割とポジティブに生きてるところがあって、読んでいて気持ちが沈むというようなことはありませんでした
まず、
表紙とタイトルで、統合失調症(本の中では分裂病と言っています。古い本なので。)の患者お話だと思うと思うのですが、それは少し違います
ここで著者が語る症例は、統合失調症ではなく妄想症の人たちのことです。
なのでいわゆる【切羽詰まった感じ】がなくて、ゆるゆる、ふわふわしていて、
例えば「なんか屋根裏に絶対誰かいるんだけど、まぁしばらくこのままでもいいと思ってるのよ」とか「隣の住人が毎日屋根裏から侵入して、うちにある荷物を数ミリずつずらして行くのよね。なんの意味があるのか知らないけど絶対毎日来るのよ」みたいな、なんだかのんきにさえ聞こえるニュアンスで語ります
(著者いわく、統合失調症の人は思い込んだら秘密警察の関与やスパイや陰謀にまで思い詰めるので、妄想症の人のようにゆるゆるふわふわ過ごしていられないらしいです)
他にも、
【屋根裏に誰かがいるという妄想】について
文学的にはどんな作品がありどんな描写をしているか、とか
歴史的には世界にどんなニュースをどんな報道がされてるか(筆者は「このニュースはガセだと思う」、と分断していますが)、とかを示して、
そして毎回、「いやーしかしながら、文学的にも歴史的にも、みんな屋根裏妄想好きすぎるよね」に着地する
そして読んでいると実際に本当にそう思います
みんな屋根裏妄想好きすぎません?と
それくらい、屋根裏に誰かいる系の小説とかって多いんですね
で、
なんで床下じゃなくて屋根裏妄想のほうがはかどるのかなぁ、
屋根裏に潜んでる側は何十年もそこで何をしているのかなぁ、
そんなことを冷静に考えて仮説を立てたりなんかする著者が面白いんです
かなり前に出版された本のようなので、今よりもデリケートな部分をグイグイ突く文体なので、読み物として面白いのも大きいかもしれない
真面目に読むような本じゃないなぁと思いますが、ずっとひっそり書店や図書館にあってほしい本でもあります