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歯科技工士・岩澤 毅

医療機器の保守点検の業務に関する医療法施行規則の改正について

2008年08月10日 | 基本・参考
http://www.mars.dti.ne.jp/~frhikaru/service/hoshutenken.html

医療機器の保守点検の業務に関する
医療法施行規則の改正について

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第1 医療法施行規則改正に至る経緯
 医療の高度化により、医療機器の使用は疾病の診断、治療等に必須の要件になっている。医療機器の適正使用は診断の精度を向上させ、治療の経過観察の上でも大きく寄与している。しかし、医療機器が適正に使用されるためには、これらの医療機器が常に正確に作動することが前提となる。従来より、医療機器の保守点検は、医療関係者にとっては重要な日常業務の一部として認識されており、始業点検をはじめとして必要な保守点検が実施されてきたが、近年の医療機器の高度化とその普及によって、保守点検業務の量と質が変化し、これらの作業を外部の業者に委託するケースも増えてきている。
 一方、平成6年6月には薬事法が改正され、歯科用医療機器を含め医療機器の保守点検に関する事項が新たに薬事法に規定された。これにより、適正な管理が行われなければ、疾病の診断、治療等に著しい影響を与えるおそれがあり、慎重な取り扱いを要する医療機器として厚生大臣が指定したもの(薬事法施行規則別表第1の2に掲げられた医療機器)については、平成7年7月以降、製造業者、輸入販売業者等は保守点検に関する事項を医療機器の添付文書等に記載すべきこととされた。また、同時に、病院若しくは診療所の開設者又は医師、歯科医師等の医療関係者(以下「医療機関」と言う。)は、医療機器の適正な使用を確保するため、製造業者、輸入販売業者等が提供する情報を活用し、保守点検を適正に実施するよう努めなければならないことが定められた。
 これまで、医療機器の保守点検業務については、医療法施行規則により、在宅酸素療法の用に供する酸素供給装置についてのみ基準が設けられていたが、こうした状況の変化を受けて、平成5年以来、医療関連サービス基本問題検討会において、保守点検業務の基準と基準の対象とする医療機器の範囲の再検討が行われ、平成7年10月、医療機器の保守点検業務の委託の在り方に関する報告が取りまとめられた。
 厚生省では、この報告を受けて、医療機器の保守点検業務の外部委託に関する基準の見直しを行い、このほど医療法施行規則の改正を行った。なお、施行規則の改正は3月26日付けで行われているが、施行は10月1日からである。
第2 医療関連サービス基本問題検討会報告の概要
1 保守点検の意義

 医療機器の保守点検は、その性能を維持し、安全性を確保することによって、疾病の診断、治療等が適切に行われることを期待して実施されるものであり、医療の質の向上すなわち患者に対する医療サービスの向上が期待されるものである。さらに、保守点検が適正に行われた場合には、医療機器の寿命すなわち使用年数の延長、故障率の低下等の経済的なメリットも期待されるものである。
 医療機器を常に適正な状態に保ち、疾病の診断、治療等を支障なく行うために保守点検を実施することは、医療機関にとっては当然のことである。今後ともなお一層適正な医療機器の保守点検の実施が求められている。

2 保守点検業務の外部委託

 医療機器の保守点検は本来医療機関の責任において、自ら行うことが原則である。しかし、医療機器の進歩は目覚ましく、その構造も年々複雑化することから、今後は技術的な理由あるいは経済的な理由により、医療機関自ら行うことが難しい場合も考えられる。こうした場合には、医療機器の保守点検業務は医療に密接に関連した業務ではあるが、医療行為そのものではないことから、医療機関の責任の下において、外部の業者に委託して実施することも可能である。ただし、この場合でも、保守点検業務を外部に委託するか否かは、医療機関において、これまで、その業務の重要な一分野として、保守点検業務に従事してきた診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士等の専門知識と技能を有する職員の意見を尊重して、医療機関が自ら決定することである。

3 基準の必要性

 医療機関が保守点検業務を外部に委託する際に、その業務を適正に実施する能力を有しない者に委託した場合には、医療機器の性能を適正に維持することができないばかりか、安全性を損ねるおそれさえもある。さらに、その結果として、疾病の診断、治療等が適切に行われず、医療の質の低下、患者に対する医療サービスの低下を招くことにもなりかねない。そこで、疾病の診断、治療等に著しい影響を与えるおそれがある医療機器については、その適正な使用を確保し、医療の質を維持するため、一定の基準に適合し、保守点検業務を適正に行い、一定レベル以上のサービスを提供できる者に医療機関は委託すべきであることから、医療機器の保守点検業務の外部委託に関する基準を定めるべきであるとの結論を得たところである。

