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鴨めが翔んだ日  鴨つみれ鍋に景気拡大

2009年01月08日 19時25分56秒 | 料理の仕事



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鴨つみれ鍋


新年も、この鍋から始めてみよう。


今回の鴨つみれ鍋は例年以上に好評を戴いているのだが
坐唯杏が毎年、暮れから新年の宴会シーズンに、この鍋を
提供するには理由がある。


鴨と言う素材は、調理する側から言わせてもらうと、簡単な
食材ではない。


何が難しいかと言うと、「火の通し具合」。

この一語に尽きる。



鶏と違って、鴨のように羽の筋肉が発達した鳥ではモモ肉よりも
胸肉の価値が高い。



しかし、胸肉は火の通し具合を誤るとパサパサの何とも味気
ない食感の料理が出来あがる。



下手をすれば顕著に味わいが落ちる素材だが、「つみれ」に
する事で少々の誤差では歴然とした差が出なくなる。



しかも、「つみれ」にするのであれば、高価な胸肉を使用せず
とも、むしろ端肉や屑肉と言われる部分にこそ、味わいがある。




筋や脂肪の部分を叩いてミンチにする方が、食感に変化が
生まれ、味わいに奥行きと幅が出る。




そして、鴨つみれ鍋の記事には欠かせない粗挽きのミンチと
細挽きのミンチの話は、過去の記事で何回も紹介している話
だが、あえてもう一度書く。




肉に限らず、魚や海老についても言える事だが、肉の繊維を
細かくすればする程、味わいを落すのが料理の世界では
常識とされている。



つまり、挽肉よりも小間肉、小間肉よりも切り身肉、切り身肉
よりもブロック肉のほうが味わいは高まると言う事だ。



細胞を壊さない分だけ、肉汁の味わいが蓄積される。



「つみれ」を否定する様な事を書いたが、細かく叩いたミンチに
粗く叩いたミンチを混ぜ込むことで味わいを劇的に高める事が
できる事を、ご理解戴きたい。


食感が均一の料理より、複雑な食感の食べ物に、より味わいを
感じる。


パックの充填豆腐よりも豆腐屋の手造り豆腐により旨味を
感じるのも、この理由が大きいし、手造りの鰯(いわし)や
鯵(あじ)のつみれと市販のおでん種にされるつみれの味を
比較して頂ければ、差は明白だろう。


まして、軟骨を細かく叩いた物を加え、旨味と食感をより高めて
提供するのは、高級野鳥料理の専門店だけの口伝の技で
あった。


しかし、身近に楽しんで戴く為に、仕入やレシピを徹底的に
細部に至るまで、見直し改良に次ぐ改良、改善の上に改善を
重ねて、今日に至った。



だが、はっきり言って本物の天然真鴨を伝統の手法を頑なに
守って、予算や原価に捉われず、昔ながらのスタイルを貫く
店には、このつみれ鍋のスタイルでは、到底太刀打ちできない。



天然の真鴨の鴨鍋を提供する、老舗と呼ばれる料亭では
一体、どんな鍋を提供しているかと言うと、お客に鍋を任せる
事は一切ない。



熟練の仲居さんが付きっ切りで鍋を仕上げては、取り分け
絶妙な食べ頃を逃さず食べられる、仕切りをしてくれる。



その手法は、出汁(スープ)の中に野菜を加え、更に沸いた
所へ鴨肉が沈まない様に並べ、周囲から仄かに白く
なったら裏返してひと呼吸で引き上げる、と言う具合だ。



肉の状態を見極めて、的確な判断が下せないと味わいは
半減する。


鴨肉の事を熟知した、理想的な手法だ。



しかし、素人が酒杯を片手に、その手順を踏むには
あまりにも、リスクが高いし高度な技術、経験を要する以上
ほぼ、不可能に近い。



そこで、我々は「つみれ鍋」を提供するに至ったのだ。



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肉に火を通して食べる料理には中途半端な火の入れ方は
ない。



中華料理の東坡肉(ドンポーロウ)や豚の角煮、ビーフ
シチューの様にじっくり煮込んで柔らかくする場合と、火が
通る瞬間が1番味わいが良い。



その1番旨い瞬間を逃さず調理するのが料理人の仕事
だが、つみれ鍋の場合は、その1番旨い瞬間の許容範囲
が広い。



つまり、火が入った瞬間から、やや煮込んでしまったと
しても味わいが落ちにくい。



気軽に酒盃を片手に愉しむ鍋料理としては、まさに絶好の
鍋料理と言えるのだ。



ただし厳密に言えば、その中にも絶妙な火の通し具合が
当然のことながらある。



沸騰した鴨のスープに生のつみれ肉を適度な大きさで
揃えて投入し、表面をまず熱で凝固させて旨味を閉じ
込める。



中心に向かって火が通っていくが、あと僅かで火が通ると
言う時に鍋から取り皿に引き上げ、余熱を使って火を通す。



温度が落ち着くにつれ、中で暴れていた肉汁も次第に
落ち着き、閉じ込められて行き場を失った肉汁は、つみれの
中に抱え込まれたままになる。



程よい温度になった時にひとくち噛めば、肉汁が滴る様な
つみれが完成する。



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新年のこの時季は、そんな極上のつみれ鍋に挑戦してみる
のはどうだろう。



気軽に鍋に向かって酒を愉しむのも良し、真剣につみれを
探求するのも一興。



是非、召し上がる時の参考にして頂きたい。

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