一昔は各私鉄その生い立ちからそれぞれ個性あふれる車輛が走りまた国鉄や他の私鉄から譲渡された車輌が大事にされながら第二の活躍をみるのが目的で訪れた事もあるが今の時代、それは望むべくもない。
単純には採算の取れない零細路線が何故今でも残っているのか、何よりも何の縁もゆかりもない普通の地方の村や町を歩いて見る機会を得たり生活路線としての機能など一昔の鉄道マニアとしての自分とは少し違う楽しみを探した。
ひたちなか海浜鉄道
茨城県には多くの個性的な私鉄がはしっていて大半は廃止の前までに訪れたがこの線だけは訪れる機会がなかった。上野より快速で約2時間半常磐線勝田駅より阿字ヶ浦駅9駅14・3k 以前は茨城交通湊線として運営されていたが今は自治体と第三セクターとして別会社となって存続している。過去茨城交通は他に水浜線、茨城線などを有していたが廃止となりこの湊線のみが残り現在に至っている。
始発の勝田駅 かつては当時の国鉄とホームを共有し直接国鉄に乗れていたことが構造上伺える。そのホームを今は半分にに仕切られ、朝の通勤時とはいえたった一両の小型車両によくぞこんなにと仰天するほどの乗客が降りてきた。
日工前駅 その昔は日立工機の朝晩一本が止まる専用駅だったそうで、今は宅地開発も進み通勤通学客も多く利用されているという。歯車、ドリル、チェーンソーが、駅名表示の中に組み込まれている。
金上駅 駅名より縁起の良い駅として人気があり特別切符も販売されているという。駅前より陸自勝田駐屯地、同施設学校(工兵)などがあり、航空機、特殊戦車が駅名表示に組み込まれている。
田んぼの中にポツンと周りに何もなく秘境駅としても知られている。ただしこの一帯は弥生時代からの由緒ある稲作地帯で、周辺には貝塚や古墳など見どころが多い。駅名表示には鉾と古墳が描かれている。
那珂湊駅 那珂湊市は勝田市と合併しひたちなか市となったが那珂湊は駅名として残っている。この線唯一の有人駅で機関区など有する。ここは古くは舟運で栄えた歴史ある街となっている。駅名表示にはこの線で有名になったステンレス製車両とその台車が組み込まれて描かれている。
多くの乗客はここで降りる。
那珂湊駅は築100年の風格ある駅で関東の駅百選にも選ばれている。列車を降りると駅長室がありそして出札口に向かう当時はどこにでもあった雰囲気がここにはそのまま残る。
ホームは6、7両は有に止まれる長大ホームもそのまま大事に残されている。
三木鉄道から来た車両。ミキ300-103として型式も車番も塗装もそのまま使用されている。イベント列車などに使われているようだ。
北海道(留萌鉄道)から来た車両。正面の吹雪を飛ばす旋回窓はそのまま残る。
正面に長崎の島原鉄道と同じひげ塗装をした同じく留萌鉄道から来た車両。北からきた車輌に南の鉄道の施しをしたコラボがおもしろい。
日本初のステンレス製気動車として有名、試作的に開発し、海浜に近い条件の湊線に入線した。この正面顔が駅の表示文字に入っている。今は車体だけが市民団体の保有で車両基地の端に銀色にお化粧しおかれている。
那珂湊港 駅から徒歩で10分ここはお魚市場として有名でたくさんの観光客でにぎわっていた。広大な敷地に多数の店が並び新鮮な魚が驚くほど安値で売られていたが、ぶらり旅の自分には買うことができなかった。
殿山駅 ひたちなか市の花「ハマギク」と、「ケイトウ」が描かれている。
平磯駅 平磯海水浴場に設置されているクジラと太陽観測センターの電波望遠鏡。
磯崎駅 茨城県は全国一の干し芋の生産地、その中でもこの一体はその中心地。私自身幼児期育った静岡県も干し芋が盛んでおやつはもっぱら切り干しといってよく食べた記憶がある。聞けば茨城の干し芋は明治期に静岡より伝授されたという。
阿字ヶ浦駅 温泉と釣り針、海藻、あんこうが盛りだくさんに描かれている。
終着駅阿字ヶ浦駅は簡素化され無人駅となっている。昔のSL時代の給水塔が遺構のように残っている。
この車両は自社発注の新車で色も含め好ましい車両。この型式は3710型でなんと湊(ミナト)にちなみ設定された。同系が3両ある。
これも3710型の仲間だが落書きのオンパレード。海水浴客と思われる若い客がたくさん降りてきた。
阿字ヶ浦駅舎
かっては何と上野駅から直通の海水浴列車が乗り入れた。当時の長編成列車に使用された長いホームや機関車の機回り線の雰囲気がまだ残っている。さらにこの先海浜公園まで鉄道を延長する話しがあるとの事。夏シーズンに限り駅前より国営海浜公園への無料バスが設定されているが私が見た時間帯では殆ど利用する人がいなかった。しかし海水浴シーズンには道路は渋滞するようで線路延長の話もまんざらではないと思った。勝田駅はJRとの連絡線が今でもきちんとつながっていた。
この鉄道はデータでは年々利用客が減ってきてはいるがそれなりの利用客がある。古い車両を使ったイベント列車を設定したり、また民間の活性化支援も含め努力の様子が伺われマニアの関心も高い。楽しい謎解きのような駅名表示のデフォルメもそのその活動の一つ。
一方私としては本来無理に作られた盛り上がりでなく、自然体で利用される姿が好きだが、この鉄道には私の予想以上にその片鱗が伺われた思いだった。
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