4 基準の対象とする医療機器

 保守点検は、すべての医療機器について実施されるべきものである。また、医療機器の種類にかかわらず、その保守点検業務を外部業者に委託して実施することが可能である。
 しかし、一定の基準に適合し、保守点検業務を適正に行うことができる者に委託すべき医療機器は、薬事法の規定により、保守点検に関する事項の添付文書への記載が製造業者等に義務づけられ、保守点検の適正な実施が医療機関に対して努力義務化された医療機器(薬事法施行規則別表第1の2に掲げられた医療機器)と同一とすべきである。

5 委託を行う際に医療機関が注意すべきこと

 医療機器の保守点検を適正に実施することは、医療機器を管理する医療機関の基本的な責務であり、医療機器を使用する医療関係者の基本的な業務の一つである。しかし、必要に応じて、医療機関の責任において、外部の専門業者に委託して実施することも当然考えられる。
 また、安易な外部委託により、保守点検業務が適正に行われなかった場合には、受託した業者の責任が第一義的に問われるのは当然のことであるが、医療機関の責任も問題とされる。従って、委託先の選定にあたっては、これらの点を考慮の上、単にコストのみに気をとられることなく、先に述べた保守点検のメリットを勘案の上、総合的な観点から検討する必要がある。

6 病院等医療機関以外の場における業務

 保守点検を要する医療機器の中には、病院等医療機関以外の場、例えば、患者の居宅等において使用されるものもあることから、医療機関以外の場において保守点検業務を行う場合に適用される基準を併せて設ける必要がある。
 この場合には、次の業務も保守点検業務の一環として考えられるべきである。
①医療機器の設置
②医療機器の取扱方法についての使用者への説明
③医療機器の故障時等の対応と医療機関への連絡

第3 医療機器の保守点検の業務に関する改正後の医療法施行規則の概要
1 業務の範囲
(1)保守点検

 保守点検とは、清掃、校正、消耗部品の交換等をいうものであり、解体の上点検し、必要に応じて劣化部品の交換等を行うオーバーホールを含まない。

(2)保守点検の実施主体

 医療機器の保守点検は、医療機関が自ら適切に実施すべきものであるが、厚生省令で定める基準に適合する者と認められるものに委託して行うことも差し支えない。

(3)患者の居宅等における業務

 患者の居宅等において、保守点検業務を行う場合には、次の業務も含まれるものである。
①医療機器の取扱方法についての患者、家族等への説明
②医療機器の故障時等の対応と医療機関への連絡

(4)危険または有害な物質を用いて診療を行うための医療機器

 「危険または有害な物質を用いて診療を行うための医療機器」とは、具体的な例を挙げれば、次のとおりである。
①放射性同位元素(コバルト等)を用いる放射性同位元素治療器
②引火性麻酔ガス(エーテル、シクロプロパン)を使用する人工麻酔器
③高圧ガス(酸素ガス)を使用する人工呼吸器または酸素供給装置

2 薬事法との関係
(1)対象とする医療機器の範囲

 新たに対象とされた医療機器は、薬事法により、保守点検に関する事項が添付文書またはその容器もしくは被包に記載されているものである。また、これらの医療機器については、薬事法により、病院の開設者または医師等は、医療機器の適正な使用を確保するため、保守点検を適切に実施するよう努めなければならないとされている。

(2)修理業の業許可を有する者

 薬事法に基づき、医療用具の修理に関する許可を取得した者については、医療機器の保守点検の業務を適正に行う能力のある者として取り扱う。
3 保守点検を行う人員
(1)受託責任者の業務

 受託責任者は、他の従事者に対して保守点検に係る品質管理に関する教育訓練を実施するとともに指導、監督する立場にある者である。また、複数の事業所を有する場合には、事業所毎に受託責任者を配置する。

