かかわらず ・・・
一万点を優に超える素描を残しながらも、完成作品が
わずかに十数点しか確認されていないということは …
ダ・ヴィンチ自身には作品を完成させる意思はもとより、
完成しようとする動機さえ希薄だったような気がして
ならないのですが …
そんな彼の数少ない完成作品のひとつとされる事実上の
デビュー作『受胎告知』を、まずはご覧ください。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/be/c1794bf4d5e38d497f168e6645d02646.jpg)
降臨した大天使ガブリエルが見つめる先には …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/5d/dc9baf0d129dde3fb5715013959ce6f1.jpg)
突然の処女懐胎の御告げに 左手では驚きを表している
ものの、顔の表情は冷静で厳粛に天命を受け入れる聖母
マリアが描かれています。
それもそのはずで、
傍らには告知される直前まで読んでいた聖書に指を
挟んでいる聖母マリアが表現されていますが、
「見よ、おとめが身ごもって男の子を産み、
その子をインマヌエルと呼ぶ」(イザヤ書 7:14)
読みかけの箇所は旧約聖書で救世主の誕生を預言した
イザヤのページであったとされているからです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/e1/902949a8f4e118b1eeaec0ae86102495.jpg)
実は、
『ダ・ヴィンチの罠』の封印を解く最初にして
最大のサインを ここに見つけることができるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/7e/43ebcf440ed683a886a95d65165dead7.jpg)
『受胎告知』 1472-75年(ウフィッツィ美術館蔵)
おそらくは、そこに萌芽の兆しがあったわけではなく …
この時のダ・ヴィンチには罠の自覚も、なんらの魂胆
もない純なる気持のままに、描いたものと思われますが、
そこには罠の意識こそなかったものの、その存在には
確かな種となるDNAの息づかいが聞こえています。
そのDNAとは …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/10/09ab98b373680fd444e7a21aa79d22a4.jpg)
大天使ガブリエルの祝福を表す右手に対し、左手には
純潔を象徴する白百合があります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/68/80769c69aa4e41677b43b4c3c026291a.jpg)
白百合は、ダ・ヴィンチに限らず聖母マリアの純潔や貞操
を象徴する場合のアトリビュート(持ち物)です
![peace](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/peace.png)
しかし、彼の白百合にはおしべが描かれていたのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/37/f91b796f0f8f5431e41c2ed3b7d968d6.jpg)
一般に絵画における聖母マリアのアトリビュートとしては、
青い色の衣(マント)に神の慈悲を表す赤色の衣服、純潔
を意味するおしべのない白百合の花や処女性を強調する
閉ざされた庭、処女には馴れ親しむとの謂れから一角獣
(ユニコーン)などが配されます。
白い百合の花が描写される場合には、男性を象徴する
おしべは描かないということが一種の約束事になっていた
のですが、そのタブーを気にせずに白百合にはしっかりと
したおしべが描かれています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/20/45/93306ba6c0490fd1489a5eb207a5c93b.jpg)
これはタブーを無視したというよりも純粋に正確さの方を
重視したもので、そこに他意(教会への反発心や反抗心)
はなく、むしろこのことによってそれが問題視され、陰湿で
偏狭な教会や修道会の圧力や姿勢に、ダ・ヴィンチ自身の
反骨心が芽生え始めるキッカケになったと思うのですが、
よくよくこの絵を眺めてみると …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/04/0a8c2c719a7b93bc8c6d5483e7218437.jpg)
(一見では)周囲が堀で囲まれているようにみえる庭園に
も外への出口がみつかり
![right](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/right.png)
奥に向かっては堀がなく、出入り口のように外の世界へと
つながっているように描かれていて、しかも、おしべのある
白百合の花とそことがピッタリとクロスしているとなると …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/c7/a5cb8e00f1668c546685a9853559e241.jpg)
偶然だけでは説明できないものがあるのかもしれません。
そうなると、
何らかのチャレンジが始まっていたのかもしれないという
推測も十分に成り立ちますが …
![ase2](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/ase2.png)
いえいえ、
すでに着々と罠(暗号)は仕込まれていたのです
いずれにしても、
ここでのサインは白百合ではなく、聖母マリアの右手の
二の腕 にあるのですが、この時点ではダ・ヴィンチ自身も
そのことには気づいていないわけで、そのサインが意味を
持つのは、それから20数年後の『最期の晩餐』の
完成を待たなければならないのです。
但し、
その事と仕込まれた罠(暗号)とは全くの別物ですが、
その説明は後日として、ここでは割愛とさせてください。
さて、
未完成のままの『聖ヒエロニスム』にしても、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/8d/b6e006450b4de8ec1e8c896f40883cc8.jpg)
『聖ヒエロニスム』 1480-82年 (バチカン美術館)
フィレンツェ時代に手がけた『マギの礼拝』いわく
、『東方の三博士の礼拝』に関しても …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/97/2c75a82fdec0bcd829458e4b72ae30db.jpg)
『東方三博士の礼拝』 1481-82年(ウフィッツィ美術館蔵)
溢れ出るアイデアを構図や素描として数多く残しているの
にもかかわらず、制作の途中で突然としてミラノに旅立ち、
