

一本ワイパーがなぜEクラスの伝統なのかはよく知りませんが、1本ワイパーの最大の利点は「空力特性」にあります。レーシングカーのワイパーがそうであるように、中央から延びる一本のワイパーで左右対称にふき取るのは最も空力特性が良いとされています。空気抵抗が少ないので高速でもワイパーが浮き上がりにくいのだそうです。
「で、実際どうなのよ?

じゃ、ほかにメリットは?




てなことで、メリットはあまりないっす

じゃ、デメリットは?っていわれると、これは結構あるんです・・。


でかい一本ワイパーで左右に雨滴を飛ばしまくるので、歩行者が横方向にいる時にワイパーを始動すると思いっきり水をかけることになってしまいます。意外とこのシーンは多いです。

このワイパーはかなりでかく重いうえ、動きが速いので、停車時にワイパーを動かすと車が少し揺れるほどです。

ワイパーゴムの劣化が、心なしか早い気がします。

これはユーザにとっての問題ではありませんが、結構かかっているのではないでしょうか。コスト対効果はほとんど期待できないと思うんですよねぇ。たぶんこれが「廃止」の理由ですね。
なお、通常、一本ワイパーの最大の弱点はふき取り面積です。一本ワイパーでは、支点を中心とした半円しか拭き取れないわけなので、ドライバーから見て特に左右上部の視界が悪くなるのが難点です。
これをW210のワイパーはかなり凝った技術で解決しています。具体的には、最下点と最上点ではワイパーを縮め、左右上部ではワイパーを伸ばすという高度な制御でふき取り面積を最大化しているのです(図参照)。つまり、一往復ふき取る間に、ワイパーアーム自体を、縮→伸→縮→伸→縮 →伸→縮→伸→縮(これで一往復)と伸縮しているのです。

すごいっしょ?これ。僕も最初は感心しました。そうまでして一本ワイパーにこだわる意味があるのか?と誰もに思わせる凝りようです。こんな動きをしても絶対にワイパーが壊れてはいけませんから、ワイパーアーム・モーター部はかなりゴツいつくりです。
これってある意味「究極のムダ」なこだわりであり、ラテン系のクルマではなく「実用のメルセデス」がこんなこだわりをするところが素晴しい。なので、個人的にはW210で最も好きな点のひとつです。
残念ながらそのこだわりも、開発陣がメルセデス上層部から「いいかげんにせぇよ!」と言われたのかどうかは定かではありませんが、W211からは残念ながら通常の2本ワイパーになってしまいました。
また一つ失われていく「伝統へのこだわり」のお話でした。

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