(2)修理業における責任技術者

 薬事法に定める修理業の責任技術者の資格を有する者は、保守点検の受託責任者としての知識及び経験を有しているものとして取り扱う。

4 標準作業書

 標準作業書は、必要に応じて医療機関に開示することができるよう整備する。なお、保守点検の業務は、原則として標準作業書に則って行われるものである。

5 業務案内書

 業務案内書には、標準作業方法の要点、医療機器の故障時の連絡先、保守点検に関する過去の苦情事例の原因と対処方法等が記載されているものである。
 保守点検業者は業務案内書を整備し、医療機器の保守点検業務に関して、医療機関に対して、契約を締結する前に提示するものとする。

6 研修
(1)研修の内容

 従事者に対する研修は、医療機器の保守点検の業務を適切に行うために必要な知識及び技能の修得又は向上を日的として、次に掲げる事項について行われるべきものである。
① 医療機関の社会的役割と組織
② 医療機器の保守点検に関する保健、医療、福祉及び保険の制度
③ 医療機器の原理及び構造(危険物又は有害物を使用する医療機器については、当該危険物又は有害物の取扱方法を含む。)
④ 高圧ガス取締法(昭和26年法律第204号)、放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(昭和32年法律第167号)等安全管理関係法規
⑤ 保守点検の方法
⑥ 緊急時の対応
 また、患者の居宅等において、当該業務を行う場合の研修には、次に掲げる事項も含む。
① 在宅医療に関する保健、医療、福祉及び保険の制度
② 患者、家族等との対応の方法
③ 在宅療法の意義

(2)医療機器の区分による研修の実施

 従事者に対する研修は、薬事法施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第26条の2の2及び同規則別表第1の4に基づき、「医療用具の一般的名称と分類について(通知)」(平成7年11月1日付薬発第1008号厚生省薬務局長通知)によって示された修理業の許可区分の例にならい、第1区分から第7区分の各区分毎に行うものとする。
 なお、第5区分(光学機器関連)のうち歯科用レーザ治療器については、保守点検に限り、第7区分(歯科用機器関連)に分類して取り扱って差し支えないものとされた。
7 医療機関との契約

 契約書に記載すべき事項については、各医療機関における個別の事情に応じて、最も適切な内容とすることとし、全国あるいは各都道府県毎に一律に契約事項を定める必要はない。なお、従来指導課長通知により定められていた業務の委託及び賃貸借に関するモデル契約書は廃止された。

8 在宅酸素療法の用に供する酸素供給装置の保守点検の業務

 今回の医療法施行規則の改正において、在宅酸素療法の用に供する酸素供給装置の保守点検の業務については、従前と変更がない。

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保守点検の業務委託に関する改正後の医療法施行規則
(下線部は今回の変更点)
第2章 病院、診療所及び助産所の管理
第9条の7

 令第4条の6第5号に規定する厚生省令で定める医療機器は、別表第1に掲げる医療機器とする。

第9条の12

 法第15条の2の規定による別表第1に掲げる医療機器の保守点検の業務を適正に行う能力のある者の基準は、次のとおりとする。
1 受託業務の責任者として、相当の知識を有し、かつ、医療機器の保守点検業務に関し3年以上の経験を有する者を有すること。

