明治、大正、昭和と慌ただしく移り変わる時代にあって新しい美術のあり方を切り拓こうと奮闘した近代美術の歴史をたどる「コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術」が「北海道立近代美術館」で開催中です。北海道銀行創立40周年を記念して設立された道銀文化財団が若手から中堅芸術家を顕彰する「道銀芸術文化奨励賞」の受賞作家25名の作品を一堂に紹介する作家展も同時に開催しています。今回も見応えのある美術展です。
今日は「北海道立近代美術館」です。先般の「コレクション・ストーリーズ エコール・ド・パリ」鑑賞の際に日程を確認した「よみがえる正倉院宝物 ―再現模造にみる天平の技―」と「コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術」が9月15日(水)から開始されたのでその鑑賞にやってきました。今日も地下鉄東西線「西18丁目駅」から徒歩です。なお、「北海道立近代美術美館」は緊急事態宣言発令中も感染防止対策を講じつつ開館していますが、隣の北海道知事公館及び庭園(公開区)は休館・閉園でした。同時訪問は来月までお預けです。
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「西18丁目駅」4番出口から北上した「北1条・宮の沢通り」に面した木々の中に美術館はあります(「エゾリス」も見かけました)。この木々も少し色付いてきました。
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「北海道立近代美術館」への東側の入口。
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館内の「正倉院宝物」展の方には人が集まっています。展覧会が始まって最初の週末なのである程度は予想の通りでした。
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こちらは余裕があります。経験上、2つの展示をじっくり見るとかなり時間を要するので本日は「日本の近代美術」と「道銀芸術文化奨励賞受賞作家展」を鑑賞することとしました(こちらの会場内は写真撮影可です)。
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「【近美コレクション】コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術」のチラシ。
“今年度の近美コレクション展第3回となる本展では、日本の近代美術に焦点を当てます。明治以降に推し進められた近代化の波は、社会全体の仕組みや形を大きく変えました。美術界においても全ての作家が逃れられない変化と向き合った時代です。しかし、その変化を追い風にさまざまな新思潮を取り入れながら、旺盛な創作活動が展開されていきました。
本展では明治、大正、昭和と慌ただしく移り変わる時代にあって、新しい美術のあり方を切り拓こうと奮闘した近代美術の歴史をたどります。”
本展では明治、大正、昭和と慌ただしく移り変わる時代にあって、新しい美術のあり方を切り拓こうと奮闘した近代美術の歴史をたどります。”
【この1点を見てほしい】
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「この1点を見て欲しい」では美術館所蔵の5,600点以上のコレクションの中から1点を選び作品の奥深い魅力を紹介するコーナー。いつもは2階の展示最後にあるのですが本日は入ってすぐのところにありました。
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本間紹夫《室内》 1925年。親交のあった三岸幸太郎《赤い服の少女》のモデルの少女です。
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様々な視点から解説があります。本間家は大層裕福だった様子でした。
【コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術】
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入口から会場を見たところ。
【明治、大正期】
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荻原守衛《鉱夫》1907年(明治40年)。
明治に入り彫刻の世界では従来の象牙彫や木工からロダンによりもたらされた粘土を使った塑像へと変化していったとか。石炭業が主要産業だった時代の先駆的な力作です。
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青山熊治《アイヌ》1910年(明治43年)。
また絵画でも新しい考えや技法が導入され作家の創造性を刺激した作品が生まれていったようです。青山画伯が10年に及ぶフランス留学で身に着けた技法を用いアイヌをテーマに新たな表現で描いた作品。光の表現はレンブラントの影響でしょうか。
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横山大観《秋思》1898年(明治31年)。
日本画でも自然をより現実的、客観的に描くようになっていったとか。作品に西洋画的な風合いを感じるのはそのためのようです。
【昭和期】
昭和期に入ると明治期に導入された多様な美術表現はより個性的で力強いものへと発展していったそうです。確かに下掲の作品はテーマも様々ですが表現がそれぞれ個性的です。
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国吉康雄《横たわる裸婦》1929年(昭和4年)。
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片岡球子《鳩と少女》1934年(昭和9年)。
