透明人間たちのひとりごと

ダ・ヴィンチの罠 墜天使

 symbol2kirakirakirakira2 国連「国際ひかり年」 symbol3kirakira2

 西暦2015年を国連がそう宣言したそうですが …

 つまり、今年は「国際光年」なのです。
 
 天文学での距離の単位“光年”と紛らわしいので、
日本では「ひかり年」と読み書きするらしいのですが、
この一年間は「ひかり」について、いろいろと学んだり、
考えたりしましょう、というわけですね

 そこで早速ですが、

 かつて「光を運ぶ者」、あるいは「暁の子」
「暁の星」と呼ばれ、「光の運び手」とされた
眩いばかりの光に包まれた美しい天使がいました。


 ラテン語で「光を運ぶ」 rightlux 光+fero 運ぶ)
を意味するLucifer(ルシファー)と呼ばれる全天使の長
で、「熾天使(上級第一位の天使)リーダー
して押しも押されぬトップエリートの中のトップエリートとして
辣腕を揮っていましたpeace

 その強大な力と美しさは、「神」の寵愛を一身に受ける
こととなり、己の力と美貌に酔いしれたルシファーは過信と
増長の末に天界に反旗を翻し、天界の3分の1にもおよぶ
「反乱軍」を率いて「神」に戦いを挑んだのです

 幾多の戦闘での攻防に継ぐ消耗戦に双方で多くの天使
たちが滅せられるという大激戦の果てに、大天使ミカエル
の率いる天界側が辛くも勝利を収めます。

 敗れたルシファー軍は、ことごとく天界を逐われて
墜天使になるというお話ですねnose4

 フランスはパリの

 サン・ミッシェル(聖ミカエル)広場(大通り)に
佇(たたず)む噴水のある建物の前では大天使ミカエルが
ルシファーを倒す一連のストーリーのクライマックスらしき
様子が展開されています。




       
    

 『聖書』(ヨハネの黙示録12:7-9)の記述によれば、

      

 「神」と対立し、天界を追放されたルシファーは魔界に
墜ちて魔王(サタン)となるというシナリオですが …

 この辺りの経緯(いきさつ)をミルトンは『失楽園』
こう語っています。

 「だから、わたしはお前に話しておきたい ――― 思えば、
 あれは天からルーシファが(そうだ、それが、星の中の星
 ともいうべきあの暁の明星以上に、かつては天使の群れ
 の中でも最も輝ける天使であった彼の名だ) 焔(ほのお)
 をあげて燃える仲間と共に、混沌の世界を真っ逆さまに
 己の行く場所へと転落し、御子が味方の天使たちを率い
 て凱旋されたときのことであった」 (exclamation 御子=イエス)

   (1667年ミルトン『失楽園』第7巻 岩波文庫)


  (ギュスターヴ・ドレによるミルトン『失楽園』の挿絵)

 天界から墜ちて地球にへ向かう姿を描いているのだそう
ですが …

 この後、ルシファーは「神」に復讐するために、
化け、楽園に暮らすエヴァを誘惑し、人間(アダムとエヴァ)
は楽園を追放されるというわけです。

 ルシファーが登場する名高い文学作品としては、ダンテ
『神曲』とミルトンの『失楽園』が双璧ですが、

 特に後者は「神」に叛逆するサタン(ルシファー)
を中心に据えて英雄的に歌い上げたために、その後の
ルシファーにまつわる逸話に多く寄与することになる


 … と、『ウィキペディア(Wikipedia)』には
記されていますが、実は、

 すでに、それ以前にルシファー(サタン)
大天使ミカエル御子(イエス)「神」
との極秘の関係性に独自のインスピレーション
を働かせていた男がいたのですpeace

 もちろん、いわずもがなのその人物こそが、誰あろう

 レオナルド・ダ・ヴィンチだったのです

 なんて、
 
 ちょっとだけ、ナレーションを盛ってしまいましたが ase2

 キリスト教世界ではそうしたルシファー論をベースにして
数々の教派がルシファーの墜天について論じています。

 比較的に知られるものとしては、前述した

 1 最高の権威と権力を与えられたルシファーは自惚れ、
  自分こそが「神」を超えられると思い込み、同調する
  味方の天使たちを集めて叛旗を翻した。

 いわゆる、「クーデター説」です。

 次いで、

 2 全天使の長であるルシファーは、土から造られた人間
  (アダムとエヴァ)に跪拝せよとの命に背いて「神」
  と対立し、天を追われて「神」 の敵対者となった。

 言わば、「ロストプライド説」ですねnose7

 同類のものには

 3 「神」は人間を寵愛し、天使以上の優遇を与えようと
  したために、これに不満を抱いたルシファーが同志たち
  集めて叛乱を起こした。

 要するに、「待遇不満説」です

 他にも、
 
 4 ルシファーはミカエルの双子の兄である
 5 ルシファーはエヴァと不倫をしていた
 6 アダムの最初の妻であるリリスが、アダムの許を
  離れルシファーと結婚した


