ベナンでの信任状捧呈が一日延びたので、19日に空いた時間に、ザンザンドゥ内相に挨拶しておこうと思った。内相というのは、警察組織を指揮している。つまり、市民の安全を司っている。ベナンでは、青年海外協力隊員が各地で40人活動している。また、日本人旅行者も時折訪れる。何かあったときに、しっかり警察から支援してもらう必要があるので、やはり第一に、ちゃんと挨拶をしておくことだ。
面会の約束を求めたら、午後になって18時に来てくれという連絡が来た。それで、18時5分前には、内務省の大臣室に到着した。秘書が、申し訳ないが大臣はまだ会議から戻れないので、しばらく遅れるという。こちらは挨拶が出来ればいいので、急ぎではありません、ゆっくりお待ちします、と応える。
ところが、そのゆっくりが長くなった。30分経っても大臣が戻る気配はない。警察の制服を着た人たちが、順に出入りして、秘書のところに書類を届けている。秘書は先ほどから、聞くごとに「あと5分」とばかり言っていて、あてにならない。さすがに、50分を越えた頃には、待たせるのにも限度がある、後の予定があるのでといって今日のところは引き揚げようかな、と考えていた。
そうしたら、ザンザンドゥ内相が秘書官たちを連れて戻ってきた。19時5分前だ。たっぷり1時間待たされたわけであるが、閣僚というのは忙しくてこういうこともあろう。私としては、挨拶という目的を達することが出来るなら、それでいい。私は大臣室に通された。ところが、大臣は、私を応接椅子に座らせたまま、執務机について電話をかけている。そして、秘書を呼んで、何やら書類に筆を走らせはじめた。客人を横において、先に仕事とは。さすがに、私はだんだんいらいらしはじめている。
大臣は秘書に指示をした。何をするのか、お客さんにコーヒーでもお出ししてと言うのかと思ったら、なんとテレビを付けさせた。19時のニュースが始まったところである。画像にアナウンサーが映る。失礼にも程がある。私はちゃんと前もって約束を取り付けて、ここに来ている。それを1時間待たせた上に、私より仕事、さらにはテレビニュースを見るほうを優先するとは。
あきれて席を立とうとしたとき、アナウンサーがトップニュースを報じはじめた。
「今朝、ベナン再生党の事務所が、何者かにより襲撃されました。事務所にいた2人のうち、一人は事務所の外に引きずり出されて手足を縛られ、一人は棒で殴られて大怪我をしました。」
ええっ、と今度は私の目が、テレビに釘付けになる。ベナン再生党といえば、最大野党。2006年の大統領選挙で、ヤイ大統領の対立候補であった、ソグロ元大統領の党である。そしてソグロ氏は、2011年の大統領選挙でも、おそらくヤイ大統領に挑戦する大統領候補となると考えられる人、つまり野党の最重要人物だ。その人の事務所が、襲撃されたとは。ソグロ氏は、事務所を留守にして無事であったが、それでも大事件である。
引き続きテレビが報じる。
「ザンザンドゥ内相は、直ちに現場に駆けつけました。ソグロ元大統領とともに、殴られて怪我をした事務所員をお見舞いしました。金銭やコンピューターなどは盗まれておらず、襲撃の目的は不明です。警察の捜査が待たれます。」
そして、ソグロ元大統領と並んで、私の目の前にいる大臣が、テレビに大写しになる。
「このような暴挙が、この民主主義の国にあってはならない。警察は、全力をあげて犯人を逮捕する。」
大臣が、テレビのインタビューに語っている。
事件の報道が終わったところで、やっと大臣が応接椅子のほうにやってきた。
「お待たせして済みませんでした。今朝からこんな事態で。」
私は、大変なときにお邪魔してしまいました、と言った。そして、日本大使として、ベナンに活動する協力隊員や、日本人滞在者や旅行者などの安全をお願いに来た、と述べる。大臣は、日本はベナンにとってとりわけ重要な国なので、日本人の安全確保に最大限努力する、何かあったらいつでも連絡してもらえれば、と応えた。
ザンザンドゥ内相は、私に応対しながらも、やはり落ち着かない様子だ。警察をとりまとめる閣僚として、この大事件の捜査に全責任を負っているはずだから、当然である。日本大使の表敬挨拶など、受けているような暇はない。携帯電話も鳴り出したようだ。ガボンに出張中のヤイ大統領も心配しているはずで、連絡を取らなければならないだろう。私は早々に退散することとし、別れの挨拶をして大臣室を出た。
それにしても、18時の約束時間を先方から言ってきたのは、今日の午後になってである。すでに事件は起こっており、その処理で大変だっただろうに、どうして私との面会を入れたのだろう。申し訳ないが緊急の事態が生じたので、と言ってくれれば十分理解できたのに。日本大使は、この日しか空いていないと聞かされたので、勤務時間後になら、と考えたのだろうか。火事場にもかかわらず、私との面会を日程から削らなかったザンザンドゥ内相に、私はベナン人らしい律儀を感じた。
