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歯科技工士・岩澤 毅

高崎宏之 新時代の技工マネジメント 歯科技工のリモートワーク・設備シェアリング解禁  アポロニア21 2021年10月号

2021年10月10日 | 基本・参考



http://www.dentalnews.co.jp/apollonia21/new/index.html

http://www.dentalnews.co.jp/images/apollonia/index_pdf/2021/2110_index.pdf

アポロニア21 2021年10月号 日本歯科新聞社

新時代の技工マネジメント

デジタル技術の発展と新たな技術の導入により、歯科技工が大きく変化しています。歯科医院と歯科技工所の両方に経営メリットのある付き合い方を模索します。

高崎宏之
アクウェスト(株) 代表取締役
東京都歯科技工士会 顧問
京都大学特任准教授(理学博士)

歯科技工のリモートワーク・設備シェアリング解禁

 6月18日、規制改革により国の成長発展を図るための「規制改革実施計画」が閣議決定されました。その中で歯科技工に関することとして「デジタル化の進展等に対応するための歯科技工業務の見直し」が盛り込まれました。歯科技工業界として注目すべき大きな変更点は、「歯科技工業界におけるリモートワーク解禁」と「歯科技工設備のシェアリング」の2点です。これらによって今後、歯科技工業の分業化・業務効率化が劇的に改善することが期待されています。
 分業化や業務の効率化は昨今の世界中の製造業のトレンドから見れば当然の流れなのですが、わが国の歯科技工業の場合、歯科技工所以外で行われる業務に対する管理責任の所在を明確化しなければいけないことや設備構造基準の変更などを伴うため、歯科技工士法を変更する必要があり、これまでリモートワークやシェアリングは解禁されていませんでした。
 今月は、このシェアリングというキーワードを踏まえて、製造業において良く使われている、垂直統合型ビジネスや水平分業型ビジネスという観点を絡めて、歯科業界の現状を考えてみたいと思います。

今回の大改革が実現した理由
 今回の規制改革は、埼玉県の大手歯科技工所テクニカルセンター社代表取締役の野島正美氏が、2018年9月に内閣府に規制改革要望を提出したことを発端とし、長年同氏が政府や政治家へのロビー活動などを継続的に行ってきたことが実を結び、歯科技工業界の大きな改革へとつながったといわれています。
 本来、デジタル時代における新たな働き方のルールは、日本歯科技工士会が中心となって大きな将来ビジョンを描き、政府や厚生労働省などと積極的に交渉を行いながら、あるべき方向にリードすべきでした。しかし結果として今回、民間企業の手によって重要に改革が行われちことは、私も公的機関である東京都歯科技工士会に籍を置く一人として、忸怩たる思いです。 

垂直統合型vs水平分業型
 かつて日本の総合電機メーカーは、製品の開発から生産、販売に至るまで、全てのプロセスが一社で完結する「垂直統合型」の大規模な組織を作り、新たな技術と製品を世の中に送り出すことで成功パターンを積み重ねてきました。しかし、世界中の製造業で分業化の動きが起こると、小規模な企業でも主要部品を外部から調達したり、製造を外部に委託したりすることによって、会社の規模以上の製品開発が行えるようになりました。このように製品のコアとなる部分の開発や製造、販売を自社で行い、それ以外の部分を外部委託するビジネスモデルを「水平分業型」と呼びます(図3)。
 どちらのモデルにも一長一短があり、垂直統合型の場合は継続的に多彩なノウハウを蓄積できたり、機密性の高い設計書や製造ノウハウを保護できたりするというメリットがありるのですが、一方で、企業としてのスピードの遅さや冗長性といったマイナス面も目につくことがあります。むしろ今の時代
は、小規模な水平分業型の企業の方が、小回りが利き、変化の速い技術や市場環境にはうまく適合できるケースが多いでしょう。
 では実際、歯科技工業にはどちらのモデルの方が通じるのでしょうか。一般的に、デジタル技術によって業務が効率化される業界は水平分業型の方が高い生産性を享受できるとされており、デジタル化が進みつつある歯科業界においても水平分業型が最適だと思われます(図3左)。近年は、業務プロセスをアウトソーシングすることに抵抗感が少なくなっているという時代背景もあり、さらに水平分業型を選択しやすい環境となっています。
 また、水平分業型の場合、生産性向上だけでなく、より付加価値の高いクリエィティブな仕事に注力するようになるため、重要な部分だけを自社で実行し、他の部分はスペシャルリストに任せられることも魅力です。実際にアップル社は「水平分業型」の代表的な企業として、クリエィティブ系企業として世界トップクラスのポジションを堅持していることからも、水平分業型の方が時代に合っているのだと思われます。
 さて、冒頭で紹介した通り、今回の閣議決定によって歯科技工士のCADデザイン業務がリモートワークで行うことができるようになり、フルジルコニアやCAD/CAM冠を削り出すミリングマシンなどを歯科技工所間でシェアリングすることも可能となります。そうすれば当然、歯科技工業界全体として水平分業化が進み、製造現場がより高度化され、より安定的に高品質な技工物が供給されるようになる方向に向かうことは間違いありません。
 つまり、歯科技工業界もようやく世界標準的な製造業への仲間入りをしたといえるかもしれません。

