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果報は寝て待て

2015年6月 津軽 5

2015-06-05 09:17:17 | 
津軽鉄道


駅の窓口で金木までの切符を買う、切符は分厚くとても立派であった、発車まで時間があったのでベンチにぼんやり座っていると切符を売ってくれた若い女性の駅員さんから早くホームに出るよう促される、悪意はないだろうが私は追い出されたようであまりいい気はしなかった、改札で切符にパチンと鋏を入れてもらいホームに立つと運転手さんが列車を掃除していた、発車10分前くらいになっておばさんが一人乗り込んだので私も続くことにした、乗客は私のほか今のところ全部で3名、それからアテンダントさんらしき制服を着た女性がなぜか乗っていた、天気はいい、車内も風景も静かである。


発車間際になって急に車内があわただしくなった、年寄りの集団が11名どかどかと乗ってきたのである、男女半々位で皆大きなリュックサックを背負いトレッキングにでも向かうような恰好をしている、状況は一転した、こいつら何者だろうか、とにかくやかましい、話しぶりから見ると地元の人間ではなく関東圏からやってきた連中のようである、まるで貸し切りバスの中にでもいるように気楽に席を移動して写真など撮り始めたりやけにはしゃいでいる、いい年をして回りへの配慮などお構いなしである、迷惑な集団と鉢合わせてしまった、そしてリーダー格のじじいが私の前の席に移動してきた。


列車が発車するとさっきのアテンダントさんがマイクをもって挨拶した、これから各席を回り観光案内をしてくれるらしい、こんなサービスがあるとは知らなかった、アテンダントさんは迷惑集団にも挨拶をしながら前の座席よりパンフレットを配りながら順に奥に向かい歩いている、わたしは後部座席にいたので一番最後であろう、目の前は一面田んぼが広がっている、金木までは20分ほどで到着する、集団はますます盛り上がり手が付けられない、私は極力無視をしていたがどうもおさまりがつかない、そしてアテンダントさんがリーダー格のじじいの席、私に席の前にやってきた。


リーダー格はこれから皆で三味線会館に向かうのだがコインロッカーがいったいどこにどのくらいあるのか、執拗に聞き始めた、アテンダントさんにとっては全く関係のない質問である、この馬鹿はとにかく向かう予定の場所のコインロッカーのことばかり繰り返したあげく佞武多のことでさらに意味不明な質問を始めた、口調は悪質クレーマーである、アテンダントさんも理不尽な問い合わせに熱くなったのか津軽弁丸出しで必死に応答している、私の我慢もだんだん限界に近づいた頃金木に列車は到着した、じじいたちも降りるのか立上っている、三味線会館と聞き覚悟はしたがこいつらも金木で降りるのだ。


金木で列車は5分停車する、アテンダントさんは私の席の隣りにしゃがみ申し訳ありませんでしたと頭を下げた、いいんですよ、しかし困った人だ、災難でしたね、そんな言葉をもって彼女を労った、旅に出ると人と会話をする機会はない、強いて言えばホテルのフロントや食事や買い物をした時レジの方を相手に一言二言くらいである、しばらく声を出さないでいたせいか私の声はかすれていた、私はこのアテンダントさんのことが好きになった、一生懸命誠意をもって対応している姿は本当に立派であった、津軽案内のパンフレットをいただき私も列車を降りた、観光客が多いせいであろう、洒落た駅であった。









2015年6月 津軽 4

2015-06-05 08:44:01 | 
津軽米


習慣なのか5時50分に目が覚めてしまう、このホテルには大浴場がある、昨晩はしばらくの間一人でのんびり浸かることができた、お湯は妙にしょっぱかった、夕食はとことん侘しいものであったが明日の天気予報は晴れと聞き安心したのか酒も適当に切り上げさっさと床に就くことが出来たようだ、冷蔵庫の中には未開封の余市と水が残っている。


部屋は典型的なビジネスタイプのシングルルームである、小さな窓の両側の取っ手を手前にひねり隙間を設け部屋の空気を入れ替えた、朝食に向かおうと着替えているとさっき開けた窓がすごい勢いでくるりと全開した、びっくりしてよく見ると施錠ボタンが取り外されているではないか、きっと誰かが自殺を企てたのだろう、私は身を乗り出してみた。


朝食は最上階のレストランでバイキング形式であった、炊飯器に炊かれた飯がとびきり美味く銘柄を聞きたくなった、窓際の景色のよい席に余裕あったのだが遮光カーテンが引かれた反対側を選んで座ってしまう、しかし炊飯器や料理までの距離は近く私は大盛りの飯を3杯おかわりした、食後に昨日のおばさんを思い浮かべながらリンゴジュースを飲む。


満足して部屋に戻るとテレビを点けた、そして私は昨晩決めた本日の予定をおさらいした、早めにチェックアウトして駅のロッカーに荷物を預け、しばらくこの辺りを散策する、そして9時過ぎの津軽鉄道に乗り金木に行くのである、予定に従って駅に向かう途中すれ違った見知らぬ方からごく普通に「おはようございます」と挨拶をされた。


