ねじまき鳥のねじまき

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大山阿夫利神社(おおやまあふりじんじゃ)@神奈川県伊勢原市

2007年03月21日 | 神社・仏閣
神奈川県の丹沢にある大山阿夫利神社は、関東有数の修験道の聖地である。

創建年代は不明、崇神帝の頃の創建とも言われるが、ハッキリとは分かっておらず、奈良時代に東大寺を開基した良弁が、752年にこの地を訪れて阿夫利神社の神宮寺として、現在大山の中腹にあり不動明王で有名な大山寺を建立したと言われている。

祭神は大山祇大神(おおやまつみ)。愛媛県の大山祇神社にルーツを持つ、山と海を統べる神で、別名は「和多津見(わだつみ)」。静岡県の三島大社の祭神もこの大山祇大神である。

3月21日、休日を利用して、この大山阿夫利神社に行ってきた。

首都圏からほぼ2時間くらいの場所に、この大山はあるが、クルマで行けるのは麓までで、山の中腹にある大山阿夫利神社下社社殿には、ケーブルカーを使って登る。山麓の参道には、多くの店が軒を連ねているが、豆腐を扱う店が多いのが特徴である。
この丹沢という場所は相模湾から吹く湿った風がぶつかり、非常に多くの雨が降る場所で、それがゆえに古来から水の豊富な場所として崇められてきた。「阿夫利」という名は、「雨降り」から転じた名前であり、この大山阿夫利神社も水神、もしくは火消しの神として崇敬を集めてきた。
水が豊富なこと、そして精進的な意味合いから、この参道周辺の豆腐料理が発達してきたのではないかと思われる。

ケーブルカーに乗ると、途中で大山寺の駅に止まる。今回は時間の関係で行けなかったが、大山寺も上述したように、関東地方ではありがちな不動明王を本尊とした寺であるが、関東有数の修験道場であり、かつては近くに多くの僧房・宿坊が軒を連ねていたと言われる。

さらにケーブルカーに乗ること5分程度。標高680メートルの下社の駅に着くと、目の前がもう大山阿夫利神社である。現在の社殿は、昭和の時代に改築されたものだとのことで、非常に新しい。また、この社殿には、地下に入れるトンネルが脇にあり、その中で大山から湧き出る清水を口にすることが出来る。

ただし、ここはあくまでも参拝者用の下社でしかなく、本当はここからさらに600メートルほど登った、大山の山頂に本殿が存在する。御神体は霊石であるとも言われているが、はっきりしたことは分かっていない。
また、この大山の山頂からは、創建年代の古い神社では珍しいことではないが、縄文時代(紀元前1000年ごろ)の土器や祭祀道具が多数出土し、古来より聖地として崇められてきたことが証明されている。

社殿から左手に進むと、小さな鳥居と階段があり、そこから山頂に登れるようになっている。今回はすでに下社に参った時点で3時を過ぎていたので、山頂に行くのは断念したが、機会があれば必ず行ってみたいと思う。

帰りに、山麓の豆腐屋で豆腐料理を頂いた。
見た目がいかにも観光地にありがちなお店であったので、全く期待せず入ったのだが、なかなかどうして、どの豆腐料理もかなり美味しかった。特に田楽が素晴らしい。

大山からの帰り道、道ばたに古びた神社を発見し、立ち寄ってみたのだが、この神社もまたくせ者であった。比比多神社という神社だが、祭神は木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)、大山祇大神の娘とされる神である。
間違いなく、大山阿夫利神社と抜き差しならぬ関係を持った神社であるが、実はこの神社を訪れた際、神主の方が事細かにこの比比多神社と大山阿夫利神社にまつわる伝説を聞かせてくれた。この話はまたいずれにしたいと思う。

ちなみに静岡の三島大社も、富士山を挟んで西に移動すると、富士山本宮浅間神社があり、この祭神も木花咲耶姫(コノハナサクヤビメ)である。このふたつの神社にも浅からぬ因縁があるのだが、それもまた今度にしたい。

かつては大山信仰・大山講と言われ、多数の信者が宿泊し、そして山頂を目指したこの地も、今は観光客も減少し、すっかりさびれてきている。
しかし、まだそこに残る歴史の息吹は、確実に感じられた一日であった。