 … 等々、

    



 極めつけは、

 7 「神」がルシファーの弟として御子(後に人間の原罪
  を贖(あがな)うために受肉して地上に降り立つキリスト)
  を生み出し、御子に最高の栄誉を与えたのでルシファー
  が嫉妬に狂い反逆した。

 これは人間社会でいえば、

 骨肉の争いのような「嫉妬説」ですが …

 しかし、『ヨハネの福音書 』(第一章)には、

 初めに言葉=ロゴス=イエスがあったと書かれています。

 「初めに言葉があった。言葉共にあった。

 言葉は神であった。 この言葉は初めに神と共にあった。
 すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、
 ひとつとしてこれによらぬものはなかった」

 つまり、

 イエスは神であり、イエス自身を創造した「神」以外の
すべてのものはイエスがつくったと言っているのですから、
ルシファーも他の天使たちもイエスによってつくられたこと
になります。

 これでは 7 とは、整合性が保てませんね

 いずれにしても、ルシファー悪魔 たる所以は、
旧約聖書『イザヤ書 』14章12節にあらわれる
「輝く者が天より墜ちた」 という比喩的表現に
端を発するわけで、ヘブライ語の「明けの明星」
意味する言葉にluciferの語を当てて訳した4世紀末の
聖ヒエロニムスに行き着きますが …


   『聖ヒエロニムス』 1480-82年 バチカン美術館蔵

     「黎明の子、明けの明星よ、
     あなたは天国から落ちてしまった
     もろもろの国を倒した者よ、
      あなたは切られて地に倒れてしまった
 
          (『イザヤ書 』14:12)

     


 これらの根本には誤訳や恣意的な意訳に起因する
誤謬があるようです。


    マリオ・ラピサルディの詩集 『ルチーフェロ』
  
 金星を指すラテン語であったルーキフェルを明けの明星
としての輝きを喪失し、奈落へと墜ちて悲嘆にくれることに
なる、かつての光の大天使を堕天使の長の名として掲げ、
サタン別称として普及・定着させた根源には4世紀
から5世紀にかけてのラテン系の教父たちの訳語に原因が
あったわけで、キリスト教会では悪魔は罪によって堕落した
天使であるとされ、中世神学者たちも、サタンはかつて
最高位の天使である 熾天使智天使 のひとりで
あったと考えていたようです。

 おそらく 『ルカの福音書 』10:18にみられる
サタンが稲妻のように天から落ちるのを見た」 という
イエスの言葉と前述した 『イザヤ書 』の1節とを
結びつけて、そのように理解したのだと思われますが nose7


 実際には

 「黎明の子、明けの明星よ」とは天使のこと
ではなく、その前の「バビロンの王に向かって罵る言葉を
言わなければならない
」とある『イザヤ書 』 14:4
を受けてのもので、「黎明の子、明けの明星」
とはバビロンの王を指し、「もろもろの国を倒し」
とはバビロニア隆盛を意味しているのです。

 『イザヤ書 』 14:17 では 「その諸都市を覆し、
その囚われの人たちに故国への道を開かなかった
」と
「バビロンの捕囚」を嘆き謳い、そのバビロニア
がペルシャによって滅亡させられた歴史的な事実を指して
「天から落ちてしまった」としているわけです。

 余談ですが

 456 などの異端説では、人間はアダムとエヴァの
子孫ではなく、ルシファーとエヴァの末裔であるとする解釈
や、中世の異端的セクトであるカタリ派には、ルシファーと
キリストとしてのイエスは双子であるとする者もいたのです。