その後、完成されることはありませんでした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/37/5cce51b70e699709c7bf795538ae17af.jpg)
『東方三博士の礼拝の背景』素描(ウフィッツィ美術館蔵)
これを天才がゆえの飽きっぽさやムラっ気の仕業とみる
ムキもあり、やたらと素描が多いのは、優柔不断な性格で
失敗を恐れる余りに決断を躊躇し、構想段階でつまづいて
しまう完璧主義者であるとする美術評論家もいますが、
これが天才の天才たる所以であって、論評の枠を超えた
凡人にははかり知れない業なのです。
裏を返せば、
謎の封印を解くヒントとなる材料と同時に罠に導くための
伏線や落とし穴としての素描を用意周到に準備していたと
いうことなのかもしれません。
最初に、
種らしき謎のサインが蒔かれ、発芽を始めたのが
『東方三博士の礼拝』 で、『岩窟の聖母』
(ルーブル版)でのトラブルを契機に水と肥料が供給されて
『最後の晩餐』で花をつけるというプロットであり …
そして、
最後にすべての罠と謎を解く鍵として、天を指さす
『洗礼者聖ヨハネ』の“人差し指”で結実
させるという一連のプロセスが、ダ・ヴィンチの意図した
プログラム上のスキームであって、それは、ほぼ予定
通りに進行したのではないかと推察されます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/1c/1d19a28ac4e228782f769eb29587387c.jpg)
それでは、
最初の種らしき謎が『東方三博士の礼拝』の
どこに蒔かれているのかというと …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/f4/6d1fbb8ac8b657f5da6872f200bf36b3.jpg)
この右端の青年はダ・ヴィンチ自身を描いたもので
![down](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down.png)
あると一般の美術書などでも紹介されていますが、
問題は聖母子や礼拝するマギたちからは
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/a8/a6114e78255c6f78b3be538e2de2b0ce.jpg)
目を背け、視線を外にそらす姿で登場させていることです。
手の仕草からは「さぁ、こちらですよ」と誰かを招いている
ようにも見えますが、「違う、違う」と呟いているのかも
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/f1/d8c24214317c989cb777ceff8ae0feff.jpg)
![down_slow](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down_slow.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5c/8d/921b33d9835174b14855c935c8e271d5.jpg)
になる左隅には僧侶のような姿の老人を配していますが、
この人物はいったい何者なのでしょうか
視線を落とし、一心に何か祈りごとをしているようにも、
腕組みをして考え込んでいるようにも、アゴに手をあてて
瞑想しているようにも見えるのですが …
まわりに比べて際立って黒く塗られた人物が、年老いた
ダ・ヴィンチ自身を表わしているとしたならば、「謎」は
一気に氷解するのですが、果たしてどうなのでしょう
… と、その前に
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2a/a5/47dcb8fddfed94a8687ef32a06b06452.jpg)
このトマスや …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/6b/36669fe53b6bb45b1d082c63af30849c.jpg)
聖アンナの左手や …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/b6/37d904bcfbf15941d0488b02874ac2b1.jpg)
洗礼者ヨハネの人差し指に …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0f/78/8ad0f28ce9c03eb915369912f75c051d.jpg)
プラトン(ダ・ヴィンチ)が指し示す人差し指の
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/1a/3ec5d960056d9b0805092cfb6c02699b.jpg)
![up_slow](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/up_slow.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/55/156771b153cb17e69fc5ad7e43167334.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/97/815e4bfe099c124e9ef016eea57419e0.jpg)
種がここにあったのです
![symbol2](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/symbol2.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/07/d7ebc92794bebc2f627bd9869e793620.jpg)
『最後の晩餐』のプロローグであり、右端の青年は
ダ・ヴィンチであり、マタイであり、使徒ヨハネであり、洗礼者
ヨハネを兼ねていて、左端の老人物は、ダ・ヴィンチであり、
バルトロマイであり、アダムであり、イエスでもあるのですが
残念ながら、それらの解説には大変な時間と紙面が必要
となりますので、こちらも後日とさせてください
一応、簡略化した相関関係を矢印で示しておきますので、
想像を巡らせてみてください
![peace](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/peace.png)
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/3e/78d7de136374a9e9e9d4642426efa7c4.jpg)
禁欲的な隠遁修道者として知られる聖ヒエロニムスは、
脚にトゲの刺さったライオンと出会いトゲを抜いてやった
ところ、そのライオンは生涯に亘って、彼につき従ったと
いうことですが …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/50/af79372754676bbee3745b8dc6cac2d9.jpg)
砂漠で悶絶する聖人の姿を苦渋に満ちた表情に描いて