空は快晴である、日射しはますます増してきた、私は岩木川沿いをしばらく歩いてみた、いつもと違う風に吹かれているようだ、大げさな言い方をすれば外国のようだった、こんな気持ちのいい時間を過ごすことも久しぶりである、川っぺりには人はいない、大きな病院があった、向かいに見える山が岩木山かもしれない。



2015年6月 津軽 3

2015-06-04 19:49:55 | 
五所川原へ到着


奥羽本線に乗車、車内は学生さんとおばさんたちでちょうどよく席がうまっていた、しばらく立っていたが二駅ほど過ぎると前の席が空いたので座ることができた、晩飯のことを考えた、すると沢庵のような臭いがほのかに漂ってきた、どうやらとなりのおばさんの買い物籠の中からである、籠からは立派な葱が3本伸びていた。


川部で五能線に乗換える、雨は降ったりやんだりしているようだが空は所々薄日も射しはじめたようだ、目の前にはリンゴ畑が延々と広がっている、開花時期はもうとっくに過ぎており収穫はまだ先である、列車の席は4人掛けボックスシートタイプで下校途中の学生さんがここでも多い、皆席のとなりに鞄や荷物を当り前のように置いていた。


18時過ぎ無事五所川原駅に到着、改札を抜けると外は小雨であった、本を買いたかったのだが駅前には何もなさそうなのであきらめた、ホテルは駅の近所にあった、場所を確認してから近所のコンビニに入り酒と晩飯を買い込んだ、長い夜になりそうな気がしたので酒は多めに買い込んだ、コンビニの先には解体途中らしい大きな病院が晒されていた。



2015年6月 津軽 2

2015-06-04 16:49:22 | 
新青森へ


私の後ろの席の二人連れがスーツケースを3つも載せたので私の荷物置き場が一席分進行方向に押し流された、両手を上げて自分の鞄を載せていると小柄なおばさんが私の前にできたとても狭い隙間を無言ですり抜け隣の窓際の席に腰かけた、あまりいい気はしなかった、そして手前のテーブルを広げ弁当を置いてから立ち上がり赤い大きなカバンを荷台に載せ始めた、置き場はさらに前方にずれたので無理な姿勢で大変そうだ、手伝いましょうか、声をかけようと思った瞬間私は左足を踏みつけられた、おばさんは無言であった、そんな余裕はなかったのだろう、私も黙ることにした。


出発と同時におばさんは弁当を食いだした、私もビールを飲みだした、するとおばさんはて多少いらついた素振りでブラインドを下してしまった、日差しは厳しいのでほとんどの人がそうしている、外の景色など興味はないようだ、私はおにぎりも食い終わり洗面所で口をゆすいだ、本当は歯を磨きたかった、デッキからしばらく外の風景を見てから席に戻ってもおばさんの弁当は全然減っていない、ゆっくりゆっくり食っている、車内はいたって静かである、大宮を過ぎたころようやくおばさんの弁当は空となった、おばさんはサンデー毎日を読みだした、私は本を持ってこなかったことを後悔した。


これからの予定について考えた、宿泊先と帰りの切符だけは確保してあるがどこで何をするのかはろくに決めてはいない、15時、強風の影響を受け4分遅れて仙台に到着、そんな気配などなかったので以外であった、しかし風はまだやまぬようだ、新青森から乗り換えの時間が10分弱である、到着が遅れ乗換えにしくじったらどうしようと思うと不安になった、旅はいつも不安である、盛岡を過ぎると居眠りから覚めたおばさんがブラインドを開けてくれた、ブラインドの権限は基本窓際に座った人間のものである、おばさんは車内販売でりんごジュースを買い飲み終えるとまたブラインドをおろしてしまった。


終点までもうわずかとなると車内の乗客は半数ぐらいに減ってしまった、私は勝手に席を移動し3列席窓際に座り窓越しの風景をただ眺めてみた、しかしそれは実に単調なものであった、新幹線から見える独特の景色であったが妙に印象的な山が見えた、16時45分無事新青森に到着、ホームをぞろぞろ歩く中にあの無言のおばさんもいた、心配した乗換えも余裕すらあり安心できたのだが奥羽本線のホームに立った私はぞっとした、寒いのである、小雨まで降っていた、長袖のカーディガンを着てきてよかったと思った、盛岡は快晴であったのに、しかし寒い、こんなに寒いわけがないとも思った。






2015年6月 津軽 1

2015-06-04 13:20:41 | 
五反田本社から東京駅へ


予定を大幅に遅れ会社を出たので東京駅に到着し時計を見るともう13時である、3泊4日の旅となると鞄もそこそこ重い、こんなことは若いころ気にもしなかったことである、周りを見回すとごろごろ引きずる鞄を持った人が圧倒的に多い、わたしも今度ごろごろをあれこれ物色してみるつもりである、13時20分発に乗るので昼食は弁当を買い車内で食うことにした、駅弁は高くろくなものがない、これだけは避けたかったのだがしょうがない、あえんという惣菜店がありここで売っているから揚げ弁当がなかなかうまかったことを突然思い出したので急いで行ってみた、しかし目当ての弁当のみなぜか無いのである、売り切れてしまったのだろうか、結局おにぎり3個とから揚げ3個を買い発車7分前に東北新幹線のホームに到着、kioskでビールと水を買い車内に乗り込む。


13時20分、無事発車。