Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

ボズ スキャッグス Come On Home

2011-01-27 00:50:12 | ROCK

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1997年のブルースアルバム。ブルースといってもそこはボズ。ブルースをフォーマットにした古き良きアメリカ文化そのものだ。セールスという小さい枠の外にある巨大な黒人音楽のアーカイブス。素晴らしいの一言に尽きる傑作。

これを聴いてしまうと「AORのボズ」というのは70年代にたまたま化学変化を起こして出来てしまったようなものだ。ポップスが本当の意味でフュージョンされた70年代中期に形になったAORはROCKの市場にJAZZやボサノヴァ、カントリーのフィルターを通してファンクなリズムの匂いを施した特異なジャンルだった。そこにいち早く反応したのはソフトなアメリカンロックやジャズ系のミュージシャン。しかし、そこにはブルースのような土臭いルーツをあえて消したBGM的な無味無臭なスタイルになり「大人向け」というバブルなイメージが確立した。

その時代の第一線で活躍したボズはまた別だった。そこにはアナログ最先端のバンドサウンドの中にしっかり土臭いブルーズが存在する。そんなボズが90年代中盤にそのルーツの部分だけを形にした傑作がこの「カム・オン・ホーム」。素晴らしいバンド演奏を丸ごと捉えたライブなサウンドとミックス。ボズのブルースギターがまたタマらない。ギターソロが曲のサビ以上に盛り上がる。90年代初頭に一時ブルースブームがありクラプトンや大スターがこぞってブルースアルバムをリリースし、それの相乗効果で老舗のブルースアーティストがカムバックした。そのころのデジタルとアナログが適度にミックスした質感が完全に完成系をなした形だ。しかし、決して洗練された感じではないがポップスでもない白人のボズが作りだすオリジナルのブルースがここにある。

この傑作のキーポイントが参加ミュージシャンだ。目の前で叩かれているような素晴らしいドラム。こんなにいいドラムサウンドは久しぶりだ。そのドラマーはアメリカンドラマー国宝級のジムケルトナー。いぶし銀のタイム感とスネアサウンドはやっぱり国宝級。かたやグル―ビンなエイトビートを炸裂させているのはリッキーファター。ピンとこない人もいると思うが70年代初頭ビーチボーイズやビートルズのパロディーバンド「ラトルズ」、ボニーレイットのバックをささえてきた重鎮。この2人のドラマーとボズが主役でそれをアメリカスタジオミュージシャンの大御所たちが支える構図だ。このリッキーファターは最近だとジョンスコフィールドがミーターズのジョージ・ポーターJrやジョン・クリアリー等のニューオリンズの御大たちと作った「Piety Street」で濃厚セカンドファンクを叩きまくっていた。

内容は古典ブルースからソウルのカバーに差し込むボズのオリジナルがまたいい。

これを聴くとやっぱり「生バンドは最高!」と痛感するのとボズのアメリカンルーツミュージックに対する愛情がよくわかる一作。

夜にじっくりオーディオに向かって聴いてください。


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