 そして、

 ダ・ヴィンチが描く宗教画のなかに隠された暗号や数々
には、そうした異端的な嗜好と軌を一にする
動機が見え隠れしているのです。

 ダ・ヴィンチに“アンチ・クライスト”的な志向が
あることは、どう控え目に見ても否めませんからねぇ

 たとえば

 「陰府に落とされ、坑(あな)の最果てに下ろされる」 と
される『イザヤ書 』14:15の聖句にある地獄の底
であっても、なお、を放つかのような後光と松明の
持つルチーフェロ(ルシファー)は、すなわち、人類に
火を与えたプロメテウスイコールです。


   
  『火を与えるプロメテウス』 ハインリッヒ・フューガー 作

 だとしたら、

 人類の進歩や知的好奇心や探究心はルシファー
の恩恵であり、プロメテウスのように智慧(光と火)
を与えてくれた者として、人間にとっての“真の父”
あると考えていたとしても何の不思議もありません。

 ダ・ヴィンチには、

 どこか胡散臭い「神」狭量というものが
見えてしまったのかもしれませんね

 付き随(したが)う獅子を目の前にして苦悶に歪む表情
の聖ヒエロニスムを未完のままに残したこともルシファー
冤罪無関係ではないでしょう



 次回は、ルシファーの妻とされるリリスに登場してもらう
予定でいます

     
           『LILITH』 ジョン・コリア 作

 … to be continue !!

      

      「バレてはいまいな」nose6

コメント一覧

小吉
ルシファーの話は面白かったけど後半あたまこんがらがった。
江戸川ケイシ
たとえば、将来を展望して、ある想定をしたと仮定します。

そのシナリオ(想定)のもとに、一定程度の展開を予測したうえで「D」に連なる工作が、まさか「バレてはいまいな」とペテロに語らせていたとしたなら、凄すぎるというほかはありません。

常識的には、ヨハネの正体が「バレてはいないだろうな」と念を押す場面と読めるわけで、仮定が事実に近いとすれば、まさに、ダブル・ミーニングになる仕掛けというわけです。

さらに言えば、「D」の頭文字がローマ字と同義の言い換えとで両立するとすれば、これもまた、ダブル・ミーニングということになりますね。
おじゃま虫
今まで「D」が頭文字になるタイトルの最初は『裏切者』だと言われてましたが、『堕天使』も「D」で表現できないわけではありません。

もちろん、ローマ字で書けば「Datenshi」ですが、

たとえば、Dark Angel や Dirty Pretty Things の他にも、Demon や Devil だって、堕天使と言えないわけじゃないですよね!

そうだとすると、「バレてはいまいな」と言う最後のペテロの言葉が妙に引っ掛かって聞こえてきますが、どうなんでしょうか?

ちなみに、2015/3/20 のコメントは私ではないので念のために書き添えておきます。
カインの末裔
ルシファーを貶めた後悔と懺悔のヒエロニムスとは、言い得て妙なり。

盗作(無断使用)されているなら、注意ぐらいはしておいた方がいいのではないでしょうか!
透明人間2号
ご連絡をいただき、痛み入ります。
今のところ、特段の実害はありませんので、何も考えていませんが、目に余るような事態にでもなれば検討するかもしれません。
密告マン
密告、第二弾です。

こちらの記事も、以下の動画で無断使用されています。

『堕天使』Lucifer ルシファーの冤罪と『荒野のヒエロニムス』(YouTube)

これはもう、ほぼ完全なるコピペですが、動画の作成者に対して注意勧告しないのですか?
透明人間2号
ごめんなさい。

「NARUTO」を知りません(汗)
小吉
話が長くてわからなかったので直感的にいうと「NARUTO」みたいな感じですね。
江戸川ケイシ
リリスを現代風に表現すれば、ウーマンリブの走りみたいなものですが、個人的には、昼間は従順で貞淑なエバであって、夜は魅惑的なリリスであって欲しいと願わずにはいられない、きょうこの頃のケイシです。
おじゃま虫
リリス、いい女やんけ!
むらさき納言
サタンと化したルシファーの放つ光の魔力は、闇の世界からの強力
な一筋の光明だけに、人間にはこよなく魅力的なのですね。
むらさき納言
ダ・ヴィンチが、何故に聖人とされるヒエロニムスをこんなにも
苦痛にゆがむ顔で、何かを懇願し、何かに訴えかける苦悶の
表情に描いたのか、ずっとずっと疑問でした。
人間の内面描写を500年も先駆けて始めた天才・画聖としての
ダ・ヴィンチの凄さに感服していたのですが、やっと、その謎が
解けました。
ルシファーを貶めた後悔と懺悔を表現していたのですね。
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