私の本棚

※読書感想メイン

妻が口をきいてくれません/野原広子(著)

2023-01-08 | 野原広子

【あらすじ】

ある日突然、妻の美咲が口をきいてくれなくなった。
「行ってきます」「ただいま」と言っても返事はなく、
「ありがとう」の言葉も無視。

しかし、誠は妻に無視をされる心当たりがなく、妻の顔色を伺う毎日。

先輩のアドバイスを受け、花束を送ってみたり、就寝中の妻の手を触れても効果は無し。

それでも、お弁当だけは毎日作ってくれる。

妻に無視をされる日々が1ヶ月を過ぎ、1年。
そして5年目を迎え、とうとう耐えきれなくなった誠は、妻に離婚を切りだします。

【感想】

第一章は、夫(誠)の視点から物語が始まるのですが、野原さんのことだから、どちらかに偏った設定で物語が進むはずがないと思いつつ、妻に無視をされ続ける誠に感情移入し、同情しました。


しかし、第二章に入ると一転。

『期待して 失望して さらに失望して』

妻の視点で話が進むと、「いやぁ、そうだよね。我慢の限界だよね」「口もききたく無いよね」と、美咲に感情移入してしまうのです。

いつも思うのですが、野原さんのストーリー設定はさすがです。

 

夫に悪意がなくても、無神経な一言が妻を深く傷つけてしまうことがあるし、誰だって傷つきます。

夫(周囲)から見ると、専業主婦は楽だと映るのかもしれない。
でも実際は孤独だったりします。
家事だってどんな頑張っても完璧にはできません。
特に子供が小さい間はできなくて当然なのに、自分のダメなところを棚に上げて、妻の言い分に揚げ足を取るのは違う。

でもこれは、どこにでも起こりうる話で、決して他人事では無いと思います。
結婚生活35年目を迎える私たちも、数えきれないほどあります。

年に1回は必ず😅

 

「おっ!今日は綺麗に掃除しているね。でもここが埃だらけだよ」

 

私も同じことを言われたことがあります。


正直言うと、もしかして主人は「大人のADHD」なのか?と思ったことさえありました。

しかし、人気俳優がトーク番組で、自分の物言いが原因で、妻を怒らせることがあると話を聞き、主人だけでは無いのだなと思いました。

『ママはずっといてくれたんだよ』

誠は、娘に「ママと離婚をする」と言わなければ、ママは子供たちのために我慢をしていたことを知ることもなく、自分が、妻を傷つけたことを気づかずにいたかもしれません。

しかし5年も口を聞かなければ、さすがに耐えきれなくなって家を出てしまうか、または、他の女性に走ってもおかしく無いのに、不倫も浮気することもなく、家を出ることもせず、誠はよく我慢したなと思います。

誠は無神経なだけで、根はとても良い人。
美咲も誠の良さを知っているからこそ、嫌いだと思いながらも、嫌いになりきれなかったのでしょう。

最後はハッピーエンドで良かったです。

 


消えたママ友/野原広子(著)

2023-01-06 | 野原広子

【あらすじ】

優しい夫と優しい姑。好きな仕事をさせてもらい、綺麗に着飾り。
恵まれた環境で生活していたはずの友紀ちゃんがある日、子供を置いて失踪。
保護者の間では、さまざまなな憶測が飛びかいます。
そんななか、3人のママ友たちも、友紀ちゃんの失踪をきっかけに、お互いへの不満が噴出。
次第にギクシャクしていきます。

【感想】

「隣の芝生は青い」「他人の不幸は蜜の味」「女性は産む機械?」

そんな言葉が頭をぐるぐると駆け巡っていました。

随分前の話になりますが、友人が、「ママ友には、仕事上の愚痴をこぼすことが出来ても、家庭の悩みは、話すことが出来ない。」と話していたことを思い出しました。

周囲からは、とても良いご主人と思われているため、夫の愚痴をこぼすと、「良い主人なのに、何を贅沢を言ってるの?」と、言われてしまうのだとか。

ママ友は自分が見たものしか信用してないのか、私も経験があったので、友人の話に共感したのを覚えています。

それにしても人の噂話ほど、悪意があって怖いものは無いと思いました。
そして友紀ちゃんの子供。ツバサくんの最後も怖かったです。
ママを追い出したおばあちゃんに対しての嫌がらせなのか、ツバサくんの闇を見た気がします。

 


約束のない日曜日/井形慶子(著)

2022-12-24 | 井形慶子

【あらすじ】

『あなたが私を好きだった頃』の続編。

年上の恋人と別れて2年が経過したある日、共通の知人から「彼」が結婚したことを聞かされた井形さんは、彼との思い出が詰まったマンションを引き払い、人気評論家が所有する、古民家の、別宅へ引っ越しをします。

