透明人間たちのひとりごと

アリとセミの物語 <6>

 夏に鳴く昆虫の代表格は何と言ってもセミの仲間ですね。

 キリギリスも夏に鳴く虫のひとつですが、セミの仲間では
なくバッタの仲間です。

 バッタ目キリギリス科の虫が夏に鳴くキリギリスたちです。

 1号 さんの思いつきによる気まぐれから、イソップ物語の
『アリとキリギリス』 right 『アリとセミ』 の物語の
をリレー方式で解き明かす趣向になってからの第6弾目
(ボクとしては2回目)のバトンタッチを受けました。

 でも、前回の … 『アリとセミの物語 <5>』 で、
2号 さんが キリギリス について興味深い解説をして
くれましたが、セミ についての考察を唐突に振られて正直
困惑しているのです 。

 とりあえず頑張ってみますが、期待 に添えるかどうかは
保証の限りではありません。

 原典というかイソップが語った話のなかでは、アリ たちの
共演者は セミ であって、ボク たち日本人が知っている
アリとキリギリス というタイトルではありません。

 なんでも、オリジナルは 『蝉と蟻たち』 だったそうですよ。

 1593年(文禄2年)に 『イソポのハブラス』 として
イエズス会の宣教師がラテン語から翻訳したローマ字版の
イソップ寓話集(宣教師用)が日本では最初のものとされて
いて、その後、江戸時代の初期に 『伊曽保物語』
して普及していくわけですが、当時はまだ 『蝉と蟻との事
という題名で キリギリス ではありませんでした。

 この物語が日本において、『アリとキリギリス』
タイトルコールされるようになったのは、おそらくは幕末から
明治にかけての頃からではないでしょうか

 古代ギリシャの時代からアルプス以北へと伝えられていく
過程で、ヨーロッパ北部には生息していない セミ に馴染み
がなかったために翻訳の都合上、便宜的に夏に鳴く虫として
キリギリス に白羽の矢が立ったわけで、それが、明治
以降になって英語での翻訳が進むうちに キリギリス
して広く親しまれ定着するようになったのです。

 セミ の仲間は、熱帯や亜熱帯地域に生息していますが
ギリシャなどの地中海沿岸にも生息していて、古代ギリシャ
ではオーソドックスな昆虫だったのか、イソップ寓話集には
セミとキツネ』、『ロバとセミ』、『セミとフクロウ』 といった
話にも主役・共演者として、その存在感を示しています。

 1号 さんは 『イソップ物語』 を 【予言の書】 だと
して ボク たちに謎解きを強要します。

 当然、不満や抵抗があったけど大人になってから、改めて
読み返してみると話が単純な故に実に趣があって深い意味
と示唆が感じられるようになったのです。

 【予言の書】 であろうはずはないけど、予言の書たる
片鱗が垣間見えないこともないくらいに意味深長で奥の深い
内容に驚かされることもあります。

 たとえば、

 アリ の相手役が キリギリス に代わったことが、
この物語の結末をハッピーエンドに改変してしまったのか、
それとも、日本的な倫理観がそうさせたのか、はたまた、
それさえもイソップの 深謀遠慮 あるいは、想定内の
カムフラージュ であって、真意を曖昧にすることで
未来を意図的に示唆する結末をわざわざ用意したのか

 原作での
 
 「夏に歌っていたなら、冬には踊ったらどうなんだ」 という
アリ の言葉の真意に俄然、興味が湧いてきます。
 
 1 アリの勤勉さは常に肯定されるべきものなのか
 2 夏に歌い冬に踊る生き方は否定されるものなのか
 3 セミ(キリギリス)が冬を生きることは不可能なのか

 イソップに尋ねてみたい、上記の3つの疑問のうち …

 『アリとセミの物語 <5>』 のなかで紹介された

 「キリギリスは肉食で越冬する仲間も多数いる」 という
2号 さんの記事は 「冬に踊る」 という生き方が自然界で
は認められている事実であって、イソップの思惑はともかく
自然は 2肯定 し、3可能 だとしたわけです。

exclamation http://sun.ap.teacup.com/japan-aid/214.html(参照)

 但し、それは、セミ ではなくキリギリス の場合に
限ってのことですが …。

 「親切なアリがキリギリスに食べ物を分けてあげる」 という
結末が日本では、一般的ですが、イソップの原作では先の
ように相手役は セミ であって 「冬には踊って暮らせ」 と
突き放すわけで、その後のことには触れていません。