2 従事者として、次に掲げる業務を行うために必要な知識及び技能を有する者を有すること。

イ 保守点検
ロ 高圧酸素その他の危険又は有害な物質を用いて診療を行うための医療機器の保守点検業務を受託する場合にあっては、当該危険又は有害な物質の交換及び配送

ハ 医療機関との連絡

ニ 病院、診療所又は助産所の外部で診療の用に供する医療機器の保守点検業務を受託する場合には、患者及び家族との連絡


3 次に掲げる事項を記載した標準作業書を常備し、従事者に周知していること。

イ 保守点検の方法
ロ 点検記録


4 次に掲げる事項を記載した業務案内書を常備していること。

イ 保守点検の方法
ロ 故障時の連絡先及び対応方法

ハ 業務の管理体制


5 従事者に対して、適切な研修を実施していること。

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別表第1(第9条の7、第9条の12関係)
1 手術台及び治療台のうち、放射線治療台
2 麻酔器並びに麻酔器用呼吸嚢及びガス吸収かんのうち、麻酔器
3 呼吸補助器のうち、次に掲げるもの
(1) 人工呼吸器
(2) 酸素治療機器
(3) 酸素供給装置
4 内臓機能代用器のうち、次に掲げるもの
(1) 心臓ペースメーカ
(2) 人工腎臓装置
(3) 人工心肺装置
(4) 血液浄化用装置
(5) 補助循環装置
(6) 人工膵臓
(7) 腹水ろ過濃縮器
(8) 自家輸血システム
5 保育器のうち、次に掲げるもの
(1) 閉鎖循環式保育器
(2) 開放式保育器
(3) 温度制御式運搬用保育器
6 医療用エックス線装置及び医療用エックス線装置用エックス線管のうち、次に掲げるもの
(1) 診断用エックス線装置(主要構成ユニットを含む。)
(2) 歯科用エックス線装置
(3) 医用エックス線CT装置
(4) 診断用エックス線画像処理装置
(5) 治療用粒子加速装置
(6) 放射線治療計画用エックス線装置
(7) 放射線治療計画用エックス線CT
(8) エックス線被爆低減装置
(9) エックス線自動露出制御器
7 医療用エックス線装置用透視台
8 放射性物質診療用器具のうち、次に掲げるもの
(1) 診断用核医学装置
(2) 放射性同位元素治療装置
9 理学診療用器具のうち、次に掲げるもの
(1) 超音波画像診断装置
(2) 除細動器
(3) 心マッサージ器
(4) 機能的電気刺激装置
(5) 脳・脊髄電気刺激装置
(6) 光線治療器
(7) 低周波治療器
(8) 高周波治療器
(9) 超音波治療器
(10) 熱療法用装置
(11) 針電極低周波冶療器
(12) 電位治療器
(13) 骨電気刺激癒合促進装置
(14) 卵管疎通診断装置
(15) へリウムネオンレーザ治療器
(16) 半導体レーザ治療器
(17) 超音波手術器
(18) ハイパーサーミァ装置
(19) 結石破砕装置
(20) 歯科用イオン導入装置
(21) 歯科用両側性筋電気刺激装置
10 血液検査用器具のうち、オキシメータ
11 血圧検査又は脈波検査用器具のうち、脈波計
12 内臓機能検査用器具のうち、次に掲げるもの
(1) 磁気共鳴画像診断装置
(2) 生体磁気計測装置
(3) 心拍出量計
(4) 多用途測定記録装置
(5) 心臓カテーテル検査装置
(6) アンギオ検査装置
(7) 血流計
(8) 内圧計
(9) 心音計
(10) 心拍数計
(11) 脈拍数計
(12) 心電計
(13) 脳波計
(14) 生体現象データ処理装置
(15) 誘発反応測定装置
(16) 眼振計
(17) 網膜電位計
(18) 集中患者監視装置
(19) 一人用患者監視装置
(20) 医用テレメータ
(21) 尿量モニタ
(22) 呼吸流量計
(23) 呼吸抵抗計
(24) 電子スパイロメータ
(25) 基礎代謝測定装置
(26) 呼気ガス分析装置
(27) 呼吸機能検査装置
(28) 鼻腔通気度計
(29) 健康検診システム
13 知覚検査又は運動機能検査用器具のうち、次に掲げるもの
(1) 筋電計
(2) 電気刺激装置
(3) 治療点検索測定器
(4) 歯科用電気診断用機器
14 医療用鏡のうち、次に掲げるもの
(1) 軟性ファイバースコープ
(2) 電子内視鏡
(3) 超音波内視鏡
(4) 内視鏡用医用電気機器
15 電気手術器
16 医療用焼灼器
17 整形用器具器械のうち、次に掲げるもの
(1) 展伸・屈伸回転運動装置
(2) 自動間欠牽引装置
(3) 簡易型牽引装置
(4) 他動運動訓練装置
18 歯科用ユニット
19 歯科用エンジンのうち、次に掲げるもの
(1) 歯科用空気回転駆動装置
(2) 歯科用電気回転駆動装置
20 歯科用ハンドピースのうち、次に掲げるもの
(1) 高速エアタービンハンドピース
(2) ストレート又はギアードアングルハンドピース
21 歯科用切削器のうち、歯石・歯垢除去器
22 歯科用蒸和器及び重合器のうち、次に掲げるもの
(1) 紫外線照射器
(2) 可視光線照射器
23 医薬品注入器のうち、次に掲げるもの
(1) 輸液ポンプ
(2) 自動点滴装置
(3) 造影剤注入装置

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