本の紹介させてください お願いします

主に理工学系の専門書、大学受験参考書の紹介。
ジャンル問わずに紹介もする予定。
備忘録です。

イプシロン・デルタ論法完全攻略

2022-01-31 09:04:34 | 日記

「イプシロン・デルタ論法完全攻略」  原惟行 松永秀章 著
世に言う,数学好きが大学に入って数学を嫌いになってしまう要因の1つであろうε-δ論法を攻略してしまおうという本.
私の中でのε-δ論法は,明らかに連続な関数を不等式を用いてεより小さくなるδを求めてからεより小さいことを示すという,何とも本末転倒というかまどろっこしいなぁという感想しかない.
実際に解析学の授業や本の中ではさらりと終わってしまって,概要はなんとなくわかったが実際にどういったところで必要になってくるか,わからずに終わってしまうような概念だと思う.
ε-δ論法を使い具体的に,解析学の重要な命題を丁寧に証明し,説明してくれるこの本はまさにε-δ論法の攻略本である.
試験対策にももちろん使えるが実際はここまでは必要ないと思う.
私が気に入っているのは,証明方法を考える必要がない(ε-δ論法での証明にしぼっているので),ε-δ論法を悩筋プレイのようにゴリゴリとでき,そしてヒントとなる考え方,目標が書かれておりそこに突き進めばいいという明朗さ(簡単というわけではない)がちょうどいい.

目次(章だけ)
第1章 記号論理
第2章 数列の極限
第3章 関数の極限
第4章 関数の連続性
第5章 関数の一様収束

群・環・体 入門

2022-01-22 21:24:58 | 日記
 
 代数学の教科書,参考書はたくさんあるが,入門書としておすすめしたい1冊.
 新妻弘さんと木村哲三さんの「群・環・体 入門」
 抽象的な概念に(数学で)初めて出会った本だと思う,位相というものにもそのあとすぐに出会うのであるが.
 先に紹介した石村園子さんの「すぐわかる代数」に比べると定義,定理,その証明というながれは変わらないが,具体的な具体例は例と問題を通して書かれていてしっくりするまで少し頭を使う
 とはいえ,群を理解するための内容は,やさしく必要十分に書かれていると思う.その反面,環・体に関してはイントロダクションで終わっているように感じる(深掘りしすきずいいとも思う)
 がロア理論を理解するための内容は書かれているので代数学に興味がある方または整数論に興味ある方の入門書としておすすめしたい.

第1章 整数
§1 基本的な性質
§2 合同式
§3 オイラーの関数,メビュースの関数

第2章 群
§1 群の定義と群の例
§2 部分群, 一般結合法則
§3 循環群,群の位数,元の位数
§4 部分群による類別
§5 正規部分群,剰余群
§6 準同型写像,準同型定理
§7 直積

第3章
§1 環
§2 還のイデアル・剰余還・有理整数還ℤ
§3 環の準同型写像, 準同型定理
§4 多項式還
§5 商隊,一意分解聖域
§6 有限体

すぐわかる代数学

2022-01-21 11:58:04 | 日記
 
本屋で見つけ, このような本も出しているんだなぁと思い購入.
 石村園子さんの『すぐわかる代数』 
 石村園子さんは, もとは千葉工業大学で数学を教えておられ,工業系の数学の本を数多く執筆, 出版されている.
 今では,マセマ出版でも出ている大学生向けの参考書に当たる.
 まだ, 2000年代初期ではマセマ出版は高校生用の参考書のほうが多く, 大学生向けの参考書はほとんどなかったと記憶している.
 石村園子さんの書かれる本は大学数学初学者向けのものが多く, やわらかい文章で,穴埋め式の参考書兼問題集で使われた方も多いのではないのだろうか.
 内容は, 石村園子さんの本全般に言えることだが, 具体的な具体例(数学書などではいろいろな都合でよく「自明」で終わってしまうことがある.) 例題や演習を通して理解を深めていくというものである.  この流れは, 初学者にとってはとても助かる. 新しい抽象的な概念であっても具体例を交え「定義」「定理」を理解していける.
 なぜこの本を紹介したかというと, もともと工学部向けの参考書を多く執筆されている方ですが, 「線形代数」ではなく「代数」(工学部よりは理学部寄りの内容)の本を書かれているのかと驚いて購入した次第である(「線形代数」と「代数」は似て異なるもの)
 「代数学」の入門書はなかなかないのでお勧めの1冊に上げたい.


内容
第1章 集合と写像
§1.1 集合
§1.2 写像
§1.3 集合の濃度

第2章 同値関係と類別
§2.1 同値関係
§2.2 類別
§2.3 整数における剰余類

第3章 群
§3.1 2項演算
§3.2 群の定義
§3.3 対称群
§3.4 巡回群
§3.5 加法群
§3.6 部分群
§3.7 剰余類
§3.8 正規部分群
§3.9 準同型定理

この本では,群における準同型定理(基礎的な群論での1つの到達点,または出発点)までになる.
過不足なく書かれているかといわれるとそうではないが,群の大事な部分は抑えられていて,この抽象代数学の最初の1冊目としては非常におすすめできる.