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Grimrose Girls

Grimrose Girls

 スイスのアルプス山中にあるグリムローズ・アカデミー。そこは上流階級の子供たちが通うエリート校だった。新学期が始まる直前、アリアンという女子生徒の遺体が、学園の近くにある湖から発見される。遺書などは発見されなかったものの、警察はアリアンの死を自殺として処理する。彼女の親友だったエラ(エレノア・アッシュワース)、ロリー(オーロリ・デロシアーズ)、ユキ(宮白ゆき)は、アリアンの急死を受け止めることができず、親友の死の真相を探ろうと決意する。
 数日後、ハワイから転入してきたばかりのナニー・エセシュが、アリアンが使っていた机の引き出しの隠し場所から1冊の本とメモを発見する。その本には、バッドエンドで終わる童話が数多く書かれていたのだが、燃やすことも濡らすことも破ることもできないという不思議な本だった。
 一方のメモには、エラをはじめとする数十人の名前が記されていた。メモに書かれた名前を調べた彼女たちは、それがグリムローズに通っていた生徒の名前であり、全員がバッドエンドの童話を思わせる状況で死んでいるという不気味な事実を突き止める。アリアンはこの本の秘密を知ったために、人魚姫と同じような状況で死亡したらしい。
 彼女たちの捜査は遅々として進まず、その間にも日常の日々は淡々と過ぎていく。エラは義母や義姉に虐待されながらも、同級生のフレディーに恋心を抱く。同性愛者のロリーは大病を抱えていることを隠しつつ、ライバルのピッパへの思いに悩む。学園長の義理の娘であるユキは、常に完璧であることを要求される毎日に少しずつ疲弊していく。そして、ナニーは行方不明の父親を捜しつつ、学園で唯一のトランスジェンダーであるスヴェーニャに惹かれていく。
 そんな彼女たちをあざ笑うかのように、第二、第三の怪死事件が発生する。これは童話を使った見立て殺人なのか? それとも、“女性は幸せになることはできない”というグリムローズにかけられた呪いなのだろうか……? 

 ※最近読んだサスペンス小説。スーパーナチュラル要素のあるミステリーというよりは、ダークな青春ドラマと呼んだほうがふさわしいような物語。連続怪死事件がおきるものの、ミステリーの謎解き要素はほとんどなく、ストーリーの大半は親友を喪った少女たちの内面の葛藤に費やされている。親しい誰かが亡くなると、「それ以前」と「それ以後」に二分される。遺された人たちはさまざまな思い(悲しみ、当惑、後悔、怒り)を抱えつつ生きることになる。「誰か」が死んでも、「私」の人生は続く。逆に「私」が死んでも、「世界」は止まることなく動き続ける。けれど、そうした冷淡な世界においても、遺された人たちは虚無や絶望に陥ることなく、生き続ける意味や価値を見出さなければならないのだろう。本書のラストで事件は一応解決するが、残された謎を巡る続編が発売されるようだ。
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