私、リリーシャ・ヴィ・ブリタニアは皇位継承権第17位を有する神聖ブリタニア帝国第98代皇帝シャルル・ジ・ブリタニアの第三皇女である(原作では第三皇女はユーフェミアであったが、この世界ではリリーシャが第三皇女となっており、その為、ユーフェミア以下の皇女たちの順番が一つずれていた)。
それはともかく、私は主人公ルルーシュの双子の姉で、ルルーシュとよく似た絶世の美少女である(つまりマリアンヌ皇妃にそっくり)。その為、原作を知る者がみれば転生者と疑われるポジションにいるけど実際には3歳の時にリリーシャの身体に憑依して乗っ取った憑依型トリッパーだったりする。といっても、この世界にはリリーシャ以外のトリッパーはいないのでそれを指摘する者はいない。
そんな私であるが憑依してからというもの子供らしくふるまうという演技すらせずにひたすら自己向上に励んだ。要は運動や勉学など己を磨くことに励んだわけであるが、さすがに3歳で帝王学を学ぶのはやり過ぎだったかもしれない。これが普通の親なら気味悪がられていただろう。でも、シャルルやマリアンヌという常識的な親ではなかった為にそんな演技など無用だったのは好都合だった。
ルルーシュとナナリーがユーフェミアと子供らしく遊んだりする中でも私は彼女たちに関わる事なく自分を高めることに没頭していた。これは元が社会人の青年男性だった私からすれば今更童心に帰って子供たちと一笑に遊ぶことに抵抗があったのも理由だったりする。
さて、今さらっと述べたが私は元男である。その為、性転換してしまった為に入浴やトイレには戸惑いを覚えた。それでも幼い今はまだマシだろう。後に生理とか結婚とかを考えるとかなり困る。なまじ前世の記憶があるから男と結婚なんかしたくないし、妊娠出産なんかとんでもない話だ。
こういう性の悩みはTSしてしまったトリッパーに付き物の問題なので私だけでなく、他のトリッパーも各々のやり方で対処しているらしい。
現世の私はルルーシュの双子というだけあって頭の回転がやたら早い。前世は精々二流の大学を卒業できただけの一般人に過ぎなかっただけにこの頭脳の凄さには驚きである。更に身体能力もマリアンヌの娘というだけあってずば抜けていた。正直鍛えれば枢木スザクを超えられるんじゃないのと思える程なのはまさに母の遺伝子の賜物だろう。
しかし、ルルーシュは逆に運動音痴なのは原作を知っていても腑に落ちない。どうでもいいことではあるが、ルルーシュはマリアンヌの遺伝子をどっかに落としてしまったのかもしれない。
さて、問題のマリアンヌ暗殺事件は当初の予定では何とか阻止する予定だった。何しろあの事件のせいで後ろ盾のマリアンヌを失っただけでなく、マリアンヌを守りきれなかった責任を負わされて後援貴族のアッシュフォード大公爵家まで没落してしまい、ヴィ家の皇族が弱者に転落してしまう事になるからだ。弱肉強食が国是のブリタニアでは例え皇族でも弱者になってしまえば悲惨な末路を迎えることになるから、まさに死活問題なのだ。
しかし、三千世界監察軍と接触した事によって別に皇宮での生活に拘る必要はなくなった為に予定を変更した。大体いくら優秀といっても幼い皇女にすぎない私ではどうこうする力はないし、シャルルやマリアンヌにV.V.の企みを警告しても「何故そんな事を知っている」とこっちが疑われてやぶ蛇になるだけである。
その結果、原作通りマリアンヌはV.V.に暗殺されたが、それは仕方ないだろう。どうせギアスでアーニャに入り込んでいるのだからまだ死んでいないわけだしね。
後にアリエスの悲劇とよばれる皇妃マリアンヌ暗殺事件の翌日原作知識を元にジェレミア・ゴットバルトを探していた。ジェレミアはアリエス離宮の警備兵の一人で騎士として勇名をはせたマリアンヌを尊敬しており、この初任務に張り切っていたのであるが、この結果に酷く落ち込んでいた。
「ジェレミア・ゴットバルト」
「リリーシャ殿下、申し訳ありません。警備しておきながら賊の侵入を許してしまいました」
私に気付いたジェレミアは心底申し訳ないと、言わんばかりに頭を下げていた。
「もういいわ。別にお前に非があるわけでもあるまい」
ジェレミアをさりげなく慰めておく。原作で知っていたがやはりこの時のジェレミアは大ショックを受けていたのだろう。その結果、皇族特にヴィ家に対する忠誠心が異常に高まり、後に純血派のリーダーとして軍部の実力者となるわけであるが、ゼロにオレンジ疑惑などというあらぬ疑惑を着せられたあげく、ナリタでゼロ率いる黒の騎士団によって生死不明となるわけである。
