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歯科技工士・岩澤 毅

岩澤毅 歯科技工士の全国リレーエッセイ① 保険制度と生きる 「7・3」失敗の教訓

2020年09月10日 | 歯科川柳・日本歯科新聞




日本歯科新聞 2020年9月8日

(リード)
 前歯部CAD/CAM冠が9月から保険導入となった。8月19日開催の中医協総会で決まったもので、点数は1歯につき1200点となっている。「患者が満足できる医療を保険で」という流れは歯科にも確実に浸透しつつある。歯科技工製作でのデジタル化の進化はそうした流れを如実に表したもので、これまでの歯科技工士テクニックの真価を見つめ直す時代に突入している。つまり、これからのテーマとして「国民皆保険制度下で生きる歯科技工士のあるべき姿」が求められている。このテーマについて、全国の歯科技工士からの考えをリレー式で連載する。その第1回は秋田県開業の岩澤毅氏。

歯科技工士の全国リレーエッセイ

秋田県 岩澤 毅(みなと義歯工房) ①

保険制度と生きる 

「7・3」失敗の教訓

 9月からの前歯部CAD/CAM冠保険収載は、「日本国として国民の要望を踏まえ、今後も国民皆保険制度下の歯科診療においては、特殊な分野や技術以外は保険に収載する。医療保険は歯冠修復や欠損補綴を含めてカバーしていく」との方向性を示したものと考えられる。

 昭和の終わりのころ、社会保険歯科診療の歯冠修復・欠損補綴における歯科補綴装置部分に関する「おおむね7対3」なる一連の出来事があった。

 診療点数(技工料金)の分配とは別の文脈にある「おおむね7対3」が、あたかも分配の論理であるかのように誤解され、あるいは誤解を誘発するような語り口で伝えられた。

 歯科側が自費を求めても、患者さんの志向や経済状況は、8割程度は保険での治療を希望されるとのことで、自費の世界の広がりはおのずと限界がある。

 繰り返し取り上げられる「歯科技工士の長時間労働と経済的苦境」は、「おおむね7対3」の無効性を示している。

 世界的に見れば、稀である国民皆保険、さらに稀である歯科の歯冠修復・欠損補綴適用の持続性を確保するための、「おおむね7対3」の失敗に学び、新たな制度を考えていかなければならないだろう。

 そこで、次の3点を提案する。
 ①社会保険歯科診療の報酬に、保険医療機関で補てつ装置(物)等を作製した場合と歯科技工所へ作製を委託した場合の点数を別に掲げる。この制度設計は、衛生検査等を参照する。歯科医師の発行する歯科技工に関する指示書類には診療報酬点数を設定する。
 ②社会保険歯科診療おける補てつ装置(物)等を作製する歯科技工所を社会保険歯科診療制度の管理下に置く。支払基金、国保連合会に、社会保険歯科診療おける補てつ装置(物)等を作製作製する歯科技工所の一部の監督権を設ける。
 ③歯科補てつ装置(物)等の点数の設定は、歯科保険医療機関内で補てつ装置(物)等を作製した場合は、歯科医療機関の経営実態調査に基づき原価計算を参照し改定するものとする。歯科技工所が作製を受託した場合の点数の改定は、市場の実勢価格調査を基礎としながら歯科技工所の経営の持続可能性が担保されるものとする。



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