Guitars On Broadway

洋楽とエレクトリックギターの旅路

Solid Mahogany Speaker Cabinet

2020-12-10 11:09:00 | AMPLIFIERS

12インチ1発のできるだけ小ぶりな無垢材のスピーカーキャビネットを探していましたが、見つけたのがイメージより二回り程大きいオープンバックのマホガニー材の家具調キャビネット。内部に1991とデイトが打ってあったので29年経過していい感じで乾いた雰囲気です。重量はスピーカー搭載しないで15kg前後といい重さです。バッフル板も無垢マホガニーで取り外しはできません。全体的にモッタリとしたデザインはギターアンプやオーディオスピーカー等を制作する方面ではなく家具製作の雰囲気を感じ取ることができます。バッフル板は経年で亀裂が入って拡がりかけていましたがクランプをかけられないのでタイトボンドを充填。元々が木の風合いを重視した未塗装なので経年変化は避けられません。

今後、状態を維持するため水性のウレタンクリアで木材の呼吸を止めてしまいます。ペーパーで下地を処理しハケで3回ほど重ね塗りを施しました。フロントのサランネットをビンテージラジオ風なものに張り替え、メサブギーのウッドキャビネットを意識した感じに。スピーカーはエミネンスのカナビスレックスの12インチ。麻のコーン紙を使用しどんなジャンルやヘッドアンプにマッチするフラットなトーンで個性は全くありませんがギターアンプキャビネットには最高。クランチからディストーションに特にいいですね。

マーシャル2061Xのクランチとの相性が良くこちらがメインのキャビになりそうです。ソリッドウッドキャビの硬いイメージはあまりなくパイン材を使っていた時期の古いツイードフェンダーに近い雰囲気。タイトな後面開放キャビが無駄なローもカットしビンテージを意識し過ぎないスピーカーとのマッチングで室内でのリファレンス用には最適なトーンを出力します。DVマークのトランジスタヘッドやチューブのマーシャルでもどちらもいい感じということはキャビネット自体の個性が全くないというキャビ本来の姿かもしれません。スピーカーのジャックプレートは厚めのアルミ板でのDIY。


1955 Fender Stratocaster Refine

2020-06-29 10:47:42 | GUITARS

70年代あたりに指板中央に亀裂が入ったところに接着剤を流し込んだだけのアメリカンなメンテナンスを施されていた1955年のフェンダーストラトキャスターのネックを思い切ってメンテナンスに出したのが数年前。亀裂を接着し直し、指板を補正してのリフレットで完璧な状態に戻りました。幾度となくされたリフレットで指板が削られた為、ハイフレットの高さが保てずブリッジのクリアランスが変化してしまいシムでも違うフィーリングに。

数年前にビンテージスタイルに定評のある某メーカーにボディに合うネックを製作してもらいましたが何か違和感をぬぐい取れずまた戻すことにします。薄くなったネック側のジョイントの底面にスペーサーのようなメープル板を張り合わせて高さを稼ぐという考えを思いつきました。高さを確保するシムならネックに角度が付きすぎてストラト特有のトーンが減少します。そんな荒技を実現できる職人に早速連絡すると一つ返事でOK。runtguitars.com/  代表の後藤氏は新進気鋭のルシアーで忙しいさなか実現してくれました。イメージ以上の仕上がりと正確なピッチには恐れ入ります。こちらのfacebookで制作工程が細かく紹介されています。ぜひご覧ください。

そんなネックとボディがめでたく再婚したので記念に伝送系、パーツ等をすべて新調。ピックガード、PUカバー、ボリューム&トーンノブをUSA fenderのストラトリリース60周年で出た54年モデルのリスパーツ。角の丸いPUカバーとショートスカートノブは54年の最初の数十本のみのバージョンで55年に使うのは間違いですがそのあたりはラフにみていただければ。配線材はストラトなどのシングルコイルPUの個性を最大限に出すと認識しているウエスタンエレクトリックのビンテージ単線。特に最高な40年代から50年代中盤までのコットン被覆のブラックエナメルの22AWGが入手出来たのですべてそれで取り回します。ポットはCTSの底面フラットなカスタムで配線しましたがトルクが重いのとシャフトが長くワッシャーを数枚PUガード裏に仕込まないとノブとPUガードに隙間が出てしまいます。このノブのスカート部分に隙間が出るとフェンダーではないという勝手な拘りがあることにご了承ください。CTSのヘソ付きビンテージタイプポットはトルクが軽くシャフトもストラトに合う長さでいい感じにフィットしました。PUセレクターはもちろんの3WAY、コンデンサーはお気に入りのデンマークのJENSENオイルペーパー0.022uf。

