
耳の神様をお祀りしているところは水神様をお祀りしている川のすぐ上の小高い山にあるという。
母が子供の頃、木苺やイタドリを取る時、祠の横を通ったことを思い出したので耳の神様をお祀りしていた場所の記憶を辿って祠があったところへ行くことにした。
田舎に着いて、あの辺りだと母が言うので上がってみようと道なき道を山の側面からよじ登ろうとしていた丁度その時、道案内するかのように従兄弟が来て、耳の神様はここから上がると良い、草を刈りながらでないと行けないかもしれないと近道を教えてくれた。従兄弟も最近は上がったことがないという。
私は草刈りハサミを手に草を刈りながら倒れた木の下をくぐり抜けたり跨いだりして、その教えてもらった竹藪の中を歩いて耳の神様がお祀りされていたところに辿り着いた。
そこには誰も来なくなって哀しくて寂しそうな石の扉があるお堂がひっそりと置かれてあった。その空間全体から寂しさと哀しさが溢れていて可哀想で申し訳なくて涙が出そうになった。