時、同じくして、著者が経営する会社が軌道に乗り、人手を増やすことになりました。

面接に現れたのは、著者よりも4歳年下の久住勇太。
今働いている会社を、すぐにでも辞めたいと切羽詰まった様子の勇太を見て、井形さんは雇用を決めます。


何でもそつなくこなす勇太は、社内の人気者になり、欠かせない存在となっていきます。


そして、井形さんにも少しずつ変化が、、、


【感想】

年下の久住勇太に魅かれていく自分に戸惑う姿と、勇太を受け入れる覚悟を、フルネームから下の名前で変えていくことで、心の変化を表現するあたりはさすがだなと思いました。

元恋人のへの思いを断ち切れてない井形さんにイラッとすることもありましたが、結果的にハッピーエンドで一安心。
勇太との、その後の関係がとても気になります。

『本当の愛は人を幸せにしようとする意志だ。愛は単なる感情ではなく、強い意志なのだと今さらのように気付かされたのです』

「あなたが私を好きだった頃」からずっと違和感があったのですが、元恋人は、最初から井形さんを幸せにしようと言う意思がなかったように思います。
元恋人との恋愛は、久住勇太に出会うために必要な、イニシーションラブだったのではないかな?



 


あなたが私を好きだった頃/井形慶子(著)

2022-12-18 | 井形慶子

 

初めてこの本を手にしたのは15年以上も前。
書店の新刊コーナーでタイトルが目に止まり、最初のページを開く

『あの人があなたを苦しめているのではなく
あなたがあなたを苦しめているのです』

 

この最初のフレーズが気になり、それからパラパラとページをめくって、購入を決める

 

実は再々読です。

 

「もし神様がさ、人生のどこかに戻してあげるって言ったら、どこに戻りたい?」

イベントの打ち上げにみんなで食事をしていたある晩のこと、1人の青年が突然大きな声で尋ねました。

青年はいつの頃に戻りたいか、真顔で尋ねるのに、皆は「母ちゃんのお腹の中」とか、「ダービーで当てた日」と叫び、だれ1人として真面目に答えようとはせず、彼を困らせていました。

 

多くの人たちはふざけて答えてる中、青年は、今度はこう質問するのです。

 

「じゃあ忘れられない人とかいるでしょ?初恋の時代に戻りたいとか、皆さん無いんですか?」

 

この青年の一言に、著者の井形さんは、過去の終わった恋を振り返るのでした。

 

 

初めて読んだ時は、自分の恋愛経験を思い出し、胸がキュンとなったのですが、再読した時は10年ぶりと言うこともあり、内容をほとんど忘れていて、新鮮な気持ちで読みました。

そして再再読となる今回は、井形さんは本当にフラれたのか?とモヤモヤとした気分です。

なぜなら恋人は、「別れよう」とも、「さようなら」とも言っていない。
「今の状況をわかってほしい」と、言って、井形さんの前から去っただけで、最後の言葉を井形さんに伝えてないと思ったからです。

そのせいか、最後の別れのシーンを行ったり来たりで、先に進ことができず、井形さんは、自分はフラれたのだと思い込んでいるのでは無いかとさえ思いました。

もし男性が口にした「今の状況をわかってほしい」が、別れの言葉だったとしたら、この男性はずるい。

別れの言葉をハッキリと口にしていれば、井形さんはここまでズルズルと引き摺らずに済んだのでは無いでしょうか?

 


夢をかなえるゾウ0/水野敬也(著)

2022-12-13 | 水野敬也

ガネーシャシリーズ第5段

上司から嫌がらせを受ける主人公「僕」
度重なる上司の嫌がらせに絶望感に苛まれた時、清掃員に扮したガネーシャに助けられる。
夢がないと言う僕は、ガネーシャから出された課題をクリアしながら成長する物語。


この小説を読まなければ、知ることが無かったガネーシャの生い立ち。
象になる前は、母のパールヴァティーが入浴中に身体の垢を集めて作った人形で、実はすごいイケメンだったとは。

詳しくはガネーシャ - Wikipedia で。

 

ガネーシャがモノリスになってしまう場面は、笑っては行けないと思いつつ、笑わずにはいられないし、声を出して笑ってしまいそうな場面が何度も出て来ます。

そして、最後の最後で釈迦のオチに爆笑しました。

 

一番心に響いたのは、夢を見つける上で大事なことは「痛み」を知ること。
悲しみや痛みは避けて通れるものではなく、そこには必ず意味があるのだと言うこと。

 

瀬戸内寂聴さんが生前、同じようなことを話されているのですよね。
苦労・挫折・屈辱を味わった人は幸せで、自分が経験したことは1つも無駄になっていないと話をされていたことを思い出しました。

僕が上司から受けた屈辱も、自身が経験したからこそ他人に対して優しくなれる。
上司と直接対決をし、会社を退職した彼が見つけた夢は、きっと輝く未来が待ち受けていることでしょう。