取引先技工所の変更が容易に
 最後に、興味深い歯科医院と歯科技工所の取り引きに関するデータをご紹介したいと思います。昨年、われわれは歯科医院に、「普段、日常的に何軒の歯科技工所と取引を行っているか」というアンケート調査を行いました。結果は平均4.2軒となり、技工物の種類や自費・保険の種別で、歯科技工所を細かく使い分けているという実態がわかりました。
 また、平均5.8年ごとに取引先の歯科技工所を変えているようです。
 今後ますます歯科医院側のデジタル化が進めば、技工物を委託する歯科技工所と歯科医院の物理的な距離は問題にならなくなります。つまり、今後ますます歯科技工所のスイッチングが容易に行いやすい環境になることを考えると、柔軟に歯科技工所を使い分けられる環境を構築するために、歯科医院でもデジタル化を今以上に進めることが望ましいのではないでしょうか。
 今月の最後の締めとして、歯科医院内のデジタル環境を整えるために、ここ数年、弊社への問い合わせが増えている。経済産業省が所轄する「ものづくり補助金」の注意点や概要などを紹介して終わりたいとと思います(図4)。


https://acwest.co.jp/company/profile/
代表取締役
CEO 高崎 宏之 
外資系コンサルティングファームで、国内外の製薬、飲料、消費財、総合商社、官公庁、化粧品、産業機械メーカーなどの新規事業の立上げ、事業の海外展開支援、M&A、PMI、中期経営戦略策定、営業改革、グローバル人事組織改革などのコンサルティング業務に従事。同社退職後、日本や世界の医療業界に、徹底的に顧客目線に根差した、革新的で高品質な事業/サービスを創出したいとの想いから、acwest Inc.を設立。
京都大学大学院 理学研究科修了 理学博士

京都大学 特任准教授(宇宙物理学)
東京都歯科技工士会 顧問
日本再生医療学会
日本医学ジャーナリスト協会
日本天文学会
ニュースペース国際戦略研究所
日本ビジネスモデル学会

https://acwest.co.jp/news/togi-komonkeiyaku/
熟練の技を持つ歯科技工士のンタビューサイト「技工士ドットコム」を正式リリース
2017.09.20
2017年9月20日 アクウェスト株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:高崎宏之)は、自費のセラミック技工物を作っているセラミストと呼ばれる歯科技工士や、自費のデンチャーやインプラントなどに特化している歯科技工士のインタビュー専門サイト、「技工士ドットコム」をリリース致しました。歯科技工士は年々減っており、歯科技工士養成学校の入学者は、この20年で約4分の1に激減し、今年はついに全国で1000人(923名※1)を下回り、大きな社会問題となっています。

また離職率も、非常に高いとされる介護職の16.6%※2に比べ、歯科技工士は国家資格取得後5年以内の離職率が約80%とも言われ、危機的な状況となっています。弊社は、歯科医療の現場で多くの仕事をさせて頂いていることから、この問題に対して深刻な危機を感じており、「技工士ドットコム」を切り口に、今後、「①歯科技工士養成学校の入学者増加」及び「②歯科技工士の離職率減少」という両面からアプローチし、歯科技工士界が抱えている深刻な課題に対して真正面から取り組んで参ります。
 
【当社概要】
当社は2010年より、医科・歯科領域と再生医療領域を中心にコンサルティング業務を提供してまいりました。医科・歯科領域では現在、国内外の約120の医療法人及び歯科医院をクライアントに持ち、事業拡大を推進しております。また再生医療領域では、国内外の大手製薬及び再生医療関連企業、中小企業、ベンチャー企業、大学の研究室に対し、超アーリーステージな技術シーズの見極めの相談から、大企業及び中小企業の再生医療関連事業部の新規立ち上げ支援、IPOを前提とした再生医療ベンチャーの経営支援、などのコンサルティング業務を提供しております。今後は、歯科領域の中でも多くの課題を抱えている歯科技工士領域に注力し、積極的に資本提携、事業提携を進め、歯科技工士関連事業を推進する計画となっております。

【今後の事業展開】
歯科技工士は一般的に、長時間労働、低賃金、高齢化という三重苦の労働環境だと言われていますが、セラミストが多く在籍している歯科技工所は、標準的な労働時間、高賃金、20代~40代の働き盛りが中心メンバー、の職場となっており、決して世間で言われているような過酷な労働環境ではありません。当サイトは、セラミストの中でもトップクラスのセラミストにインタビューを行い、将来の仕事に悩む若い世代が「歯科技工士の生の声」を知ることによって、歯科技工士の仕事にやりがいや魅力を感じ、進学や就職する若者が増えることを目指しています。今後も当社は、「入学者増加」と「離職者減少」という2つ側面からアプローチし、歯科技工業界の普及拡大の一助となるように努めてまいります。

※1:日本歯科技工所協会(全国52歯科技工士養成学校の2017年4月の入学者数の合算値)
※2:厚生労働省 平成25年度介護労働実態調査

【本件プレスリリースのお問い合わせ先】
アクウェスト株式会社 取締役/マーケティング部統括責任者 猪野 美里
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-6-2 エクラート渋谷ビル2F
TEL: 03-6271-9266(代表)
Email: support@acwest.co.jp

東京都歯科技工士会と業務契約を締結しました。
2019.11.01
2019年11月1日、弊社は東京都歯科技工士会は業務契約を締結致しました。
契約期間は2020年3月末までとし、2020年4月1日以降の契約は自動更新される予定です。東京都歯科技工士会の運営、学術、広報領域でのご支援を予定しております。

日本歯科新聞に対談記事が掲載されました。
2019.11.20
2019年11月19日発行の日本歯科新聞にて弊社代表取締役・高崎宏之の対談記事(「技工界の経済基盤、確立のために」)が掲載されました。歯科技工業界の現状課題と解決の方向性について掲載されていますので、ご興味のある方は、ぜひご一読下さい。


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