歯科技工管理学研究

歯科技工管理学研究ブログ
歯科技工士・岩澤 毅

和田康志 歯科技工に関する国の施策等について

2020年02月25日 | 歯学系学会・日本歯科医療管理学会雑誌
日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 8 : 231-236, 2016

歯科技工に関する国の施策等について 和田康志
http://www.hotetsu.com/s/doc/irai2016_3_03.pdf

日補綴会誌 Ann Jpn Prosthodont Soc 8 : 231-236, 2016

依頼論文 ◆企画:第124回学術大会/委員会セミナー  
  「歯科補綴に関連する医療機器,歯科用材料,補綴装置の安全管理について」

歯科技工に関する国の施策等について
和田康志
About Japanese policy on dental technology
Koji Wada


 歯科技工士法(法制定当時:歯科技工法)は昭和 30年に制定されたが,法制定以前から,歯科医師の 依頼に応じて補てつ物の作成等の歯科技工の業務を行 う者は戦前から存在し,この業務の適正を図るための 立法措置の動きは,昭和21年頃から日本歯科医師会, 歯科技工業者などの間で強くなっていた.  しかし,歯科技工業者の中には,印象採得から装着 までの補てつの行為のほとんどを行っていた者もあ り,歯科技工の業務範囲,歯科医師と歯科技工士との 関係等をめぐって様々な考え方があったが,昭和30 年,それらの点を解決した本法が制定された.

 その後,歯科技工士の社会的地位の向上を図り,歯 科技工業務がより適正に行われるようにすることを目 的として,様々な改正が行われ,平成6年には歯科 技工法から歯科技工士法に改める法律改正が行われ た.  なお,歯科技工とは歯科技工士法第2条第1項に おいて,「特定人に対する歯科医療の用に供する補て つ物,充てん物又は矯正装置を作成し,修理し,又は 加工することをいう.ただし,歯科医師(歯科医業を 行うことができる医師を含む.以下同じ.)がその診 療中の患者のために自ら行う行為を除く.」と規定されている.  歯科技工を取り巻く状況については,歯科医療技術 の進展,補てつ物の作成委託に係る形態及び物流シス テムの多様化に伴い,各種通知等で様々な対応が図ら れてきたところであり,こうした状況について概説す る.
 歯科技工物の原材料である歯科材料については,一 般的に汎用性を有するため「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医 薬品医療機器等法」という.)」の対象となっており, 当該材料を製造・販売するためには,医薬品医療機器 等法に基づく許認可が必要とされる.  なお,歯科材料を加工して個々の患者ごとに製作す る補てつ物等については,一般的に汎用性を有しない ため,医薬品医療機器等法の規制対象とならず,国内 で歯科技工業を行うこと等を規定した歯科技工士法の 対象となる.

 また,国外に補てつ物の作成を委託する際は,歯科 技工士法の規制が及ばないため,平成17年に,患者 に対して使用材料の安全性等に関する情報を十分情報 提供することを目的とした通知の発出を契機に,何回 かにわたって通知を発出している(図1–4).
 医薬品医療機器等法上,製品を販売するには,製品 自体の承認と業態の許認可が必要である.  製品自体の承認については,医療機器ではそのリスクに応じて,リスクの高いものから,大臣の承認,民 間の第三者機関による認証,届出が必要になるが,現 在承認の対象としている医療機器の一部を認証制度の 対象とし,承認審査の実務を行っているPMDAの審 査を革新的な医療機器に重点化することとした.  次に,業態の許認可については, ・医療機器の製造業について,現在の許可制・認定制 から登録制に改め,要件を簡素化することとする 他,

・投与したら無くなってしまう医薬品と違って医療機 器には賃貸の制度があり,業として対価を得るもの を現在対象としているが,対価を得ずに貸与を行う 場合についても,許可又は届出の対象とすることと している.  また,医療機器の範囲について,情報通信技術の発 達を踏まえて,欧米では既に医療機器として位置づけ られている単体プログラムを,新たに医療機器の対象 範囲に加えて,製造販売等の対象とすることとした(図5–7).
 医薬品医療機器等法により承認を得た医療機器を保 険診療で使用する場合は一般的に特定診療報酬算定医 療機器または特定保険医療材料として届出を行う必要 がある.  歯科材料を含めた医療機器は一部を除いて,医療機 器の有する機能ごと(以下「機能区分」という.)に 保険収載が行われており,該当する機能区分がない医療機器についてはC申請により,所定の手続きを経て, 新たな機能区分を設定することとなる.  他方で,既に機能区分がある医療機器等については 算定方法の違いにより,医療材料に要する費用が技術 料に包括されるA区分,技術料とは別に材料料が保険 償還されるB区分とに大別され,B区分については 個々の保険医療材料ごとに材料価格基準が設定されて いる.  なお,平成24年度診療報酬改定では,広範囲顎骨支持型装置埋入手術及び補綴物に係る材料,また平成 26年度診療報酬改定では,CAD/CAM冠及び歯科矯 正の植立に係る材料がC申請により新たに保険収載さ れた(図8–10).  歯科は医科に比べて,先進的な医療技術や新たな歯 科材料が保険に収載されるケースは少ないものの,近 年,歯科医療技術や歯科技工技術は目まぐるしく発展 を遂げており,今後は,臨学産が連携を図ることで歯 科分野の新たな医療技術や材料の開発が行われ,結果的に診療報酬改定等を通じて保険収載されていくこと を期待したい.

著者連絡先:和田 康志
〒100-8916 千代田区霞が関1-2-2
Tel: 03-5253-1111
Fax: 03-3595-8687
E-mail: wada-kouji@mhlw.go.jp




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