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岩橋英遠《駅(青梅口)》1937年(昭和12年)。
写真では伝えられないのは残念ですが鉄柱の鋲などが一つ一つ浮き出ているような立体感は迫力です。1階展示中の本日イチオシ作品でした。
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萩須高徳《新薪屋》1954年(昭和29年)。
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福沢一郎《亡者を打つ渡し守カロン》1971年(昭和46年)。
【アートギャラリー北海道 北海道銀行創立70周年 道銀文化財団創立30周年記念 道銀芸術文化奨励賞受賞作家展】
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「道銀芸術文化奨励賞受賞作家展」のチラシ。
“北海道銀行創立40周年を記念して1991年に設立された道銀文化財団は、北海道ゆかりの芸術家への活動支援や道民の芸術鑑賞機会の提供に取り組んできました。なかでも、美術、音楽、舞台芸術、文学、映画各部門において活躍する、若手から中堅芸術家を顕彰する道銀文化財団奨励賞は、2020年度までの30年で26人の美術家が受賞しており、賞の軌跡は、この間の北海道美術の多彩な側面を表しているといえるでしょう。
この展覧会は、北海道銀行の70年、道銀文化財団の30年に及ぶ文化振興活動の成果を展覧するもので、道銀芸術文化奨励賞受賞作家25名の作品を、一堂に紹介します。”
この展覧会は、北海道銀行の70年、道銀文化財団の30年に及ぶ文化振興活動の成果を展覧するもので、道銀芸術文化奨励賞受賞作家25名の作品を、一堂に紹介します。”
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こんな雰囲気です。
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北口さつき(第1回受賞者)《伝説の風景》 2021年(令和3年)。
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米原眞司(第2回受賞者)《静かな赤》2001年(平成13年)。
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香西信之(第9回受賞者)《自然灰窯変大壺》2014年(平成26年)。
NHK朝の連続テレビ小説でもやっていましたが伝統的な「穴窯」で6日間にわたって大型トラック1杯分のカラ松を炊き続けて生まれた作品だそうです。自然灰の力に驚嘆します。
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伽井丹彌(第11回受賞者)《 Tanz 》2021年(令和3年)。
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野又圭司(第16回受賞者)《我々はどこへいくのか?》2015~2021年(平成27年~令和3年)。
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上掲作品の近影。砂で作ったという廃墟の街です。2階展示で本日最も興味深く拝見させていただきました。
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福井路可(第17回受賞者)《風の音、明日の雨ー19.4ー》2019年(令和元年)。
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蒼野甘夏(第23回受賞者)《伊邪那美月読図》2017年(平成29年)。
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クスミエリカ(第30回受賞者)《船出の祝祭》2021年 (令和3年)。
こちらも大変綺麗で魅惑的な作品で展覧会を締めくくるに相応しい力作でした。以上で鑑賞は終了です。
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2階ロビーには安田侃氏の作品が展示されています。
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西側門脇には「イヌリンゴ」の実がたくさん成っていました。
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「イヌリンゴ」。こちらの西門からランチへ向かいました。
本日も充実の美術鑑賞でした。意図してか偶然か判りませんが1階展示の明治・大正・昭和期の作品から、2階展示の平成・令和の現在に至るまでの作品が一連の流れのように連続して鑑賞できて良かったです。もう少しいつものような判りやすい説明書きがあったら良かった気がしますが(特に“新しい美術のあり方を切り拓こうと奮闘した”の内容)、明治期からの西洋文化の荒波に翻弄されつつも発展した日本美術が、平成・令和の時代まで一層多彩な表現と才能を絵て進化を続けていることを感じました。大変結構でした。隣の「正倉院宝物」展も見逃さずに参りたいと思います。ありがとうございました。
「コレクション・ストーリーズ 日本近代の美術」
会期 2021.09.15(水) - 2021.11.07(日)
観覧料 一般 510(420)円、高大生 250(170)円
*近美コレクションと三岸好太郎美術館(特別展を除く)を両方観覧する場合
一般 830(670)円、高大生 410(270)円
※( )内は、10名以上の団体料金
「北海道立近代美術館」
札幌市中央区北1条西17丁目
[電話番号] 011-644-6881
[開館時間] 9:30 - 17:00(入場は16:30まで)
[休館日] 月曜日(月曜日が祝日または振替休日のときは開館、翌火曜日は休館)/年末年始(12月29日~1月3日)/
(2021.9.19訪問)