弦高はすべて1~1.1mmにセット、ブリッジは1mmのフローティングでテンションもジャストフィット。ピックアップはリア、センターともにオリジナルでフロントはリンディーフレーリンのリワウンド。すべて直流抵抗5.7kΩ前後で以前より倍音成分が複雑になっているような気配を感じます。いろいろと手を加えて同じ年月の経年変化を味わったボディとネックをセットアップしてみるとこのストラトを手にした20年前以上にストラトらしいトーンに変化しているのには驚きです。同じ直流抵抗値のリンディのリワウンドPUも当初は多少ファットでしたがいい具合にローミッドが抜けて他のオリジナルPUと同化していってます。低いアクションでナチュラルなコンプ感が心地良いですがダイナミクスが所有しているどのストラトより味わえるのが特徴です。軽くクランチしたチューブアンプにダイレクトでセンターピックアップというのがこのギターの魅力でしょうか。

厳密にいうと56年まであったアッシュボディ/メイプル指版定番の弦の分離感があるクリアな音より57年以降のミッドレンジに雑味が増したアルダーボディのトーンに近い風合いです。ボディが軽量なのがその要因でしょうがこの時代の不安定なピックアップがその年代別オカルトを呼ぶ根源。ローズ指板を導入した60年からよりミッドレンジが膨らんだラウドなトーン、70年代に入り周辺機器や音楽シーンの変化とともにブリリアントな質感になりアッシュボディに戻る73年あたりからまた変化と楽器というより工業製品のような変革をしていったのがストラトキャスター。同じフェンダーでもスタイルやトーンの統一性を崩さないテレキャスターはフェンダーギターのメイン商品として君臨していますがストラトキャスターは最初から玩具のようにアレンジ自由というのも目論んだスタイルをレオフェンダーは想定していたかもしれません。

昔は勝手なさじ加減で良い悪いを言っていましたが長くストラトを嗜むと様々な組み合わせで正解が無いというのがストラトなんですね。

以前にオーダーしたネックはruntguitars後藤氏が制作のレッドEMGストラトのボディに移植するとこれもまた最高になってしまいました。このギターに関してはまた別の機会に。


FENDER BLUES JUNIOR Ⅲ

2020-03-27 18:06:14 | AMPLIFIERS

80年代に入ってフェンダーは長くアンプの不遇時代に入ります。70年代中盤から歴史のある真空管ギターアンプのノウハウと音楽シーンのミスマッチが次第に大きくなり、50~60年代のビンテージフェンダーアンプを求める声が大きくなっていったのも事実でした。80年代に入ってCBSから独立した新しいフェンダーは真っ先に手を付けたのが古き良き黄金期だったフェンダーを復活させることでした。そんな中、往年の名器のリイッシュとは別にビンテージの質感と現代的なトーンを持ち合わせたモダンなラインナップがプロフェッショナルチューブシリーズとしてリリース。50年代のツイードアンプのキャビネット形状を世襲したのがこのシリーズで80年代の後半に出たこのシリーズは最初10インチ15Wのプロジュニア、12インチ45Wのブルースデラックス、10インチ×4のブルースデビルの3種類。90年に入り一歩遅れて登場したのが12インチ15Wで50年代のツイードアンプのキャビネット形状を世襲したこのブルースジュニア。

コンパクトキャビに12インチスピーカーを搭載。EL84にマスターボリューム、3バンドトーンコントロールにスプリングリバーブまでと豪華な内容に聴感上40Wクラスの出力と全て完結してしまうハイスペック。そんなことから現在まで様々なモデルチェンジをし生産完了品と言われてもいまだに新品が手に入るほどのロングセラーアンプ。

