ねじまき鳥のねじまき

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福田首相誕生前夜

2007年09月18日 | 所感
安倍首相の突然の辞任、そして入院を受け、急遽行われることになった自民党総裁選において、当初本命と伝えられていた、麻生太郎・自民党幹事長を抑え、森/小泉両政権で官房長官を勤めた、福田康夫氏の優勢が伝えられている。

福田氏は1936年生まれの71歳、当選6回、父はあの元首相の故・福田赳夫氏で、父の地盤を受け継ぎ、群馬県では絶対的な政治基盤を持つ。TVやワイドショーなどで連日報道されているので、既に有名な事実となっているのかもしれないが、早稲田大学卒業後は、丸善石油(現・コスモ石油)でサラリーマン生活を送り、その後父の説得により、代議士に転身、その後森首相時代にその高い調整能力を買われ、官房長官に抜擢。その後の小泉政権でも官房長官を務め、4年近い官房長官在任の期間は戦後最長の記録である。

この森氏・小泉氏の信任を得ていたことからわかる通り、福田氏の官房長官として重要な資質である「調整能力」は、両氏から高く評価されていた。その意味では、今回の自民党総裁選において、小泉流トップダウン政治を正統的に継承しようとした安倍・麻生氏に対するアンチテーゼ票が福田氏に集まるのは、非常にわかりやすい図式であると言える。
現状の各マスコミの票読みを信ずる限り、自民党総裁選においては福田氏の圧勝は間違いなく、安倍氏はもちろん、麻生氏についても集まる票数によっては、その政治生命の命脈が断たれる可能性が高い。

福田氏は、父・赳夫氏の政治的地盤は引き継いでいるものの、政治的スタンスはかなり違う。非常に対照的なのは対中国政策であり、赳夫氏は対田中角栄への牽制もあったのかもしれないが、角栄の中国重視路線に対し、台湾重視路線を主張し、その流れが森氏・小泉氏・安倍氏の町村派の中心的思考のひとつとなっていく。対して康夫氏は、角栄氏に近い対中国協調路線であり、対米追従というよりも対アジア重視の外交政策を信条としている。
また、国内政策でも父・赳夫氏や小泉氏などが主張していた財政均衡路線よりも、近々の演説ではやや積極財政的な政策を主張している。その意味では、一見「古い自民党」を体現しているようにも見えるが、小泉的な新自由主義的政策が実行に移され、かなり限定的ではあるが一定の成果が認められたこと、またいわゆる「古い自民党」を支えた支持層が小泉氏により完全に「破壊」されてしまったことで、自民党総裁を正統的に受け継ぐ福田氏が取れる選択肢は既に限られており、解散含みの国会運営と取れる政策的な手だての少なさから、次の内閣はどうしても「選挙管理内閣」的な性格を帯びざるを得ないと思われる。

また、この総裁選において情けないのが、「小泉チルドレン」と呼ばれる自民党1年生議員の右往左往ぶりである。もうあまり時間が無いと思われる次の選挙に向け、自身の保身のため政策論争を抜きにして小泉氏擁立を目指すが、擁立の望みが絶たれると、堰を切ったように福田支持にまわる。(佐藤ゆかり氏などの動揺を必死で押し隠した「福田氏と似ている部分がある」という発言には、哀れさすら感じられた)この主義主張の無さこそ、彼らの政治家としての資質のなさを示すものであり、次の選挙では福田氏が総裁になろうと麻生氏が総裁になろうと、彼らには茨の道が待っているだろう。

茨の道は自民党本体も同じだ。福田氏も例え総裁になったとしてもかなりの高齢であり、次の総裁候補になれる人材ももはや党内には見当たらず(全て小泉氏により野に下った)、次の選挙を経てもし自民党が政権を失うようなことがあると、本当の意味での政界再編が起こる可能性が高い。
町村派=小泉的な新自由主義的な路線か、小沢民主党的な「第三の道」的な路線か、日本が取るべき道を選ぶ時期が迫っている。今回の騒動は、そのどちらの政治路線を選ぶかを国民に迫る前段階として、非常に良い影響をもたらしたとも思えるし、またあまりのその動揺から、小泉チルドレン的な「政治屋」たちのあぶり出しにも「成功」した。来るべき総選挙に向け、我々も準備を始める時が来ているのかもしれない。