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世界初、原発の見えなかったコストを解明する

2012-03-28 23:58:00 | 騙マスメディア

 

いちいち反論はしないが、まともに聞けないバカバカしさ、次回記事を読んでから、総攻撃反論を行いたい。

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フクシマ後の電力コスト

世界初、原発の見えなかったコストを解明する

日本のエネルギー政策、ゼロから出発するための第一歩

  • 2012年2月2日 木曜日
  • 伊原 智人

 

 2011年10月3日、古川元久・国家戦略担当大臣を議長とするエネルギー・環境会議は、「コスト等検証委員会」を設置することを決定した。これは、東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故を踏まえて、ゼロから見直すことになったエネルギー環境戦略を検討するための第一歩であった。特に、従来、安いとされてきた原発のコストなどを徹底的に検証することは、聖域なき検証の大前提になるという認識に基づくものであった。

 これから、5回にわたり、このコスト等検証委員会が、2011年12月19日にまとめた報告書のポイントについて、当該委員会の事務局メンバーが解説する。但し、解説の内容については、各執筆者個人の文責によるものである。

 第1回は、原子力発電のコストについてである。

 原子力発電については、原発事故の前から、国家が何らかのサポートをしないと成り立たないと言われていた。すなわち、電気料金には表れていないが、国家の負担として、国民が別の形(例えば税金)で負担している「隠れたコスト」があるのではないかという指摘である。

 今回の委員会の委員の一人である大島堅一・立命館大学教授は、原発の発電コストを考える際に、国が負担している原発の立地自治体に支払われる立地法交付金なども入れるべきとの主張を展開していた。しかし、これまでの政府や国際機関が行ってきた原発の発電コストの試算において、こうした「社会的なコスト」といわれるコストを勘案した例は、世界的にみても見当たらない。

過去の試算より5割以上高い

 

 今回の委員会の報告書では、こうした社会的なコストも含めて試算している。具体的には、原発のコストとしては、(1)原発の建設費用などの資本費、(2)ウラン燃料などの燃料費、(3)人件費などの運転管理費といった一般的に発電原価といわれるコストに加えて、(4)事故リスクのコスト、(5)政策経費も含めて試算した。

 その結果は、下限が約9円/キロワット時(注1)であり、上限については示せないということであった。2004年、電気事業連合会が経済産業省の総合エネルギー調査会・電気事業分科会に提出した試算などに基づき、これまでよく言われていた5~6円/キロワット時程度という水準から考えると、下限でも5割以上は高いという試算結果である。

 なぜ、このような結果になったのか。図1をご覧いただきたい。

 2004年の試算と比べて、今回の試算で、どのようなコストが上乗せされているかが示されている。まず、建設費や人件費などの上昇で資本費や運転管理費などが増加した分と、東日本大震災後に示された追加的な安全対策のための費用を勘案して1.4円/キロワット時が増額となる。これに、政策経費ということで、電力会社ではなく、国が支払っている原発関連の費用も、国民が負担しているという意味では発電コストとして計上して、年間3200億円で、1.1円/キロワット時と算出された。

(注1)今回の試算は、それぞれの電源ごとに、2010年に稼働を開始したと想定したモデルプラントを前提に、そのモデルプラントが一定の条件で稼働した場合の発電コストを試算。そのため、稼動年数、設備利用率、割引率などの条件により、発電コストは異なる。原発では、稼動年数40年、設備利用率70%、割引率3%の場合、下限が8.9円/キロワット時。

 さらに、もう1つの社会的コストとして、議論となったのが、事故リスクのコストである。事故リスクのコストとは、今回の事故を受けて、原発について、いったん事故が起こると損害賠償や追加的な廃炉費用など、膨大なコストが発生する。この発生するかもしれないコストについて、何らかの対応を予め取っておく必要があるが、そのためのコストはいくらなのかという問題である。

 この事故リスクのコストについては、委員会においても、特に活発な議論があった議題であった。この事故リスクのコストを試算するにあたり、事故が起きた後の廃炉の費用や、損害賠償費用を算出する前提となる原発事故の影響などについては、技術的な知見が必要であろうという判断で、原子力委員会に協力を依頼することとした。具体的には、原子力委員会で、いったん試算していただいたものをコスト等検証委員会にご報告いただき、コスト等検証委員会でそれらを検証させていただくということとした。

 11月15日、原子力委員会の鈴木達治郎委員長代理(原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会座長)から、原子力委員会での試算結果をご報告いただいたが、その際には、大きく2つの方法が示された。1つは、損害想定額に事故の発生確率を掛けた「期待損害値」といわれるものであり、もう1つが、損害想定額を、原発事業者全員で準備するという「相互扶助方式」といわれるものである。

 まず、前者について、議論がなされたが、コスト等検証委員会では、4人の委員がそろって、前者の期待損害値については、不十分であるとの指摘した。その際の趣旨は、以下の通りである。

原発事故の保険料は算定できない

 