いるのは、そこにダ・ヴィンチ自身の深い葛藤と苦悩
を投影させているのかもしれません。
旧約聖書の『イザヤ書』 7:14 を受けて、新約聖書
![note](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/note.png)
『マタイによる福音書』 1:23 では「見よ、処女が身ごもって
男の子を産み、その名をインマヌエルと呼ぶであろう」
これを訳せば、
「わたしたちと共に神はおられる」
という意味である。 として「おとめ」から「処女」に改変した
マタイによる1節を、その子(名)が「インマヌエル」
ではなく 「イエス」であることの付会として理解した
のかどうかは定かではありませんが、『受胎告知』
における“おしべが描かれた白百合の花”
は、その後の意味深長なる数々の描写につながる
確かなDNA となったことは否定のしようもありません。
『マギの礼拝』と呼ばれるように“東方の三博士”
とは、古代オリエントでの占星術師・学者を指すマギ(magi)
であったとされていますが、『マタイによる福音書』 2:1-12
をテーマに描かれた『東方三博士の礼拝』には
知られてはならない秘密や隠された暗号があちらこちらに
散りばめられているようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/52/7cd61caf95e5ca4028e190e5f41c57a3.jpg)
![up](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/up.png)
素描の段階ではこのように、ラクダが描かれていますが
東方世界では恵みの神とされるラクダもキリスト教世界で
はサタン(悪魔)だとされていますし、未完のままの下絵
の背景にはやたらと異国(中東)を思わせる建物や自然が
描かれ、右上の奥の方には象の群れらしき点在する黒い
一群の姿が点々として認められます。
![down_slow](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down_slow.png)
![down](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/1b/5537e646adb59a5484ee655712a2ec64.jpg)
そして、
天を指差すポーズの男の顔と『最後の晩餐』での
主イエスの顔。
![down_slow](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down_slow.png)
![down](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/79/5d/6111c3b8530564fc2d8f702d02e0182e.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/53/ec/6b2394816cd8d08d1b3ede0fc5b2e6ec.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/80/6981c812c0d96e205108322a87fb1326.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7f/18/477028b8f17e9f1cdc9660656a54f826.jpg)
イエスを抱く聖母マリアの顔と『最後の晩餐』での
使徒ヨハネと『岩窟の聖母』の聖母マリアの顔。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/f6/4534c76f14f7c3e3612d9d71e211ae25.jpg)
『最後の晩餐』の使徒ヨハネ 『岩窟の聖母』の聖母マリア
いずれも同じ人物を描いていると思われませんか
それに付け加えるとすれば、
『聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ』の
幼い聖ヨハネの顔ですが …
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/02/a6/a9acb69f825b0b9f9f719262642d3aaf.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7d/d8/0854eeb0bd3363fbeabc75b292c3d106.jpg)
![down](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/down.png)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/71/8c2e8ab976bfce89fa7f203ff1c7033e.jpg)
若きダ・ヴィンチを描いたとされる人物
いやはや、
思わせぶりもタップリに、なんやかやとこまごまとした指摘
をしてまいりましたが
![ase2](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/ase2.png)
『ダ・ヴィンチの罠 サイン』
と題した今回のエントリーで最も重要なサインは …
サイン
『受胎告知』での聖母マリアの微妙に長く描かれた
右手の二の腕です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/fa/e099ee6d2f17aba5fe216321f22fd020.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/0e/60bf10a69b015968095d850e4e61e231.jpg)
ほとんど気づかない程度の微かな歪(いびつ)さですが、
これが最初にして最後の結末につながる最大の
サインなのです
![peace](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/peace.png)
それと、もうひとつは … このテーブル(書見台)です
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/7a/4eaba795d6906a21e2805b4cae07e857.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3c/be/9794bfa666869c7f35ced69566b42314.png)
「まさかとは思うが …」
… to be continue !!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/bc/b00f1ae3e5014af4d0ddaad2815d49e0.jpg)
![up](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/ap/up.png)
ここですよ