彼の不幸はそれだけではなく、バトレーやギアス嚮団に勝手に改造されてしまったり、やっとこさ見つけたヴィ家の皇族であるルルーシュの騎士になったがルルーシュはゼロレクイエムで悪逆皇帝というあらぬ汚名を被って死亡してしまうのだ。
ジェレミアはスザクや黒の騎士団のような騎士を名乗ることすらおこがましい連中と違って立派な騎士であるが故にその不遇さには同情せずにはいられない人物である。というか、ルルーシュの騎士になるより私の騎士になった方がいいと思うほどだよね。まあ、それはそれで原作ブレイクになるけど。
「それより問題はこれからね。私たちヴィ家はこれで終わりでしょう」
「なんと!?」
あまりにも不穏な言葉にジェレミアは驚く。
「私たちの母は死に、後援貴族たるアッシュフォード家も今回の一件で没落するでしょう。そうなると庶民出の母を持つ皇族なんて弱者以外の何物でもないわ」
マリアンヌ皇妃は確かに軍部、庶民、下級貴族の間ではかなりの人気を誇るが上級貴族や皇族の間では庶民出の出身からかなり嫌われており、その血を引く私たちも受けが悪いのだ。マリアンヌが生きていた頃はそれでも何とかなったが、今となっては庶民出の母を持つというのは血筋の悪い皇族というレッテルをはられてしまうデメリットでしかない。
「このままではどこかに人質として送られて開戦の口実に使いつぶされるでしょうね。そうなれば恐らく生き残れないわ」
「リリーシャ殿下」
ジェレミアが気の毒そうな目で私を見る。
「心配しなくてもいいわ。そうと分かっていて手をこまねいたりはしない。ちゃんと対策ぐらい考えているわ。とはいえ、もう皇族としては生きられないでしょうけどね」
私は彼を安心させるべく笑みを浮かべる。実際、皇族として生きられないならその立場を捨てて監察軍に逃げ出せばいいのだ。いくらシャルル皇帝でもこの世界に存在しない人間を人質に送りようがない。確か原作ではルルーシュが数日後にシャルル皇帝に直談判しにいくけど、わざわざそれを待つ必要はない。その前にさっさと逃げるとしましょう。
「それはそうとジェレミア。貴方は皇族に対する忠誠心は未だに健在かしら?」
「このジェレミア皇族方に対する忠義は一欠けらも失っておりません!」
と、力強く答えるジェレミアはむしろ忠誠心が高まっているようにすら感じる。
「なら、もしも私が再び皇族として表舞台に立つときが来たら私に手を貸してくれるかしら?」
「イエス・ユアハイネス。その時は全力を持ってお応えしましょう」
私はジェレミアの返答に満足した。やはりスザクみたいな騎士もどきと違って本当の騎士たるジェレミアは頼りになる。これなら、今後は安心してジェレミアに頼る事ができるだろう。今後の布石を終えた私は早速監察軍と連絡を取る事にした。
かくして、アリエスの悲劇の三日後、第三皇女リリーシャ・ヴィ・ブリタニアの失踪の知らせが皇宮を駆け巡ることになるのであった。
誤字報告ありがとうございます。早速修正しておきました。
個人的には神根島の遺跡とかCの世界とかを監察軍に売り渡す代わりに、ギアス世界征服してほしいw
ご指摘の通りこの『トリッパー列伝 リリーシャ・ヴィ・ブリタニア』は何話か続く予定です。遺跡やCの世界に関しては考えていなかったけどそれもありですね(笑)。
破壊神に対抗する為にトリッパーを生み出してるっていう趣旨も列強というトリッパー植民地があるから薄い
なので、"全く説明せずに転生させて娯楽として該当する人間を適当な下位世界に送り込む事"に当たると思うが、監察軍に接触させたらイージーモードになって娯楽も何も面白くなくなる
確かにトリッパー互助組織がメインの話なのでそういう話ばかりになってしまいますね。まあ、他のSSではトリッパーが単独で苦労する話が多いので、このシリーズのそれがここの特徴といえるかもしれませんが(笑)。
監察軍が進めているトリッパー増員計画は姫神みこを初めとした監察軍に関わりのあるトリッパーが独自に進めている計画で、死神の方でも少しでも多くのトリッパーを確保しておきたいので引き続きトリッパーを用意しているという設定です。
死神としても「トリッパーの用意はそっちでやってね。私達は一抜けたから」というワケにはいきません。