気ままなZOO

行った場所、見たもの、感じた事、気ままにねぇ…… きままなZOOです。旅のお話、動物園、水族館のお話を…

首に傷のあるおひな様…

2010-03-02 | 創作…

「ケンジが、お雛様、こわしたぁー!」

大声で泣きながら、トモちゃんは、お母さんに訴えました。

首のとれた陶製の男雛が床に転がっています。
お雛様の前でふざけないでって、あれほど言ったのに
走ってきた弟のケンジは、壇にあたりました。
ひな人形が落ちてしまったのです。

 「ケンジ!」

お母さんはケンジをつかまえて、きつく叱りました。

でも、トモちゃんの涙は止まりません。
大切なお雛様だったのですから…

    

「トモちゃんご飯ですよ」
ママの作った美味しいお料理を前にしても、
トモちゃんの心は晴れません…

「ごらんなさい。」
そんなトモちゃんをみて
お母さんはあの男雛をトモちゃんに手渡しました。

きれいに首が元のようにつながっています。

でも、
首には継ぎ目があるのが、分かります…。

 夕方、会社から帰ったお父さんは、
部屋へこもって、丁寧にお雛様をなおしてくれたのです。
そのことを知っていたトモちゃんでしたが、
首の継ぎ目を見て、つい言ってしまいました。

「傷のあるお雛さまなんて、いやだぁー」

 いつも優しいお父さんの眼は少し寂しそうでした…

 

          

高校生になったトモちゃんは
お雛様の首の継ぎ目をなでながら、
お父さんのことを思い出していました。

あのひな祭りの後、しばらくして、
優しかったお父さんは病気で亡くなりました。

首に傷のあるお雛様だけど、
大切な大切なお雛様です…

お父さんの思いのこもったお雛様になったのです。

 

 

ひな祭りに、短い話を作って数年になります。
今年のお話は、どうだったでしょうか…

みなさま、よいひな祭りをお過ごしください(^^)/

 

 画像はうちに飾られてあるタペストリー(^^)/

 


もし、よろしければ、過去のお話も読んでね

昨年の創作→おひな様へのお願い… 
2008年の創作→千代紙で折ったおひな様
2007年の記事→ちょっと悲しいひな祭り
2006年の創作→シチューとおひな様処女作でした

コメント (14)
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