デビューからツイード、ブラックトーレックスバージョンと変化、2000年に入ってカリフォルニアコロナからメキシコへ製造工場を移し2010年にブルースジュニアⅢにモデルチェンジ。様々なトーレックスカラーと搭載スピーカーのバリエーションの限定モデルをリリースし最後の現行モデルはブルースジュニアⅣ。

現代の高出力のピックアップやペダルの使用も想定した若干ハイ上りのトーンセッティングなためダークなビンテージツイードトーンを求めるとちょっと肩透かしを食らいます。今回はスピーカーを純正のエミネンスからセレッションクリームバック8Ωに交換してスピーカーケーブルも色々と変えてみました。今のところマッチするのがベルデン8470がボトムが低くていいかもしれません。すべてのジャンルに対応する程のトーンレンジがあるためにビンテージライクなシングルコイルだとさらにプレゼンスを加えたようなまとまりつかないトーンの恐れもあります。基本をクランチ設定でドライブペダルやケーブルでバランスをとるのが基本的なセッティング。これだけのロングセラーアンプなのでビンテージツインリバーブをモチーフにしたいろいろなチューンナップもあるようで試してみたいものです。

音の通りは抜群で30人クラスのライブバーだとフルバンドでもノンPAでOK。それでもアンプスタンドを使用してヴォリュームは半分以下です。重量14kgとセッションなんかには重宝するサイズ。


JAZZ3 考察2 TUSQ pick

2020-03-27 18:00:42 | PICK

JAZZⅢばかりでウルサク申し訳ございません。小さいピックになればなるほど材質、形状、厚さで弾き心地が大幅に変化します。前回でも書きましたが、あるようでなかったセルロイドのJAZZスタイル・ダンドレアPro PlecをスタンダードJAZZⅢのように作り変えます。最近は手軽にピックをカットするアイテムも出ていますが1mm用なので厚い素材は出来ません。JAZZⅢの形状が一番シックリくるのですがジムダンロップ自ら形をアレンジしてしまっていますから複雑なところに陥ります。となると自分でJAZZⅢを再現するしかありません。昔使った金属ピックの一番加工しやすいブラスをJAZZⅢ形状に作り替えてそれを型に様々なピックを加工してみます。

ティアドロップのアクリルや昔の鼈甲ピック等をJAZZⅢにアレンジしましたが結構大変です。先の部分のカットはアタックやトーンに影響を与えますがスモールピックになればなるほど両サイドの肩の部分の形状で持った弾き心地がかなり変わります。それはピックの握り方にもよりますが逆アングルのように握るよりツマム感じになればなるほど収まり方の違いを感じます。

そこで以前から気になっていたアコースティックギターのナットやブリッジで有名なタスクのピックのティアドロップを入手。ティアドロップでもJAZZⅢのようなスモールタイプ。このタスクピックは特殊な熱硬化樹脂のようで本体自体が金属的な硬い乾いたトーンなので0.8mmのうすいピックでアコースティックギターのストロークを弾くといい効果が表れます。エレクトリックギターでそのあたりのインパクトは少ないですがスタンダードJAZZⅢに近い1.4mm厚のものが良いでしょう。オリジナルJAZZⅢは1.38mmのナイロンなので柔らかく感じますが同じような厚さで硬い材質が無かったのでこのタスクはかなりお勧めです。形状は肩の部分が滑らかに落とされた感じ。逆アングルではピック先が人差し指と同じ方向を向くポジションだとザラッとした倍音が多く出るトーンになります。3種類のカラーがあり厚さは同じですが樹脂の粒子の違いでアタック音に変化が出る感じでしょうか。耐久性は高くないですが先が丸くなってからのトーンが長くいい感じになるのはチキンピックスに通じるニュアンスがあります。


JAZZ PICK 考察

2019-09-11 17:59:18 | PICK

油断していたら面白いピックがたくさんリリースされていました。ここ最近はチキンピックオンリーでしたがJAZZⅢスタイルのニューカマーが盛りだくさん。ウルテムや樹脂系新素材等ひと昔前だとありえなかったくらい種類も豊富です。ネタも尽きたところで石や硬い木材、骨、角等の自然素材を用いたモノまで登場する始末。これらも一見ワイルドですが考えられたエッジカットで大変滑らかで弾きやすくトーンも最高。

