原発事故被害者から東電提訴の米兵に感謝の声
これは第2の“トモダチ作戦”になるのか。
4日に経産省前の脱原発テントひろばで開かれた決起集会で、福島の女性から「米兵が東電に賠償請求をしてくださったのはありがたい。『被ばく』ということが、このことで取り上げられたことに感謝したい」との発言があった。
決起集会は、12月28日の本欄に書いたように、政権交代による“テント攻撃”への警戒を強め、対抗すべく行われた。折しもこの日、福島県産品のブランドイメージ回復に向け、県の補助による風評払拭の取り組みが始まると地元紙が報道。前出の女性はこれに「とんでもないことが始まろうとしている」と憤りの声を上げた。「風評の払拭」を言葉通りに受け止めれば聞こえはいいが、チェルノブイリ事故なら避難の対象となった放射線量レベルの区域にいまだ多くの人が住まわされている福島の現状に怒る人々からみれば、地産地消の推進は、県民の封じ込めにつながるもの。「帰還が進められ、(避難の)住宅手当も切れる。私たちは収容所状態」。そこに昨年末、米兵8人が被ばくを理由に東電を訴えたから、被ばくに悩む県民らへの追い風となった。
報じられた米兵の提訴は、東日本大震災発生直後の「トモダチ作戦」に従事した原子力空母の乗組員8人が東電を相手どり、総額1億1000万ドル(約94・6億円)の損害賠償のほか、「懲罰的賠償」として3000万ドル(約25億8000万円)を求めたもの。CNN放送(日本語電子版)によると、8人は原発事故による放射能の影響について東電が虚偽の説明を行ったことで被ばくしたとしている。1人は直腸から出血があり、ほかの7人には甲状腺の問題があるという。
短期間のトモダチ作戦で具体的な放射線被害が生じたとしたら、当時より原発からの放出ベクレルは下がっているにしても、避難区域外で線量が高めの区域に住み続けてきた住民のリスクはより深刻かもしれない。
東京電力福島第1原発事故では「福島原発告訴団」も結成されて昨年、二次にわたって東電を刑事告訴・告発している。その人数は1万5000人弱にもなる。ほかにも刑事告発があり、捜査が行われている。「立件は難しい」との検察側の見方がしきりに報じられる中、爆弾のごとく投下された米兵による巨額訴訟。東電はトモダチを相手に徹底的に争うのか。福島県民もその行方を注視するだろう。
1986年入社。ゴルフ担当を経て89年からテニス、ラグビー、アメリカンフットボール、アマチュアレスリング、陸上、水泳、サッカーなどの取材に携わった。五輪は夏季2回、冬季3回を現地取材。2001年に運動部デスク、06年から文化部で社会面デスクを担当後、08年から両部の専門委員。早大卒。
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