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田舎ぐらし(129)

 ー ちょっといい話 ー
 
 


  明治通りが橋になって山の手線に架かっているあたりだった。向こうから通りを横断していたおばあさんが途中で転んだ。
なにしろ、明治通りである。車はひっきりなしに来る。「危ない!」と思ったその時、橋を歩いていた学生風の男3人が駆け寄り、おばあさんを抱きかかえるようにして歩道へ運んだ。20数年前の話である。

 あれから幾星霜、ここ田舎は人が少ないせいか、思わず顔がほころぶような光景を目にすることもない。反対に厭な出来事はちょくちょくある。例えば休日公園に行く。狭い通路で若い者に出くわす。譲ってもらったことは一度たりとてない。
 こちらも虫の居所が悪い時もある。ある時、向こうからアイスクリームを食べながらやって来た若い女3人連れとぶつかりそうになった。大声で叱ってやったら、なにやら悪態をつきながら脇によけた。

 昔は、年長者や重いものを持った人には道を譲りなさいと教わったものだ。今、そういう教えが残っているのは台湾くらいなものだろう。

 やれやれと思いながら新聞を開いたら、読者欄の投稿が目がとまった。内容はスーパーのレジで重そうなかごを持って並んでいたおばあさんに順番を譲った折の話である。

 その人がレジを済ませてカウンターに行くと、居合せたおばあさんが言った。「さっきはありがとうね。わたし最近つれあいを亡くしましてね。朝起きてこなかったんですよ。・・・葬式が終わってからわたし誰とも話をしたことがなかったんですよ。でも親切にしていただいたらお礼を言わなくちゃね。」こう言うとポロポロと涙を流した(産經新聞 2023.4.19 朝晴れエッセーより抜粋)。

 世の中まだまだ捨てたもんじゃないと思う。ただし、投稿者は70代の男性である。
 

 

 

 

 
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