 本来、事故リスクに備えるためには保険が一般的であり、そのための保険料をコストとして見込むのが適当である。その保険料を算出する際、とても低い確率だが、極めて大きな損害が発生するような場合は、期待損害値だけではなく、追加的なコスト(リスクプレミアム)を見込むべきである。

 さらに、今回の福島原発事故のような原発のシビアアクシデントのように、よりまれで深刻な被害が発生する場合は、リスクプレミアムを計上することも困難ということで、このような観点から保険料を算出できないという結論になり、そうであれば、期待損害値を事故リスクコストとすることはミスリーディングになりかねないということで、採用しないこととなった。

 そこで、もう一方の「相互扶助方式」を検討した。相互扶助方式は、シビアアクシデントが生じた場合の損害を、原発事業者全員で負担しようという考え方によったものであり、損害想定額を、一定の期間で積み立てると仮定した場合の積立金を、事故リスクコストとしてカウントしてはどうかという考え方である。議論の結果、疑似的な保険制度として、このような考え方で、事故リスクコストを出すことはありうるということになり、この委員会では、損害想定額を40年間で積み立てるという場合の費用を事故リスクコストとすることになった。

 なお、損害想定額については、図2をご覧いただきたい。原発のシビアアクシデントの際の損害想定額を算出するにあたり、過去の例としては、世界でも、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島しかなく、今回の試算にあたっては、福島を参考に算出することとした。
 原子力委員会では、東京電力に関する財務・経営調査委員会が推計した追加的な廃炉費用と損害賠償額を基に試算した(図2の紫色部分)。コスト等検証委員会では、それに加えて、行政経費、除染費用の一部、損害賠償の基準の変更による増額分などを追加して算出した。

 しかしながら、ここで、(1)含まれていない費用があること(図2のオレンジ色部分)、(2)今回の相互扶助方式を一種の保険として捉えた場合、事業者は十分な余裕をもって事故リスクに備えるべきとの考え方から、これはあくまでも下限値であるとされた。

 上記の議論の結果、原発の事故リスクのコストは、割引率3%、設備利用率70%、稼動年数40年の場合、0.5円/キロワット時が下限であり、上限は示せないこととなった。

使用済み核燃料の再処理コストは?

 

 原発のコストについては、しばしば、バックエンドの費用はどうなっているのかという質問を受ける。原発のバックエンド費用とは、発電した後に出てくる使用済みの核燃料の処理にかかる費用のことである。

 日本では、バックエンドについては、核燃料サイクルということで、再処理という工程を経て、MOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料という形にして、原発でまた使うという前提で試算されてきた。今回は、この点についても、事故リスクのコストと一緒に、原子力委員会に協力を依頼したが、その際に、様々な方策の試算をお願いした。

 その結果として、原子力委員会からは、大きくわけて3つの方策を前提とした試算結果が提出された。1つが使用済み核燃料全てをすぐに再処理して、それでできたMOX燃料をまた発電に使うというサイクルを前提とした「再処理モデル」(図3)、もう1つが、「直接処分モデル」といわれる方策で、使用済核燃料全てを地層処分という形で、一定期間、地上で冷却した上で、地下深くにそのまま埋設するという方法である(図4)。3つ目は、半分は20年貯蔵後、再処理し、残りの半分は50年貯蔵後、再処理をするという「現状モデル」である(図5)。

 それぞれのコストを比較した結論としては、再処理モデルは、直接処分モデルよりも、約1円/キロワット時高く、現状モデルはその中間的に位置するというものであった。ただし、この試算は、モデルプラントの試算であり、かつ、現在の日本の実態に必ずしも合致していない前提の部分もあることから、今後、日本におけるバックエンドの選択肢の議論がなされる場合には、我が国の現在の状況を前提とした具体的なシナリオをもとに試算がなされるものと考えられる。

 今回、原発のコストについて、世界的にも前例がない事故リスクのコストや政策経費という社会的コストを加味した形で試算をしてみて、他の電源と比べても、やはりその試算の難しさを認識せざるを得なかった。特に事故リスクのコストは上限が示せなかったように不確定要素が多い。ただし、少なくとも、試算のフレームワークを示せたことは意味があり、今後、さらなる検証を可能にしたことは評価されるべきものと考えている。

次回に続く)

このコラムについて

フクシマ後の電力コスト

 東日本大震災と東京電力福島第1原子力発電所の事故で、日本のエネルギー環境戦略はゼロから見直すことを迫られた。政府はその第一歩としてエネルギー・環境会議に「コスト等検証委員会」を設け、従来、安いとされてきた原発のコストなどの徹底検証を進めてきた。同委員会が、2011年12月19日にまとめた報告書のポイントについて、事務局メンバーが解説する。但し、解説の内容については各執筆者個人の文責によるものである。

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著者プロフィール

伊原 智人(いはら・ともひと)

内閣官房国家戦略室企画調整官

 


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