 飢えて死んだのか、饑(ひも)じいながらも逞しく冬を越した
のか 少なくとも、イソップには食べ物を分けてもらうという
選択肢はなかったはずです。

 常識的には 《セミは死んだ》 という結論でしょう。
 
 夏休みの観察日記を読み返すまでもなく、セミ の死骸が
アリ に運ばれていく様子は、残酷でもなんでもなく、むしろ
感心するくらいの気持を持って子供の頃から何度となく目に
している光景です。

 夏にセミが歌うのは、生涯の最後に残った最大のイベント
である繁殖のためにメスを呼び寄せる配偶行動です。
 
 ですから、鳴く(歌う)のはオスだけでメスは鳴きません。

 ならば、夏に歌い冬に踊るのはオスのみに有効であって
メスにはなんら関係のない言いがかりになってしまいます。 

 彼らにすれば、《種の保存》 過程での行為ですから、
神聖な営みを貶(けな)されてはたまりません。

 それに1匹のオスが歌い(鳴き)始めると周辺のオスたちも
対抗して唱和する習性も、鳴き声で集合したり音量をあげて
遠方にいるメスを引き寄せるといった働きや多数でいること
で外敵から身を守るといった意味合いもあると思われます。

 それにしてもイソップは、セミ が夏に歌うことをどのように
考えていたのでしょうか

 『イソップ寓話集』 にある セミ の役どころから
探ってみることにしましょう。

      ――― 『セミとキツネ』 ―――

  高い木の枝でセミが歌をうたっているとお腹を空かせた
 キツネが通りかかり、セミを騙して食べてやろうと考えて、

 「なんてキレイな声なんだろう。 ちょっと降りてきて姿を
 見せてくれないかな。 そんなに素敵でいい声を出す君を
 ぜひ一度、見てみたいから …」 と呼びかけました。

 キツネの企(たくら)みを感じたセミは、試しに木の葉を
 一枚落としてみました。

 すると、キツネはそれをセミかと思って、いきなり前足で
 押さえ込みました。

 その様子を木の上から見ていたセミは、あきれた調子で

 「前にキツネのフンのなかにセミの羽(はね)があるのを
 見つけたんだ。その時からキツネには用心しているのさ」

 と言いました。

 教訓:考えのある人は身近な災難を見て用心をする。

 どうやら、セミ は馬鹿ではないようです。 だからと言って
怠け者ではないと証明されたわけではありませんが …


       ――― 『ロバとセミ』 ―――

  ロバが木陰でセミの歌声に聞き惚れていると、いつしか、
 その声を羨(うらや)ましく思うようになりセミに尋ねました。

 「何を食べたら、そんなにキレイな声が出るのですかquestion2

 「いつもつゆを飲んでいるからです」 とセミが返事をすると
 それからロバは、毎日のようにつゆを飲み続けましたが、
 そのうちに、とうとうお腹が減って死んでしまいました。

 教訓:身の程知らず。 生まれつきふさわしくないことを
 望んでも満たされないばかりか不幸な目に遭うことになる。

 ここでも、セミの歌声は肯定されても、セミの生き方までは
否定されていませんよね。

 もうひとつ、『セミとフクロウ』 の場合ですが …

 夜行性のフクロウは昼間眠ります。そこに騒々しいセミの
鳴き声が聞こえ、その騒音に悩まされます。

 そこで、どうか鳴くのをやめてくれるように懇願したのです
が、セミはその願いを拒絶して、より一層、大きな声で鳴き
続けたのでした。

 そのため、結局はフクロウの謀略にあって、殺されてしまう
のですが、この話の系統はパエドルスでイソップの原典には
ありません。

 こうしてみると、イソップは、セミ に対して概(おおむ)ね
好意的のようです。

 そうなると、享楽的で自堕落な怠け者といった セミ
イメージは似つかわしくありません。

 それに、セミは長い間、地中にいて、やっとの思いで地上
に出て来ます。

 地上での 寿命 は、よく1週間くらいと言われていますが
実際にはもっとずっと長いそうで、配偶行動の時間や交尾後
の産卵などを考慮すると、恐らくは2~3週間、人間に捕獲
されるような事故や天敵などに捕食されなければ1ヶ月近く
生きることも決して珍しくないそうです。

 さてと、オアト は …

 「セミ寿命 で死ぬのであって、冬に アリ の家を
訪ねるはずはない」が持論の1号さんにバトンタッチです。

 なんでも、そこにイソップの秘密があるとか、ないとか …

 では、とっておきのセミ時雨(しぐれ)でお別れです。

 I Love You !  とオスは必死でメスを呼び続けて、
メスも必死にオスを探します 。

 
 これっキリギリス の契りを求め、セミ てもの

『愛の賛歌』(愛の参加)を歌うでアリんす

 …って、なんとも 泣け(鳴け) 話ですネ nose3ase
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