面会の約束を求めたら、午後になって18時に来てくれという連絡が来た。それで、18時5分前には、内務省の大臣室に到着した。秘書が、申し訳ないが大臣はまだ会議から戻れないので、しばらく遅れるという。こちらは挨拶が出来ればいいので、急ぎではありません、ゆっくりお待ちします、と応える。
ところが、そのゆっくりが長くなった。30分経っても大臣が戻る気配はない。警察の制服を着た人たちが、順に出入りして、秘書のところに書類を届けている。秘書は先ほどから、聞くごとに「あと5分」とばかり言っていて、あてにならない。さすがに、50分を越えた頃には、待たせるのにも限度がある、後の予定があるのでといって今日のところは引き揚げようかな、と考えていた。
そうしたら、ザンザンドゥ内相が秘書官たちを連れて戻ってきた。19時5分前だ。たっぷり1時間待たされたわけであるが、閣僚というのは忙しくてこういうこともあろう。私としては、挨拶という目的を達することが出来るなら、それでいい。私は大臣室に通された。ところが、大臣は、私を応接椅子に座らせたまま、執務机について電話をかけている。そして、秘書を呼んで、何やら書類に筆を走らせはじめた。客人を横において、先に仕事とは。さすがに、私はだんだんいらいらしはじめている。
大臣は秘書に指示をした。何をするのか、お客さんにコーヒーでもお出ししてと言うのかと思ったら、なんとテレビを付けさせた。19時のニュースが始まったところである。画像にアナウンサーが映る。失礼にも程がある。私はちゃんと前もって約束を取り付けて、ここに来ている。それを1時間待たせた上に、私より仕事、さらにはテレビニュースを見るほうを優先するとは。
あきれて席を立とうとしたとき、アナウンサーがトップニュースを報じはじめた。
「今朝、ベナン再生党の事務所が、何者かにより襲撃されました。事務所にいた2人のうち、一人は事務所の外に引きずり出されて手足を縛られ、一人は棒で殴られて大怪我をしました。」
ええっ、と今度は私の目が、テレビに釘付けになる。ベナン再生党といえば、最大野党。2006年の大統領選挙で、ヤイ大統領の対立候補であった、ソグロ元大統領の党である。そしてソグロ氏は、2011年の大統領選挙でも、おそらくヤイ大統領に挑戦する大統領候補となると考えられる人、つまり野党の最重要人物だ。その人の事務所が、襲撃されたとは。ソグロ氏は、事務所を留守にして無事であったが、それでも大事件である。
引き続きテレビが報じる。
「ザンザンドゥ内相は、直ちに現場に駆けつけました。ソグロ元大統領とともに、殴られて怪我をした事務所員をお見舞いしました。金銭やコンピューターなどは盗まれておらず、襲撃の目的は不明です。警察の捜査が待たれます。」
そして、ソグロ元大統領と並んで、私の目の前にいる大臣が、テレビに大写しになる。
「このような暴挙が、この民主主義の国にあってはならない。警察は、全力をあげて犯人を逮捕する。」
大臣が、テレビのインタビューに語っている。
事件の報道が終わったところで、やっと大臣が応接椅子のほうにやってきた。
「お待たせして済みませんでした。今朝からこんな事態で。」
私は、大変なときにお邪魔してしまいました、と言った。そして、日本大使として、ベナンに活動する協力隊員や、日本人滞在者や旅行者などの安全をお願いに来た、と述べる。大臣は、日本はベナンにとってとりわけ重要な国なので、日本人の安全確保に最大限努力する、何かあったらいつでも連絡してもらえれば、と応えた。
ザンザンドゥ内相は、私に応対しながらも、やはり落ち着かない様子だ。警察をとりまとめる閣僚として、この大事件の捜査に全責任を負っているはずだから、当然である。日本大使の表敬挨拶など、受けているような暇はない。携帯電話も鳴り出したようだ。ガボンに出張中のヤイ大統領も心配しているはずで、連絡を取らなければならないだろう。私は早々に退散することとし、別れの挨拶をして大臣室を出た。
それにしても、18時の約束時間を先方から言ってきたのは、今日の午後になってである。すでに事件は起こっており、その処理で大変だっただろうに、どうして私との面会を入れたのだろう。申し訳ないが緊急の事態が生じたので、と言ってくれれば十分理解できたのに。日本大使は、この日しか空いていないと聞かされたので、勤務時間後になら、と考えたのだろうか。火事場にもかかわらず、私との面会を日程から削らなかったザンザンドゥ内相に、私はベナン人らしい律儀を感じた。
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