22-144「エルヴィス」（アメリカ）

世の中が危うい時こそ歌に託せ
　ザ・ビートルズやクイーンなど後に続く多くのアーティストたちに影響を与え、「世界で最も売れたソロアーティスト」としてギネス認定もされているエルビス・プレスリー。腰を小刻みに揺らし、つま先立ちする独特でセクシーなダンスを交えたパフォーマンスでロックを熱唱するエルビスの姿に、女性客を中心とした若者たちは興奮し、小さなライブハウスから始まった熱狂はたちまち全米に広がっていった。
　しかし、瞬く間にスターとなった一方で、保守的な価値観しか受け入れられなかった時代に、ブラックカルチャーを取り入れたパフォーマンスは世間から非難を浴びてしまう。やがて故郷メンフィスのラスウッド・パークスタジアムでライブを行うことになったエルビスだったが、会場は警察に監視され、強欲なマネージャーのトム・パーカーは、逮捕を恐れてエルビスらしいパフォーマンスを阻止しようとする。
　それでも自分の心に素直に従ったエルビスのライブはさらなる熱狂を生み、語り継がれるライブのひとつとなるが。（「作品資料」より）


　もちろんその名前は聞いたこともあるし、歌も多少は聞いたことがある。
　キング・オブ・ロックンロールと呼ばれていたことも知っている。

　しかし、実際その歌っている映像はあまり見た記憶がないな。

　これまでキングを崇拝している人物やモノマネをする人物が登場する作品は幾つか観たが、エルヴィス自身を描いた作品は初めてかな。

　若くしてスーパースターになったが故の苦悩と、彼のマネージャーとなったトム・パーカーの強欲さ。

　そして、それらのことから逃れられなかったエルヴィスを描いている。

　当時は、まだ保守的な価値観しかなかった南部、メンフィスで生まれたエルヴィス。

　若者、特に女性はエルヴィスのパフォーマンスに熱狂するが、政治家や警察は彼を取り締まりの対象として見る。

　まずは、社会との対決が描かれ、それに反抗して自らのパフォーマンスを貫き、歌う姿に惹き込まれる。

　謳い文句に〝彼を殺したのは誰か？〟ともあるが、本作は、スターとしての苦悩、パーカーとの関り、そして彼に取り巻く者たちなど、彼を苦しめるものがたくさん描かれる。

　ライブ・シーンは聴き応えもあり、見応えもある。

　エルヴィスを演じていたのは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にも出ていたオースティン・バトラー。

　歌唱も実際彼だったのかは不明。

　エルヴィスが亡くなった時は、記憶も残る年齢のはずであったが、そういうニュースなどは全く憶えていないな。

　ビートルズもジャクソン５も出てきた時にも歌っていたようだが。

　実在の人物を描いた作品であるが、スターとして上り詰め、やがて堕ちていく。
　そんな姿が、ちょっともの悲しく感じるストーリーで、決して溜飲下がることはなかったな。

　パーカーはやっぱり悪徳マネージャーだったのかな。

/５

監督：バズ・ラーマン
出演：オースティン・バトラー、トム・ハンクス、ヘレン・トムソン、リチャード・ロクスバーグ、オリビア・デヨング、ヨラ、ションカ・デュクレ、リトル・リチャード
　　　ケルビン・ハリソン・Ｊｒ．、ゲイリー・クラーク・Ｊｒ．、デビッド・ウェンハム、ルーク・ブレイシー、デイカー・モンゴメリー、ナターシャ・バセット
於：ＴＯＨＯシネマズ日比谷