ピックの真ん中がくぼんだ黒いのがイタリア製EssetipicksというピックのZIRIYAB 、EASY、HEARTの3種類。防弾チョッキに使われる軽量で硬いケブラー繊維というもので作られていて、弾き込んだようなサイドエッジの削れ方は弦に対してアングルの付いたピッキングをしても平行にヒットするような工夫がされています。スタンダード角度とレフティ又は逆アングル用の2パターンをチェックしないと使えないピックになってしまうのが要注意。ピッキングスピードは出ますが様々なピッキングスタイルを瞬時に変えたりするギタリストには難しいかもしれません。おいしいポイントを探るには時間がかかるタイプの代物でしょう。

今まであったようでなかったアクリル素材のピックですがそれをメジャーにしたのがVピック。常識外の形状のイメージを覆す自然な弾き心地は病みつきになりますが同じアクリルを使ってスタンダードな形状で作ったのがグラビティです。最近は同じくダダリオからも1.5mmアクリルのAcryluxシリーズが出たりとアクリル素材が熱いですね。アクリルは硬くメリハリがあるブライトなトーンでタッチによるトーン調整もスムースです。アクリルでいうスタンダードな厚さの1.5mmはグラビティ、ダダリオの両ブランドから出ていますが若干グラビティのほうが厚みがあり、JAZZⅢでも形状が違います。ジムダンロップのJAZZⅢ愛好者は形状は良いですが少し柔らかいナイロン素材に満足できないギタリストが待ち望んだようなのがグラビティ003シリーズ。レッドが1.5mm、ブルーが2mm、オレンジ3mmと見やすく色分けされています。厚いピックにありがちな硬いアタック音が少なく厚くなるにしたがって丸いトーンになっていきます。ピックの弦にあてる角度を同じでも弾き心地が変わらないのはピックサイドの研磨角度が素晴らしい証拠です。

 

そんなグラビティピックもアクリル素材に飽き足らずゴールドシリーズという3年にわたって開発した新素材を使ったモデルまで出してしまいました。価格もアクリルの5倍のハイエンド。その割にルックスはよろしくないロゴマークとカフェオレのようなカラー。弾き心地、トーンはアクリルとチキンピックの中間の立ち位置ですがタッチが柔らかいのに音がスピーディーに立ち上がる不思議な感覚。どんな握りでも馴染むエッジ処理はハイエンドを納得させるレベルにあります。厚い2.5mのほうがマイルドなトーンでピッキングにかかる質感は1.5mmと違いが無いという不思議な感覚。このゴールドシリーズ・003Miniの形状は忠実に元祖ジムダンロップのJAZZⅢを再現しています。この形状もJAZZⅢスタンダードとエリックジョンソンモデルとは微妙に形状が違い弾き心地は全く違い、ウルテム素材のJAZZⅢは全てエリックジョンソンモデルの形状を元にしています。最近ジムダンロップで出したプライムトーンはオリジナルJAZZⅢのスタイルにハンドメイドでエッジ加工されてこれも素晴らしいモデル。

小振りなJAZZⅢスタイルは厚さが0.01mm違いで雰囲気がガラッと変化します。同じ素材のナイロンでも色によって違いがあったり素材で硬さが変わるのでいろいろと試さないと選ぶことが難しいのが小さいピックですね。流行りのウルテムもいいですがスタンダードのJAZZⅢの厚いセルロイドがありません。最古のピック素材セルロイドは意外とフラットなトーンで好きなのですが厚い小振りなセルロイドとなるとダンドレアPro PlecのJAZZモデルしか見当たりません。丸みのあるカットでスタンダード1.5mmをラフな感じで握り込むJAZZスタイルのピッキングにマッチしそうです。老舗フェンダーからもウルテム素材でJAZZスタイルも出していますが薄くちょっとハズレ感あり。個人的にはやはりフェンダーはセルロイドで作ってほしいものです。