gooブログ、リニューアル!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

「これはヤバい」沢登り中にハチに刺されて40分間も意識不明

2023-05-06 06:52:18 | ニュース

https://www.msn.com/                         文春オンライン
「これはヤバい」沢登り中にハチに刺されて40分間も意識不明…38歳の男性登山者が体験した“ハチ毒”の恐怖

羽根田 治 によるストーリー • 41 分前

61歳のベテラン登山者が槍ヶ岳で落雷事故に…「直撃被害者の死亡率は80%」それでも男性が奇跡的に助かった“意外な理由” から続く

 壮大な山の自然を感じられる登山やキャンプがブームになって久しい。しかし山では、「まさかこんなことが起こるなんて!」といった予想だにしないアクシデントが起こることもあるのだ。

 ここでは、そんな“山のリスク”の実例や対処法を綴った羽根田治氏の著書『 山はおそろしい 必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難 』(幻冬舎新書)から一部を抜粋。38歳男性登山者を襲ったハチ毒の恐怖を紹介する。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)

◆ ◆ ◆

沢登り中、頰にチクリで意識喪失

 石沢学(仮名・38歳)が、山仲間と2人で仙台近郊の沢登りに出掛けたのは2012(平成24)年8月18日のことだった。目指すは山形県山形市の東部、宮城県との県境に近い面白山(おもしろやま)高原の紅葉川。前回は紅葉川支流の権現沢を遡行したので、今回は紅葉川本谷(本谷=本流の流れる谷のこと)を詰めて(遡って)いって奥新川(おくにっかわ)峠に出て、一般ルートを下りてくる計画だった。

 石沢が登山を始めたのは高校に入学してからで、山岳部に所属し、高校3年のときにはインターハイ登山大会に出場して優勝した経験を持つ。登山の実績をアピールしての一芸一能入試で入った亜細亜大学でも8年間をやはり山岳部で過ごし、同級生だったのちの登山家、野口健とはアコンカグア(南米最高峰)やビンソンマシフ(南極大陸最高峰)への海外遠征をいっしょに行なった。

 働きはじめてからも社会人山岳会に籍を置き、縦走、雪山、沢登り、バックカントリー(スキー場のゲレンデではない、山岳地を滑降することをこう呼ぶ)など、オールラウンドに活動してきた。仕事柄、転勤が多いため、その都度、周辺の山々で細く長く登山を楽しんでいる。単独行とパーティ登山の割合は半々ぐらいだが、とくに雪山をひとりで縦走するのが好きだという。沢登りも好きなジャンルのひとつで、都内に勤務していたときは奥多摩や丹沢、北関東などの沢に通っていた。

 この日、2人は起点となる面白山高原駅を午前7時17分に出発。奥新川峠へ至る一般登山道を20分ほどたどり、権現沢の出合(であい)で入渓準備をすませ、紅葉川の本谷へと下降した。

 7時56分、紅葉川本谷に下りると、小さな釜(滝壺のこと)があるきれいな渓相が目に飛び込んできた。下流側には堰堤(えんてい。石やコンクリートの堤防)の滝と釜があり、上流側はV字状の谷となっていた。ここから遡行を開始する。


血圧が低下…「これはヤバい」

 すぐに釜のある小滝が連続し、これを過ぎると行く手に堰堤が現れた。この堰堤を右側(左岸)から巻いて(迂回して)いるときだった(谷や沢では、上流から下流を見て右側の岸を右岸、左側を左岸という)。右頰をなにかにチクリと刺された感覚があり、その直後から手の指が痺れ出した。痺れは腕や足にも広がっていき、貧血のときのように血圧が低下していくのがわかった。「これはヤバい」と思い、なんとか堰堤の上まで這い上がり、沢の脇にザックを下ろし、ヘルメットを脱いで座り込んだところで意識が途切れた。

 石沢の異変に気づいた仲間は、すぐに駆け寄って介抱したが反応はない。現場からどうエスケープすればいいのか、いったんその場を離れてあたりを観察してみると、左岸の尾根状に登山道が通っているのが確認できた。しかし、石沢は依然として問い掛けに反応せず、意識を失ったままだった。この状況ではひとりで石沢を搬送するのはとうてい無理であり、救助要請が必要だと判断した。

