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沈黙

2024-03-28 07:28:48 | メッセージ
ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに語ることができ、ほんとうに黙することのできる者だけが、ほんとうに行動することができる。- キルケゴール -

音楽のゲネラルパウゼが効果的な場面が現実の人間関係にもあります。

人間関係は反復により強化されていますが、反復を一旦遮断するのが沈黙です。

人間関係だけではなく、学問においてもこれまで優位を保っていたある分野の偏りが顕著になったとき、沈黙をキーとして遮断し、優位を保つアルゴリズムが見受けられます。

沈黙は情報の受け手に、送り手が出した情報が染み込むの待ったり、感情の反応スピードのギャップを埋めたり、熟慮を促したりする効果をもたらします。又、沈黙というツールは相手に配慮する優しいツールにもなるし、相手をコントロールする悪意のツールにもなります。

送り出した情報が複雑で、かつ、適切な質と量が確実に伝達できていれば沈黙は有効ですが、その逆、つまりシンプルで質や量が不足する伝達となってしまっている場合、沈黙はギャップを広げるだけの結果となります。

また、双方の自発的な沈黙と一方からの強制による沈黙とでは性質が異なります。強制による沈黙には、その状態の保存に何らかの強制力を必要としますが、暴力によらない場合は、通常、モデレートを担う者の力が強制力となります。

沈黙が効果的なのは熱いパッションがあって初めて効果が出ます。パッションを受ける側からすると、“何故、黙っている?”と問いかけずにはいられない空気感、“そんなに想いが強いのなら素直にぶつければいいじゃないか!”という焦燥感などの感覚に捕らわれます。人間は複雑な生き物なので、大人の場合、ストレートに表現すると逆効果になる場面が多々あることもよく心得ていますので、時として回りくどい態度を取りますが、その回りくどさが伝わるには、受け手の高い感受性(≒頭の良さ)を必要とします。

古代ギリシャにおいてレトリックがもてはやされていたところに無知の知を説いたソクラテスや、カントにより花開いた西洋哲学に水を指したウィットゲンシュタインは沈黙の偉大な力を具現化した哲学者です。学問の世界でなくとも、それぞれの人生において、勇気をともなう沈黙こそ力を持ち得る沈黙であり、沈黙者の周りの人間に影響を与え行動を促し沈黙の意図に沿った結果を生み出します。又、長い沈黙には、人知れず努力を積み重ねることができる貴重な機会が与えられ、沈黙を破った時にその成果が花開くというドラマティックな展開が待っています。いずれにせよ沈黙にはダムのようにエネルギーを蓄える機能・効果があり、これを賢く利用できる人は大きく成長することができます。

他方、沈黙のメリットを最大限に享受するには、人間観察を楽しめるか否かが、好奇心と余裕の有無によって大きく左右することにあるという感度を磨く必要があります。心を開いて沈黙しないと、このメリットは全く享受できません。心を開いた沈黙を本当にしている(してきた)人の稀に発する言動は人を惹きつける力を持ちます。
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