 ただし、そこは携帯電話の圏外だったので、面白山高原駅方面へと移動しながら電波が拾える場所を探した。駅の近くまで来たところでようやく電波が通じ、8時55分、119番に通報して救助を要請した。先方からは、「救急車と消防団を手配するので、面白山高原駅で待機し、救助隊が到着したら現場まで誘導してください」との指示を受けた。15分ほどして消防本部から折り返し電話があり、防災ヘリおよび消防団、救急車の出動を手配中であることを知らされた。


手足には痺れ、目の焦点もよく合っていなかった

 一方、気を失っていた石沢は、40分ほどが経過した8時50分ごろ意識が回復した。手足にはまだ痺れが残っていて、目の焦点もよく合っていなかった。そばに仲間の姿が見当たらなかったことから、9時12分に彼の携帯電話にかけてみると、すぐに通じた(仲間とは別の携帯キャリアと契約していて、こちらは電波が通じた)。仲間との通話で、彼が救助要請のために現場を離れていたことを知り、石沢も自分の状況を報告した。

 電話を切ったあと、仲間は再度119番に連絡を入れ、石沢が意識を回復したことを知らせ、併せて本人の携帯電話の番号を伝えた。9時23分には消防本部から石沢の携帯電話に直接連絡があったので、とりあえず現状を説明した。

 9時38分、消防本部から再びかかってきた電話に、石沢は「しばらく休んでから自力で下山します」と伝えたが、「すでにヘリは飛び立っている」とのことだった。ヘリはもう現場近くまで来ていたようで、続けてGPSの位置情報を伝えると、すぐに上空に防災ヘリが姿を現した。その後、ヘリから降下してきた隊員によって機内に収容され、山形市内のあかねケ丘陸上競技場へと運ばれたのち、救急車で病院へと搬送されていった。


事故体験者が語る教訓

 病院では応急処置と点滴を受け、診察を終えた。診察では、自覚症状のあった右頰だけでなく、右耳下と首のうしろに虫刺されの跡があるのが確認されたが、原因の特定はできなかった。だが、後日ハチ毒の抗体検査を受けた結果、陽性だったことが判明したので、ハチ毒によるアナフィラキシーショックだった可能性が高い。

 この事故の教訓として、石沢は次の点を挙げている。

・沢登りであり、転滑落やルートミスによる事故には充分な注意を払っていたが、虫除け対策や有毒植物などに関する注意を怠っていた。入渓の際にはこれらのリスクマネジメントも必要となる。

・緊急時の対応や搬送を考えると、3人以上のパーティ編成が望ましい。

・通信手段として携帯電話が威力を発揮した。ただし、事故現場では電波が通じないキャリアもあった。パーティを分断しての事故対応を想定すると、無線機についても複数台の携行が望ましい。

・GPSにより現在地を正確に伝達できたことが、円滑な救出活動に繫がった。とくに沢では、位置情報把握手段として有効であることが確認された。


「初回はアナフィラキシーにならない」は誤解

 日本には4000種以上のハチが生息しているといわれ、人を刺すハチとしてはスズメバチ類、アシナガバチ類、ミツバチ類、マルハナバチ類、ベッコウバチ類などが知られている。いずれにしても刺すのは雌だけで、これは毒針が卵を産むための産卵管が進化したものであることによる。

 ハチの種類によって程度は違ってくるが、通常、ハチに刺されると激しい痛みがあり、刺された箇所は熱を持って赤く腫れ上がる。しかし、ハチ毒に対してアレルギーを持っている人は、それだけではすまない。刺傷後数分~十数分の短時間で、発汗、発熱、蕁麻疹、頭痛、腹痛、嘔吐、下痢、全身浮腫(むくみ)、チアノーゼ(唇や指先などの皮膚・粘膜が暗紫色に変化した状態)などの症状が現れることがある。

 これがアナフィラキシー(特異過敏症)で、血圧の低下や意識障害を伴う場合をアナフィラキシーショックと呼ぶ。アナフィラキシーは2度目以降の刺傷のときに発症しやすいが、初めて刺された人が発症することもある。

 先のケースでは、当事者はアナフィラキシーショックを引き起こして意識を失ったものの、幸い大事には至らずにすんだ。しかし、最悪の場合、呼吸困難や気道狭窄などを発症させて命を落としてしまうこともある。

登山中の80歳男性にスズメバチの大群が…「顔や腕を数十箇所刺された」“国内最凶生物”に襲われたベテランクライマーの悲劇 へ続く

(羽根田 治/Webオリジナル(外部転載))






最新の画像もっと見る

コメントを投稿